出会えた事さえ奇跡だから
◇ ◇ ◇
小さな家だ。
可愛らしい家具が置かれた、明るい部屋。
部屋を暖めている暖炉の火が、ゆらりと揺れた。
「あと、一回か……」
僚介じゃそっと溜息を零す。
この部屋を訪れるようになったのは、もう随分と昔の事なのに、ついさっきだったのではないかと感じる。
期限が近付いていることを、僚介も、ほかの三人も感じているんのだろう。今日はいつもより口数が少ない。
僚介は二人掛けのソファで自分によりかかる様にして小さな寝息を立てている少女の顔を見つめた。
夕焼けの様な、珍しい色の少女の長い髪。触れれば、さらりと落ちて白い頬をすべる。
少女は名前を澪架という。
生まれたときは確かに愛情を知っていた澪架は、この髪色を理由に異端詞されるようになってしまった。澪架の心をずっと縛っていたこの真紅の髪。この色をもって生まれた自分を責めて、心を閉ざしてしまっていた。
には小さな毛布が掛けられていた。
「澪架……」
僚介は愛おしそうに、けれど起こさないように静かにその名前を呼んだ。とても小さな声だったのに、澪架はゆっくりと目を開いた。
「ごめん。起こした?」
本当に申しわけなさそうに俯く僚介の頬にそっと手を添える。そしてにっこりと微笑んだ。
「ううん。平気よ」
澪架は嬉しそうににも悲しそうにも見える表情をした。そしてゆっくりと起き上がると僚介の肩に寄り添うように腰を下ろす。
「いろいろあったね」
僚介が懐かしそうに真っ赤にそまる夕日を眺めた。澪架もそれに習う。
「本当……。あれは奇跡だったのかな。私たちが出会えたことも、みんな」
そして二人は自分たちのように肩を寄せ合って話しをしている二人を見る。
この四人がであったのは本当に奇跡に近かった。本来なら会うことすら出来ないはずの四人。その運命は神によって変えられた。
「奇跡でも…いい。こうして出会えたことには変わりはないもの。」
四人は顔を見合わせた。
「僕さ、初めて泣いたんだよね。澪架に好きだって言ったとき」
僚介の言葉に澪架は当時の事を思い出した。二人もその時にコトを考えているようだ。聞かなくとも二人の表情がそう言っている。
「あの、時はなんで百年なんだろうって思ってた。だって長すぎるじゃない。人の一生よりも長い時間会えないなんておかしいじゃない。でも、私たちには二千年もの時間が与えられていた」
あのときまで四人は互いの気持ちを知りながらも言葉にしなかった。
それは一種の呪だ。
また会える。
だから次に言う。
それの繰り返しで、結局言えないままでいたのだ。
「あの時、本当に澪架と離れたくないって思った。だから、気が付いたら口をついていた。すきだって……。言わないままの方が離れたとき楽だった。すぐにまた次にっておもえたから……」
僚介は懐かしそうに、そして悲しそうにまた、空を見上げた。