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変幻G在! ~ゴーレム頼りで異世界サヴァイヴ~  作者: いけだけい


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ep72 理不尽な叫び

"遺跡"の町へ到着した俺達は、メルクスが率いるベルウェイン商会の取引先へ向かった。


取引は問題なく成立し、彼は商品の引き渡しを終えると代金を受け取る。



サラサラ……


「……っと。はい、どうぞ」


「どうも」



依頼書に護衛依頼が完遂されたという証明のサインが入り、その書類はすんなりと渡された。


帰路に不安があるというメルクスではあったが、ベルガさんや他の商会員から「雪が降る前にこの町から出る商隊や冒険者もそれなりに多い」と宥められて落ち着いている。


まぁ、危ない目に遭って不安になるのも理解できるので仕方ないとは思う。


ただ、普通に商隊を率いた経験を積むためには俺がいないほうがいいのもまた事実だと思うのだ。


それに……盗賊の襲撃も魔物の集団による襲撃もそこまで頻繁に起きるものではないと聞くし、往路で事件が発生して間もないうちに再び通るのであれば事件は発生しにくいのではないだろうか?


特に、いきなり現れたオークの集団についてはこの後ギルドへ報告するので、その調査などで相応に実力のある冒険者が派遣されると思われる。


となれば盗賊や魔物がいてもその冒険者達が処理するだろうし、冒険者達を警戒して襲わなかったとしてもしばらくは身を隠しているだろう。


そういったことを言い含めておいたのもあり、メルクスの依頼はとりあえず穏便に完了となった。





メルクスや彼の商隊と別れた俺達は、続いて冒険者ギルドへ向かうことにする。


これにはベルガさんとマリベルさんもこのまま同行するようだ。


ベルガさんは俺と同様に護衛依頼の完遂報告、マリベルさんは転勤の挨拶だな。



「では、私とマリベルもご一緒に」


「あぁ、はい。他の皆さんは?」


「この町にある我々の拠点へ帰らせます。報告に大勢を引き連れていく必要はありませんから」


「そうですね。じゃあ、行きましょうか」



そこで彼女はスレッタさんたちに向けて言う。



「あぁ、スレッタ様方はうちの部下たちと一緒に拠点の方へどうぞ。冒険者ギルドは荒っぽい人が多いので、そちらでお待ちいただいたほうがよろしいかと」


「……そうですね。余計な揉め事が起きてはジオさんのご迷惑になるでしょうし」


「ならルルを付けていってください。一応ですが護衛を引き受けているのは俺達ですし。ルル、いいか?」


「ええ、構わないわ」



こうしてスレッタさん達はララも含めて"金戦華"の拠点へ向かい、彼女達と別れた俺達は冒険者ギルドへ向かうことに。


そうして、案内役としてベルガさんを先頭に冒険者ギルドへ向かう俺達だったが……メインストリートだと思われる大きな通りを進んでいると、チラチラと周囲の視線を感じるようになった。


それを察してベルガさんが謝罪してくる。



「すみません。おそらく私のせいで見られているのだと思います」


「ベルガさんのせい、ですか?」


「ええ。大手で幹部をやっている上、我々は仕事以外で男性と行動を共にすることが基本的にありませんので」


「はあ。今も仕事だとは思われないんでしょうか?」


「仕事ならもっとうちのメンバーがいますので、今は仕事中に見えにくいのではないかと思われます」



俺とベルガさんとマリベルさんの3人だけだからなぁ。



「そうですか……まぁ、仕方ありませんね」



仕事以外の行動が注目される、か。


やはり有名になりすぎるのは厄介だな。


だが、変に絡まれるのを避けるためにはある程度の知名度が必要だ。


その辺りのバランスが上手く調整できればいいのだが。





左右に様々な店舗が立ち並ぶ大きな通りを抜けると……その先には大勢の人で賑わう大きな広場があり、いくつもの石柱に支えられた三角の屋根が見えた。



「あれは?」



そう尋ねるとベルガさんが答えてくれる。



「あれが"遺跡"ですよ。人で見えにくいのですが、地面には円形の大きな石板が敷いてありまして。その中央に地下へ入る階段があり、それが"遺跡"の入口になっております」


「あぁ、そうなんですか」



ということは、屋根は円錐で柱は円形に並んでいるのだろう。


その屋根は外側へ大きくせり出しており、その下では外縁に沿って露店が並んでいる。


ある程度は雨が降っても大丈夫だからか?


とはいえ、雨が降れば客足自体が減って商売にはならなそうだが……それでも気合は入っているのか、屋台やテーブルの作りがしっかりしているように見えた。


そちらとは別に、広場自体の外縁部にも露店が並んでいる。


こちらは"遺跡"の軒下に並ぶ露店よりも幾分庶民的に見え、シートの上に商品を並べているだけの店も多い。



「"遺跡"の傍とそれ以外の店に違いはあるんですか?」


「ええ。"遺跡"の傍……軒下組(のきしたぐみ)と言われておりますが、あちらは屋根があるぶん場所代が高く、それに見合う利益が見込めるお店ですね。逆に広場の外側は青空組(あおぞらぐみ)と言われておりまして、軒下組に比べると程度は落ちますが安価に物を売ってます」


「はぁ。じゃあ良い物を買うなら軒下組の方が良いと」



ベルガさんの答えにそう返すと、彼女は微妙な顔を見せる。



「えーっと……そうとは限らない、というのが実情でしょうか」


「と言うと?」


「利益さえ見込めればいいわけですので、粗悪品でも何とか売りつけられれば軒下に店を出すことは可能なわけでして」


「あぁ……つまり、"商売上手"なら軒下を使える、と」


「そうですね。ただ、高い場所代さえ払えればいいので、青空組や冒険者が個人的にお店を開くことも可能ということになっております」


「ん?」



その発言に俺は少し引っ掛かりを覚え、ベルガさんに聞き返した。



「可能"ということになっている"とは?」


「それは……」



すると彼女は俺の耳に口を寄せる。



「大きな声では言いにくいのですが、軒下組は大手の冒険者グループや大きな商会と繋がりのある露店が殆どでして」


「なるほど。個人がその場所を抑えるのは難しい、と」


「そうですね。全く空きがないとは限りませんので、その場合は場所代さえ支払えば使えると思います」



大手が有利なのはどこの世界も同じだな。


これがまかり通っているということは、冒険者ギルドや商人ギルドも容認しているのか。


まぁ……軒下組が青空組になったところでそっちに客が移動するだけだろうし、そうなるとその周囲が混雑して通行の妨げになるので下手に介入しないほうがいいのかな。


別に、青空組でも商売ができないわけでもないようだし。



「とりあえず、露店についての質問はここまでにしてギルドへ向かいましょうか」


「……?」



気づけばチラチラとこちらを見る目が周囲にあり、ベルガさんがそれを気にして先を急かす。


長話をしすぎて彼女に注目が集まっていたか。


なので俺はベルガさんの言葉に了承して道を尋ねる。



「で、ギルドはどこですか?」


「あちらです、もう見えてますよ」



そう言って指された先に目を向けると……俺達が来た東側の反対、"遺跡"の向こうに解体場が見えた。


"遺跡"に目が行って気づかなかったな。



「あぁ、あそこにあったんですね」


「ええ。"遺跡"から大きなものや多くのものが運ばれた際、すぐ対応できるようこちら側が解体場に。あの裏手がギルドになっております」



よく見れば、解体場の向こうには高い建物がある。



「あの高い建物ですか。何階建てなんですかね?」


「5階建てですね。地下もありますのでそれも含めると7階になりますが」


「へぇ……あぁ、じゃあ行きましょうか」



そう言って俺は荷物を担いで歩き出し、それにベルガさんとマリベルさんが続いた。





「遅いじゃない」



そんな言葉で俺達を迎えたのは、冒険者ギルドの前で腕を組んでいたビーナだった。


彼女は黒いオークに壊された防具を道中の町で新調したが、胴体部分については体型に合ったものがなくまだ胸当てのような防具だ。


なのでそのポーズによって胸が持ち上げられ、それによって周囲の男の視線を集めている。


男嫌いっぽい割には男の目を引くことをやってるんだよなこいつ。


それよりこいつがここにいる理由だ。



「どうしてここに?」


「どうしてって、黒いオークのことを報告するんなら私もいたほうがいいでしょ」


「いいのか?ほら、装備なんかを……」



彼女の言う通り、黒いオークのことも報告するつもりではあるが……裸にされた件を自分の口から言うのか?


それ暗に聞いたわけだが、彼女は少し恥ずかしそうにしながらそれに答える。



「べ、別にいいわよそれぐらい。助かったんだし、それに……あのオークの能力がアンタの予想通りだったのかも知りたいしね」



黒いオークの能力が"対象の意識だけを止める"というのはただの予想だ。


奴の件は道中にある町のギルドで報告しておらず、それは余計な混乱を招かないようにと考えてのことだった。


予想通りに意識を止める能力だった場合、防ぎようがなく避難するしかないからな。


なら避難すればいいと思われるかもしれないが、この世界では人里を出れば盗賊や魔物に襲われる可能性がある。


あのオーク自体は倒してあるし、となればいたずらに騒ぎ立てて不必要な避難をさせてしまい、逆に被害者を増やしてしまいかねないのだ。


というわけで……その危険性からここのギルド長に報告すべきだという話になっており、ベルガさんに取り次いでもらうこととなっていた。


ここなら腕の立つ冒険者が多く、調査隊を送るにしても十分な戦力が揃えられるからな。


で、奴の()()やハンマーも持ってきたのでそれを鑑定してもらうつもりであり、ビーナが来た理由にその鑑定結果を知りたいということも含まれているようだ。


ギルド長なら鑑定のマジックアイテムを独自の判断で持ち出せるしな。



「ふーん。じゃあ、行くか」


「ええ」



ここでベルガさんがビーナに尋ねる。



「宿の手配はできたのよね?」


「あ、はい。問題なく」


「そう、ならいいわ。ギルド長はご在席?」


「あ、はい。出勤されているとは聞いてます」


「そう。ではジオさん、行きましょうか」


「はい」



こうして、ベルガさんを先頭に冒険者ギルド"遺跡"支部へ入った俺達は、ベルガさんの取り次ぎによりすんなりとギルド長に会うことができた。


ベルガさんが受付に声をかけると、俺たちはすぐに最上階にあるギルド長の部屋へと通されるが……


扉が開くなり、そこにいた美女――ギルド長のロザリンドが俺を指差して叫んだ。



「お前かぁぁ!フランチェスカを(たぶら)かしたのはぁぁっ!」

お読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字・誤用などがあれば報告をいただけると助かります。

よろしければ評価も付けていただけますと幸いです。

カクヨムで先行公開しておりますので、先が気になる方はそちらをどうぞ。

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