ep70 柔らかな交渉
「えーっと、どういうことでしょう?」
"遺跡"町まであと数日といったところで、下級貴族だというスレッタさん一行が同行することになった。
彼女達の馬車で御者をやっていた男とは少し揉めたが、それも解決して野営地で夜を明かすことになる。
そこで俺は商隊を囲む氷の壁に加え、スレッタさん達用の氷の家とも言うべきものを用意した。
その上で焚き火の熱が遮られて寒くなるのではないかと危惧し、ゴーレムスキルで作った銅製の湯たんぽを渡して外へ出ていこうと思ったのだが……
そこでスレッタさんに呼び止められ、理由を聞くと彼女は恥ずかしそうに自身の大きな胸を持ち上げて俺に差し出した。
そこで出たのが冒頭の俺の質問である。
その質問に、スレッタさんは胸を持ち上げたまま答えた。
「そのぅ……ここまで手厚いもてなしをしていただけるとなると、何もお返ししないのは申し訳ありませんので……」
「いえ、別にそこまでしなくても……」
と断ろうとすると、今度はベレーナさんが俺をこの場に留めようとする。
「いえ、ぜひお受け取りください。ベスケイドの件の謝罪も込めて」
「いやいや、それはもう本人が謝って俺が許したことなので」
そう答えるも彼女は引かない。
「いえ。せっかくここまでのことがお出来になるジオさんと御縁ができましたのに、それを叩き切るような真似をしたのですからあの男が頭を下げた程度で帳消しになどなりません。となれば、それを挽回するほどのお詫びをしなくてはならないでしょう」
続けてスレッタさんが言う。
「その上でこの厚遇ともなりますと、"遺跡"での活動資金に手を付けるわけにも行きませんのでこういう形に、と……」
タプタプ
再び弾まされる彼女の胸に目が行くと、それを受けてベレーナさんがそこへ触れることをお勧めしてきた。
「さぁどうぞ。馬鹿な勘違い男が狙っていたようですが、あんな男と違ってジオさんならお好きになさって結構ですよ」
まるで自分の体のことのように言う彼女だが、そこで発言の一部に引っかかる。
「え、馬鹿な勘違い男って?」
「貴方に無礼を働いたあの者です。それなりに体力があって雑用を任せられる御者と言うだけで選ばれたのに、スレイが自分に惚れたんだと思い込んだ愚か者ですね」
スレイというのはスレッタさんの愛称で、親しい相手にだけ許される呼び方のようだ。
その発言にスレッタさんが補足する。
「御者の仕事も馬の操り方を知っていると言うだけで、実際には乗せてくれないほど彼は馬に嫌われているので……ベレーナが言うことを聞くように言って、それでなんとか御者が出来ているだけですからね」
「あぁ……」
彼がうちの商隊に同行することとなった際の事を思い返す。
彼が馬に乗せてもらえないからとベレーナさんが馬に乗ったんだよな。
それはさておき話を戻す。
「あの人がねぇ……まぁ、顔は整っていたのでそう思うのもわからなくはないんですが」
「確かに村の女からは人気がありましたが、それは畑などを継げない立場の男性が若いうちに村を出ていってしまうからですね」
「それで他に年頃の男性が少なく、そのせいで勘違いを助長させているのでしょう。もうスレイをモノにしたと思い込んで、私にも「相手をしてやっても良いぞ」なんて言ってきましたからね」
「……」
終えの言葉に嫌そうな顔で言う2人。
特にスレッタさんは穏やかそうだったのに、今は本当に気持ち悪そうな顔をしている。
それぐらい気に食わないということだろう。
今回の旅で指名されたのも、あくまでも使い勝手が良かったからというだけだったみたいだしな。
まぁ、顔が良くても気に入らないってこともあるか。
そう思っていると……スレッタさんが穏やかそうな、それでいて恥ずかしそうな顔で再び俺を誘ってくる。
「この胸が気になっていらっしゃったことはわかっておりました。謝罪の分はもう受け取れないと仰られましても、でしたら今後の分だと思ってご賞味ください」
モニュモニュ
そう言いながら、今度は自分の胸を揉んで見せるスレッタさん。
それに続いてベレーナさんが動き出す。
「よろしければ私のものもお好きにどうぞ。スレイほどではありませんが、それなりにあるほうですよ?」
モニュリ
そう言ってベレーナさんは腕で胸を持ち上げた。
言うだけあって彼女も確かな大きさがあり、揃ってアピールされればランタンの灯りで雰囲気もあり中々そそられる。
ついでに肩ほどまでの長さである茶髪をかき上げて耳を出すが、この場面でその仕草をするのは俺へのアピールだろう。
うーん……下級とは言え貴族にここまでやらせているのだし、頑なに断るのは失礼に当たるのかもしれない。
この国は自国の貴族にすらおかしな決まりを強制しているぐらいだし、下級貴族が相手でも平民が舐めた態度を取れば思い罰を科してくる可能性すらある。
それを考えると断りづらいな。
まぁ、触る程度に留めておけば後々問題になることもないだろうから、ここはいただいてしまっておしまいにしておくか。
「では少しだけ。止めて欲しくなったら言ってください、すぐに止めますので」
「は、はい!お好きなようにどうぞ!」
ブルンッ
この決定にスレッタさんは恥ずかしそうにしながらも胸を突き出し、俺はその胸に両手を伸ばした。
モニュリ
「ンッ……」
大きく突き出ているそこに触れると、スレッタさんは小さく声を漏らす。
俺の手には柔らかくもたっぷりとした重量が感じられ、服の上からではあるが彼女の体温も十分に伝わってきていた。
とりあえずは触れるだけで止めてほしいと言われることもなく、明確な意図を持って指先を動かして良いものかと少し考える。
「あの……ご遠慮なく」
それを察したのか、スレッタさんは続きを促してきたので少しずつ両手を動かすことにした。
モニュモニュモニュモニュ……
「ンッ、フゥ……」
しばらくして。
俺の手が激しく動いてもスレッタさんはこの行為を止めることなく、呼吸を乱しながらも声が外に漏れるのを抑えようとしていた。
氷の小屋は中の声が外に殆ど聞こえないような構造であり、そこまで気をつける必要はないが……まぁ。貴族としては気にしないわけにもいかないのだろう。
ただ、声が外へ漏れにくい代わりに中で響いており、押し殺した艶のある声が俺にははっきりと伝わってきている。
そんな中、硬く主張する尖端を手の平で撫で回していると背中に柔らかい感触が発生した。
ムニュリ
「いかがですか?スレイの胸は」
そう聞いてきたのはベレーナさんだ。
彼女は背後からそう問い掛けると、自身の手で俺の前を撫でてきた。
スリスリ……
「っ!?えーっと……これ以上のことをするつもりですか?」
そう問い返した俺にベレーナは交渉してくる。
「ジオさんも"遺跡"で活動されるのですよね?でしたら……我々の護衛をしていただくことはできませんでしょうか?」
「……」
なるほど、お礼はこの話を切り出すきっかけでもあったのか。
とはいえこのお礼そのものと護衛の話は別であり、こちらの都合もあるのでお断りする。
「申し訳ありませんが、こちらも目的があって"遺跡"に入る予定ですので……」
するとベレーナさんの手に力が入る。
ギュッ
「う」
「もちろんお礼は別でご用意します。スレイが無事に義務を果たせれば……いえ、護衛の依頼を請けていただいた瞬間から私をお好きになさって結構です」
「どうしてそこまで俺に?俺は自分の連れと2人で行動しますので、もっと大勢の"金戦華"にでも依頼したほうが良いのでは?」
報酬として躊躇なく身体を提示するベレーナにそこまでする理由を尋ねたところ、彼女は俺の背中を胸で擦り上げるように動きつつその問いに答えた。
ムニュッ、ムニュッ……
「ンッ、ンッ……端的に言えば費用の問題です。"金戦華"がどれほどの戦力を持っているのかわかりませんが、大勢を雇うことになればその分多額の報酬が必要でしょう?」
「俺達2人ならそれを抑えられる、と?」
「ええ。こういった対価で済ませられるのなら、ですが」
別に女性に飢えているというわけでもないのだが、スレッタさんの胸が気になっていたのを察してはいたのだろう。
それで費用を抑えられると見込んだのか。
ベレーナさんは続けて言う。
「あとは昼間の件です。氷の手でベスケイドを捕らえ、空中に浮かせておられましたね?」
「え?はあ……」
「それに続いて大きなハンマーを、荷車からあっという間に運ばせてあの男の前に振り下ろさせておられました。となれば……貴方ならあの手で人も運べ、危険な状況になっても運んで逃がせられるのではありませんか?」
あぁ……あれでベルガさんと同じように、俺を戦力だけでなく逃げる手段としても有用だと評価したからこそなのか。
メルクスも思いついたことだし、俺の力を目の当たりにすればそこに気づいてもおかしくはない。
「まぁ、よほど素早い行動を取る相手でなければ可能でしょうけど……」
「でしたら是非!スレイを無事に村へ返せれば、そのあと私は貴方の奴隷になっても構いませんので!」
ここまで言うとなれば、それだけスレッタさんが大事なのだろう。
ただ、そこでそのスレッタさんが口を挟む。
「あの!でしたら私もご自由にお使いいただいて構いませんので、依頼を請けていただけないでしょうか?」
「スレイ……」
自分を気遣うその申し出に、ベレーナさんはある程度予想できていたのか驚きは小さかった。
「そこまでしなくてもいいのよ?」
「いいえ、レナだけに負担をかけるわけにはいかないわ。どうせうちではまともな嫁ぎ先なんか見つからないでしょうし、そもそも"遺跡"で死んでしまう可能性もある。だったら……ジオさんのような、実力者でありながら人柄も良い方にこの身を捧げるのも良いと思うの」
「いやあの、実力はともかく人柄を評価するには時間が短すぎるのではないかと」
人柄は1日で評価できるほどのものではないだろう。
自分でも、悪くはないが良いとも思ってないからな。
なので、出会った当日だというのに人柄を高く評価されたことへ疑問を呈すが……2人はそれを否定した。
「いいえ。この氷の建物もそうですが、外の壁の出入り口などが商隊の皆さんを気遣ったものだとわかります。少なくとも他人をただの手駒だとは見ておられないようですし、他の皆さんもそれをわかっていて貴方を信頼されているのがわかります」
「ええ。夕食のあのスープも貴方が個人的に振る舞っておられるそうですし、それも商隊の皆さんを気遣ってのものだとわかりますね。それだけのお力がありながら、そこまで他人を気遣う方の人柄が悪いわけがないでしょう。ついでに言えば、スレイの胸を揉むのも気を遣っていらっしゃいましたよね?」
「それは、まぁ……」
俺としてはそこまで気を遣ったつもりもなく、安全で円滑な人間関係を維持して仕事を滞りなく進めたいだけなのだが。
スレッタさんの胸に触れている件も、俺は相手も楽しんでいるほうが良いというだけだからな。
というわけであくまでも自分の都合のつもりなのだが……それが他人から見ると気遣っているように見えるのか。
そうなると彼女達の俺への評価を強く否定することも難しく、ならばと何とか諦めさせようとする。
「でもですね、俺達はマジックアイテムを欲して"遺跡"へ入るんですよ。そちらの義務については詳しく知りませんが進行速度は極力上げるつもりですし、護衛対象がいてはそれが遅れてしまうでしょう」
「「う」」
「氷で運ぶのだって、魔力の消費を考えれば緊急時に限定すべきですよね?」
「「まぁ……」」
筋は通っているからか、俺の言葉に2人はトーンダウンしていく。
よし、畳み掛けるか。
「貴女方は魅力的ですが、そのため自分の目的を遅らせていいとは考えていません。そちらの身体に興味はあっても、決して女性に飢えているわけでもありませんから」
「「うう……」」
2人は女性陣の俺への態度を見ている。
その中で実際にそういう関係を持ったのはごく僅かだが、少なくともララがいるだけで十分ではあるので……彼女達はそれが事実だと理解でき、自分たちの身体で要求を通すのは難しいとわかったはずだ。
だが、2人は妥協案を出して食い下がる。
「でしたら、最初だけというのはどうでしょう?」
「最初だけ?」
俺がスレッタさんに聞き返すと、その意図を察したらしいベレーナさんが俺の問いに答えた。
「あぁ、それはいいわね。ジオさん、"遺跡"には最初から本格的に進むわけではありませんよね?」
「それは、まぁ……」
進行を急ぐと行っても"遺跡"のセオリーなどは知らないので、あくまでも慎重さを疎かにするつもりはない。
なので、"遺跡"へ入るにしても最初は浅い層で活動するつもりではある。
それを肯定するとスレッタさんが俺にズイッと迫ってきた。
「でしたら!その最初の内だけでも構いませんので!」
続けてベレーナさんも頼み込んでくる。
「浅い層からでも無事に帰還できた経験があれば、中で起きることに慣れてその後も無事に帰還できる可能性が大きくなると思うのです。どうかお願いできませんか?」
「うーん……」
俺としても、別に彼女達が危険な目に……最悪の場合、命に関わるような目に遭っていいと思っているわけではない。
ただ、俺達について来てもそれはそれで危険な目に遭うだろうと考えて護衛を断ろうと思っていたのだ。
しかし、浅い層に限定するのであれば多少はその危険度が低い。
経験者のベルガさんに聞いた話というだけなので、実際に体験したわけでもなく断言はできないのだが。
ともかく、この妥協案なら受け入れられないこともないし、もっと先へ進もうと思えばそこまでの契約にすれば良い。
「では、俺達が浅い層で活動している間だけ、というのであれば……」
「「はい!よろしくお願いします!」」
こうして限定的ではあるがスレッタさん達の護衛を引き受けることにし、喜んだ2人はもうしばらくそれぞれの胸を俺に味わわせてきた。
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