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変幻G在! ~ゴーレム頼りで異世界サヴァイヴ~  作者: いけだけい


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ep85 ネモフィラ商会のルイーゼ

ワイワイ……ガヤガヤ……



"遺跡"の外へ出ると、その喧騒から入口周辺に多くの人々がいることを感じさせた。


実際に周囲を見れば、今から"遺跡"に入ろうとしているのか露店が混み合っていたりする。


その混み具合と空の明るさから、今は午後に入ってしばらくという時間のようだ。



「外は寒いわね。中が暖かかったと言うほうが正しいかしら?」


「そうね。寒さを凌ぐために"遺跡"へ入ろうとする人もいるぐらいだし。まぁ、それで危ないからって冒険者と荷役ぐらいしか入れないことにしてあるけど」



ララとビーナがそんな話をしていると、



「「「……」」」



近場の露店商達がこちらに注目していた。


ゴーレムを連れているし、それなりの稼ぎがありそうだから取引相手にと考えているのかもしれない。


近場の露店ということは、"軒下組"と言われる大きな商会か大手の冒険者グループと繋がりのある商会だ。


朝、"遺跡"に入るときにも注目はされていたが、そのときと同様に"金戦華"のビーナがいるからか直接声を掛けてきたりはしていない。


"金戦華"はこの町では3番目に大きい冒険者グループだし、それ以上の規模のグループと近しい商会でも無駄に揉めたくはないのだろう。


ただ、それとは別の理由でも俺への接触が控えられている。


それは、この広場での勧誘や客引き行為は禁じられているからだ。


冒険者は武装もしているので、トラブルが起こると刃傷沙汰になる可能性が高い。


一応は国と冒険者ギルドが管理している場所だし、余計な仕事が増えないようにと決められているようだ。


まぁ、普通の呼び込みぐらいは許されているそうだが、それが治安を維持している一因になっているというわけだな。


そうして、ビーナから聞いた話を思い返していると……"遺跡"の階段を上がった場所とは反対側の、少し遠いが大きめの露店から1人の女がやって来た。


30歳前後に見える、美人と言うよりは愛嬌のあるタイプだ。


明るめの長い茶髪をオールバックにして後ろでまとめているが、入口を回り込んでくる際に見えたその先はかなり膨らんでいた。


癖毛が強いようだな。


こちらへ向かってくる彼女は、結構上等な物に見える私服である。


露店に残っている店員は揃いの制服を着ているので、ただの客である可能性もあるが……


そんな彼女は俺達のもとへ来ると、無事の帰還を祝ってきた。



「おかえりなさいませ。ご無事で何よりでございます」


「はぁ、どうも」



そう返しつつも、露店の関係者なら客引きみたいなことをしていいのか?と疑問に思っていたところ……それを察したように言ってくる。



「あぁ、当商会は"金戦華"の皆様と懇意にしておりまして。そちらにいらっしゃるのは"金戦華"に所属されていらっしゃる方なので……」


「元から取引のある相手がいれば大目に見てもらえる、と」


「そういうことですね」



やはり露店の関係者だったらしい女はビーナを指してそう言い、ニコリと微笑む彼女に周りを見てみれば……入口の前で警備しているギルドの職員と町の衛兵も動く気はないようだ。


うん、これもビーナが派遣された理由の1つだな。



「それで、何か御用ですか?」


「いえ、今日はご挨拶をと思いまして。(わたくし)、"ネモフィラ商会"の会長でルイーゼ・ネモフィラと申します」


「俺はジオで、こっちが連れのルルです。というか……会長なんですか?」



にしては若いな。


すると、その疑問が年齢に対するものだと察してルイーゼが聞き返してきた。



「見えませんか?」


「大手のグループと懇意にってことなら大きな商会なんですよね?」


「まぁ、それなりには」


「その商会をまとめているにしてはお若いので、会長だというのが少し意外でした」


「あら♪ありがとうございます。でもそれほど若くはなくてですね、最近は色々と気になるところが……」



いかん、これは年齢を気にしているな。


加齢によって発生する様々なことが気になる時期なのだろう。


俺としては、一般的な商会の長としてのイメージよりは若いという比較の話をしただけなのだが。


愚痴を聞かされても困るので話の方向を変える。



「ところで、商会長である貴女が露店にいらっしゃったのは何故でしょうか?普段から露店におられるわけではありませんよね?」



大きな商会ともなれば優秀な部下もいるだろうし、店舗を任せられないということもないだろう。


だが身の安全という観点で見れば、普段から露店にいるとは考えにくい。


そこが気になった俺に、ルイーゼは気を取り直して質問に答えた。



「あっ、コホン。ええ、普段は部下に任せております。今日はジオ様にお会いするため、少し前から詰めておりました」


「そうなんですか?いつ戻るかわからなかったでしょうに」


「今日は初回とのことでしたので、長くても夜にはお戻りだろうと思いまして」


「他の商会への牽制ですか」


「そういうことですね。ゴーレムを引き連れた上で何事もなかったようにお戻りとなれば、稼ぐ冒険者だと見込んで寄って来る冒険者や商人は山ほど出てくるでしょうから」



ビーナもそんなことを言っていたな。


となれば、余程買い叩かれたりしない限りは売却品を彼女の商会に任せてもいいのかもしれない。


"宝石板"もあることだし、すぐにお世話になる可能性だってあるからな。


まぁ、それは開封結果を見てからか。



「そうですか。俺としても煩わしい事は避けたいので、効果があるとありがたいのですが」



その言葉で"ネモフィラ商会"との良好な関係を望んでいると示唆したからか、ルイーゼは笑顔を輝かせた。



「ええ、お任せください!そのようなことがないように手を回しておきましょう」


「一応言っておくと、まともな取引が出来ている間だけですよ?」


「もちろん、誠実な取引をお約束いたしますわ♪それで、今日は何かございますか?お祝いということでサービスさせていただきますが」



今日の収穫と言えば魔石と"宝石板"だけで、どちらもこの場で売り払うつもりはない。


だが、何の成果がないというのもメンツが立たないか?


こちらの会話に聞き耳を立てている者もいるだろうし、中には聴力を強化できる者がいてもおかしくない。


スキルによる身体能力の強化でそれが可能な人間も身近にいるからな。


となれば、冒険者の監視役という立場もあるので、侮られるような結果だと思われるのは良くないのだが……今日は1階だけだと明言しておけばいいか。



「ないことはないんですが、今日は1階だけだったんで魔石ぐらいしか」


「ああ、そうでしたか。では魔石をお引き取りしましょうか?」



ふむ。


"四方攻め"の部屋だけでも魔石は400個手に入るのだし、なるべく確保しておきたいとはいえ今日の分ぐらいは売ってしまってもいいか。


次回からはスレッタさんもいるので、ある程度慎重に動いていたことにすれば……売る数が少なくても不自然には思われないだろうから、ゴーレム用に確保しておくこともできるだろう。


そう考えた俺は、数百個の魔石が詰まった革袋をルイーゼに渡す。



「ではこれを」


ジャラッ


「はい、お預かりします。これは今日の分だけですか?」


「そうですが……」



すると、彼女は身を寄せてきて小声で話す。



「もしかして、"四方攻め"の部屋に?」


「ええ、まぁ」


「なるほど、それでこの数ですか……では、この件はまだ内密なものとしておきましょう。ジオ様のお力を誇示するのには使えますが、余所からの勧誘を抑えるための手回しをしてからでないと抑えきれないかもしれませんので」



あの部屋を無傷で対応できると知られれば勧誘はとても激しいものになるとのことで、手を回していない今は"金戦華"より規模の大きいところが本気で動けば流石にネモフィラ商会だけでは抑えきれなくなるということらしい。


ゴブリンの集団を雑魚のように蹴散らせる者ならともかく、そうでない冒険者のほうが圧倒的に多いのでそうなる見込みが高い。


これは1階だけの話ではなく、他の階でも"四方攻め"をクリアできるとなればその階では敵になる相手がいないと見なされて同様に激しい勧誘に遭うようだからな。



「わかりました。とりあえずこの件は秘密にしておきましょう」



というわけで……この件は"金戦華"以外には秘密ということにし、魔石の換金について話すことになった。



「ジオ様。この量の魔石を露店で扱いますと、どこで誰に見られるかわかりません。ですので店舗のほうで換金されたほうがよろしいかと」


「あぁ、はい。まだ時間はありますので構いませんが」


「ではご案内します。こちらへどうぞ」



そうしてルイーゼは俺達を引き連れ、"ネモフィラ商会"の露店へ向かうと……



「じゃあ、お店に戻るわね」


「はい。お疲れ様でした」



店員達とそんなやり取りをして通り過ぎ、広場から北に伸びる道へ向かっていく。



「あの、お一人で戻られるんですか?」


「ええ。一人で来ておりますし、すぐ近くですので。それに皆さんもおられますから」



そう言って向かった先は彼女の言う通り、広場から北の道に入ったすぐ傍だった。


ルイーゼが笑顔で紹介する。



「こちらが当商会の店舗です」


「へぇ……」



"ネモフィラ商会"と書かれた看板が掲げられたそれは3階建てでかなり幅が広く、裏手に回るための路地があるが……そこから見ると奥行きもかなりありそうだ。


まぁ、前世のビルなんかを知っているので、それに遠く及ばない建築物を見ても驚きはしないが。



「……では、中へどうぞ」



そんな俺に少し意外そうな顔をしたルイーゼは入口のドアを開き、店舗の正面から中に入ると俺達を招き入れた。

お読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字・誤用などがあれば報告をいただけると助かります。

よろしければ評価も付けていただけますと幸いです。

カクヨムで先行公開しておりますので、先が気になる方はそちらをどうぞ。

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