淡い着物の胸の内
キィィィィ。
また扉が開く重い音が部屋中に響き渡った。息を呑んで二人は扉を見た。そこにいた二人人物を見て二人は目を丸くした。
そして同時に呟いた。
「きっ着物…!」
私と遼介の世界では常時が違う。でもいま入ってきたこの二人はきっともっと違う。だって私の世界にはこんな着物をきた人は存在しない。いるとしたらどっかのテーマパークだ。
そしてその傍らで澪架たちを警戒している男の右手は腰に背負った大きな刀に添えられている。明らかに敵意むき出しだ。
遼介は澪架を自分の背後に庇った。もちろん相手は刀、武器など持ち合わせてはいない自分に勝ち目などないことは百も承知だ。
「貴様ら誰だ!」
美しい着物に身を包んだ女の人は男の背後に庇われるようにしながらもじっとこちら見ている。そしてふと視線を男に向けた。
「由紀…大丈夫みたい。」
その女に人の声で男はやっと戦闘態勢を解いた。遼介の緊張の糸が切れたのかその場にへなへなと座り込んだ。
「遼介!」
澪架はすぐに遼介の顔を覗き込んだ。
「すみませんでした。どんな方かわからなかったものですから。本当にすみません。」
さっきは驚きのあまり女の人の姿をきちんと見れなかった。今落ち着いてみると、とても上品な立ち振る舞いや着物は一流貴族の様だ。女の髪は澪架の真紅の髪とは違う漆黒の綺麗な色をしていた。そして次に先ほどの剣を持った男をみた。男からはさきほどの背中を指すような殺気を感じない。本当にもう大丈夫なようだ。
「貴方達は…どこからきたのですか?」
澪架は恐る恐る口を開いた。
「私たちは都から参りました。真央といいます。こちらが由紀。私の…信頼できる友です。」
女、真央がこちらと言って指しているのはさっきの剣の男。澪架と遼介は由紀とよばれたに男に視線を走らせた。するとふと違和感を覚えた。なぜなら真央が美しい着物を纏っているのに対し、由紀の服装は随分とお粗末なのである。
「澪架です。」
「遼介です。」
貴族の友というのならば、それなりの上流社会の人間ではないのだろうかと二人は思った。その疑問に気付いたのは由紀だった。
「私は姫の…真央の護衛の者です。友などでは…ありません。」
その言葉に真央は悲しそうに俯いた。
「お二人とも…もしよろしかったら真央の友人になってあげてください。」
私たちはすぐに仲良くなった。真央もとても明るくて大好きだ。でも、由紀はいつも私たちにも一線置いている。
ただ、ふと気付くと真央を悲しそうに見つめていて、私たちは由紀の気持ちに気が付いた。
「ねぇ、真央の住んでいた所の話を聞かせて?」
澪架の提案だった。そのなかに、由紀の悲しげな表情を和らぐことの出来るモノがあるかもしれないと思ったからだった。
真央は心よく話してくれた。
――あまり…面白いことはないわよ?と少し苦笑まじりで…。