ep66 止まる意識と甘い報い
"遺跡"へ向かう道中の森でいきなり現れたオークの集団に襲われ、それを排除した後に連中の魔石を回収することに。
それを"金戦華"のメンバーが担当することになったのだが、他のメンバーが戻ってもビーナだけが戻ってこなかった。
そこで空からも捜索できる俺が彼女を探しに行くことにし、氷の箱に乗って空へ上がると捜索を始める。
最後の目撃情報から方向はわかっていたのでまずはそちらへ向かうと、胸の辺りを切り開かれたオークの死体があった。
少し高度を下げて見てみると……周りに争った形跡はないが、少し引きずった跡がある。
目撃者によれば、周辺の警戒をしていたビーナが少し離れたところで倒れているオークを発見し、その死体から魔石を回収しようとしていたらしい。
オークが元々いたであろう場所には、俺の攻撃で頭部が飛び散っていた。
そこから離れた位置に死体があったのなら、他の魔物や動物などの仕業と予想されるし、彼女は十分に警戒していたはずだ。
それでも争った形跡がないとすれば……ビーナが自らの意思でどこかへ立ち去ったのか、抵抗する間もなく何者かに連れ去られたのか。
この後の予定もあったのだし、自らの意思でというのは少し考えにくい。
となると連れ去られた可能性が高いのだが、そこで思い出されるのは先ほどのオーク達がいきなり現れたことだ。
あの場にいたオークの全てがそんな能力を持っていたのか、もしくは特定の個体がその能力を持っていて仲間を送り込んできたのか。
そんな"瞬間移動"とも言える能力を持つ者がまだ生き残っていて、ビーナの近くにいきなり現れ、彼女を連れ去ったということなのかもしれない。
いきなり現れることができるのなら、いきなり消え去ることもできるだろう。
争った形跡がないのはそのせいか。
さて、問題はどこへ連れ去られたのかだ。
瞬間移動のような能力を使われ、移動したルートがわからないとなると……空から探すにしろ、森の木々で開けた場所しか探せないんだよな。
ここを発見できたのも、あらかじめ場所がわかっていたからだし。
何か目印のようなもの、それこそあいつにゴーレムとして小さな魔石でもくっつけていれば場所がわかったのだが……ん?
ここで俺はオークの死体を覗き込むように見る。
胸が切り開かれており、その奥にあったであろう魔石は存在しない。
周りにも落ちたりはしておらず、そうなるとビーナか彼女を連れ去った何者かが持ったままだと思われる。
オークの魔石は他のメンバーが持ち帰ったもので大体の大きさや魔力の量を把握できているので、俺の探知範囲に入ればすぐに分かるはずだ。
そう考えた俺はすぐにまた空へと上がり、高速で飛び回ってビーナの捜索を続けた。
目的の反応はすぐに見つかる。
まずはビーナがいた道から右側のエリアをと思い、俺の探知範囲でそこを塗り潰すように探していた。
すると道から1kmほど先で2つの魔石を感知する。
1つはオークだと思うが、もう1つはオークのものより大きさも魔力も上である。
とりあえず地上に降りてその場所を探してみるも、人どころか何も見当たらなかった。
「……地下か」
地上に降りてもなお下方から魔石の反応があり、その所在が地下であろうことは明白だ。
しかし、ビーナがわざわざ連れ去られたということは、生かして使うという思惑があることは明らかである。
殺されないのであれば時間はあるともいえなくもないが、精神的な傷を負うであろう"使われる"ことだって防げるに越したことはない。
となれば入口らしきものを探している暇はなく、俺は大きめの魔石を作成し、辺りの土をゴーレムとして回収すると地下の魔石がある場所まで届く穴を掘る。
スッ……ボゴッ!
よし、地下は空洞になってるな。
それを確認すると開いた穴に氷の"手"を先行させ、それに対する敵のリアクションがないことを確認すると氷の箱に乗って降下する。
ヒュッ
「……」
スーッ……
差し込む光で照らされた穴の直下には、ビーナが身に着けていた服や装備が散乱し、オークの魔石の1つが転がっていた。
ビーナが持っている可能性も考え、こちらの魔石を目指して穴を開けたのだが……どうやらその予想は外れたらしい。
ならばと俺は地下に降り、周囲を見回す。
すると……
「グフフフフッ♪」
ベロベロベロッ
「ぐっ、ヤダッ!やめてよっ!」
黒いオークに全裸で組み伏せられ、顔や胸を舐め回されているビーナを目撃することになった。
彼女は必死に身を捩らせ、それによって大きな胸が暴れている。
日の当たらないはずの地下でありながらそれがわかるのは、彼女達のそばに明かりを灯したランプが置かれていたからだ。
周りを見れば木箱や食料を食い散らかした跡が見られ、いくつかの道具類もあることからおそらくは人がいたのだろうと思われる。
もしかすると、オーク達に全滅させられた盗賊らしき連中はここに潜伏していたのか?
まぁいい、今はビーナだ。
彼女の身体能力強化もあってまだ無事ではあるらしいが、急いで止めたほうが良いだろう。
彼女達とは10mほどの距離があり、2者の視界的にこちらにはまだ気づいていないようだ。
ならばと、俺はオーク達を仕留めたように氷の杭を奴の頭上に出現させる。
これで片付くと思っていたのだが……黒いオークは予想外の動きを見せた。
「グッフッフッフ……っ!?」
フッ
「えっ?」
黒いオークは姿を消し、それにビーナが驚いている。
奴はどこに、と思っていると……
ドガッ!
「ぐぅっ!?」
いきなり横合いから強い衝撃を受け、吹き飛ばされて壁に激突した。
身体をゴーレム化しているので痛覚も事前に遮断してあり、怪我自体は魔力で肩代わりをできるので大丈夫ではあるのだが……この状況に混乱する。
なんだ?何が起こった?
「グッフッフッフ……」
黒いオークは先ほどと同じように、しかし別の意味で笑っている。
お楽しみを邪魔したお礼か、俺をいたぶって楽しむつもりのようだ。
その手には金属製と思われる、何やら意匠の凝ったハンマーが握られていた。
あれで殴られたのか?
しかし、俺がやつの位置に気づかないとは……
魔石を感知できる俺であれば、魔物の位置は基本的に把握できるはずなのに。
その点について疑問を持っていると、こちらに気づいたビーナが声を掛けてくる。
「ジオ!?大丈夫!?」
「な、何とかな」
吹き飛ばされるほどの攻撃を受けて無傷だというのは不自然だし、ダーメージを受けたかのような声でそう返す。
すると彼女は俺に警告する。
「気をつけて!そいつ、いつの間にか私を攫ったし、その……服なんかもいつの間にか脱がされてたわ!」
ふむ……運ぶのも服を脱がせるのも、瞬間移動の対象を選べればやれそうではある。
しかし、それでは俺が気づかないうちに攻撃されたことの説明がつかない。
「グフッ♪」
ズン、ズン……
余裕の顔で俺に追撃しようと迫ってくる黒いオーク。
氷の杭は、出現させてから撃ち込むまでに僅かながら時間があった。
その時間で攻撃を察知して避けられるのは凄いが、ならば身体の中に直接送り込めばどうだろうか。
これは暗殺に使えるので他人の前で使いたくはない。
しかし、仕留めるまでに時間が掛かる方法では瞬間移動で逃げられてしまうだろうからな。
俺はそう考え、今度は黒いオークの頭部に直接氷の玉を送り込もうとする。
だが、その瞬間……
ドゴォッ!
「がっ!?」
再び俺は吹き飛ばされ、先ほどと同じように壁に激突していた。
「ジオッ!」
ビーナの俺を心配する声が響く。
「くっ……」
ダメージの肩代わりをしているからか、自身に埋め込んでいる魔石の魔力が急激に減っている。
すぐに魔力の豊富な魔石と交換し、この事態への対応を考えた。
氷の玉はちゃんと指定した位置に出現したようで、オークの頭部に埋まるはずだったそれは対象がいなくなっているせいか地面に転がっている。
……んん?
ここで少し引っ掛かりを覚える。
あの氷の玉は俺が吹き飛ばされている間に落ちたのか?
気づいたときにはもう地面にあった気がするが……
氷の杭はどうだった?
あれも気づいたときには落ちていたような気がする。
……試すか。
「ジオ!大丈夫!?いま加勢を……」
ビーナは自分の装備が置いてある場所まで移動し、そこから剣を抜いて裸のままオークに向かおうとしていた。
それだけ俺が危ないと思ったのだろうが、それを俺は強く止める。
「いい!近づくな!」
「でも!」
「考えがある!近くにいられると実行できないからなるべく離れろ!」
「……わ、わかったわ」
ザッ
俺の言葉にビーナは足を止め、その後に跳んで後退すると俺やオークから距離を取った。
「ブッフッフッフ……♪」
トン、トン
これでとどめを刺すぞと言わんばかりに、担いだハンマーを肩の上で弾ませる黒いオーク。
ズシッ、ズシッ……
ググッ
奴は再び俺に迫り、今度はハンマーを上段に構える。
今度は振り下ろして叩き潰す気か。
オークとの距離は2mほどで、これが腕の長さとハンマーの打点から最適な距離なのだろう。
「ブヒッ♪」
ブンッ!
豚らしい声を漏らしてオークはハンマーを振り下ろす。
よし、ここだ!
フッ
このタイミングで俺は先ほど外して転がっていた氷の杭と入れ替わり、オークの攻撃範囲から大きく外れた場所に逃げる。
そして……
「ブフゥ……」
ブルブルッ
奴はずぶ濡れになっており、足元にも水が撒かれていた。
氷の杭と位置を入れ替えると同時に、水の塊をオークの頭上に出現させたのだ。
すぐに魔石のみを回収し、ただの水に戻したことで落下したのだろう。
しかし、俺は水が落ちた音を聞いておらず、水が辺りに撒き散らされる光景も見ていない。
「……」
これで奴の能力におおよその予想ができた。
黒いオークの能力は瞬間移動ではなく、対象の意識だけを停止させる能力だろう。
そうなると商隊全員を止めていたし、それはそれでヤバい能力だ。
数十体のオークを瞬間移動させるよりは、俺達の意識を止めるだけのほうが数だけで言えば難易度が低いのではないだろうか。
攻撃しようとした瞬間に意識を止められた点が疑問に残るが、それは俺が自分をゴーレムにしているときのダメージ管理を自動でしているようなものだと思われる。
おそらくは自分の意志で発動させることもできるが、直接危害を加えられるような行動に対してはその能力が自動的に発動するのだろう。
あくまでも推測であり、確証はないが……この可能性が高いと思って動くしかない。
逃げるだけでは奴を倒せないし、意図して意識を止められたら逃げることも不可能だろう。
となれば、推測を元にしてでも黒いオークを倒すしかないからな。
ここで俺は氷の玉をビーナの傍に出現させる。
フッ
「えっ?」
これにはオークの能力が自動的に発動することもなく、ビーナが奴の背後にいたのもあって意図的に止めることもできなかったようだ。
続けて俺はその氷の玉と入れ替わり、ビーナのすぐそばに出現すると彼女に手を伸ばして抱き締めた。
フッ、グイッ
「えっ?何……キャッ!?」
むにゅり
俺は魔法使いらしい格好をしていたので防具が最低限であり、抱き締めたことで全裸だったビーナの柔らかさを強く感じられる。
しかし、それを味わっている場合ではないので次の手を打った。
「な、何を……?」
赤い顔をしたビーナが問い質してきたので、仕掛けをしながらそれに答える。
「奴をこちらへ引き寄せる。警戒するより突っ込んでくるように、何か演技でもしてくれ」
「ブルルル……」
オークは俺が瞬間移動したことで警戒している。
こちらが同じような能力を持っているかもしれないと思っているようだ。
もしもこれ奴にで逃げられたりすると厄介なことになるので、ここで仕留めるためには突っ込んできてもらいたいのだが。
「ええ……?じゃあ、怒らせるほうがいいかしら……?」
「何でもいいよ、急いでくれ」
「じ、じゃあ……えいっ、ンッ」
グィッ、チュッ
「むぐっ!?」
俺の指示にビーナは少し戸惑うと、一瞬躊躇するも唇を重ねてきた。
そのついでか俺の首に手を回し、ガッチリと固定しては舌まで入れてくる。
「ンチュ……ジュルルッ」
「むぐぐ……」
顔もスタイルも良い相手なので気分は良いが、ここまでする必要はあるだろうか?
「ブオオオオオオッ!」
ドドドドド……
しかし効果は十分にあったようだ。
自分の獲物を取られたと思ってか、黒いオークは俺達に向かってきて……
「オッ……?」
ドザザァッ!
と俺達の所まで辿り着くことなく前のめりに倒れ、そのまま動かなくなった。
「ンパッ、ジュルッ……な、何をしたの?」
「プハッ、えーっと……」
唇を解放されはしたが、それでも答えに窮する俺。
何故なら……黒いオークが倒れたのは窒素によるものだからだ。
窒素のゴーレムを出して周囲に解放し、そこに突っ込んできた奴は濃度の高い窒素を吸って意識を失ったのである。
以前ゴブリンなどに使った、窒素の吸引によって低酸素症を引き起こす殺し方だな。
声を発していたので呼吸をするのだと考え、それならばこいつにも通じると思っての手段だった。
だが、直接仕掛けようとすれば気づかれて意識を止められていただろう。
なので俺達の周囲に窒素を仕掛け、向こうから突っ込ませるしかなかったのである。
ビーナを抱き締めたのは黒いオークを誘うためでもあったが、ビーナの安全を考えてのことでもあった。
俺達の周りだけは普通の空気をゴーレムとして出現させており、その範囲から出て窒素を吸ってしまうのを防ぐためだったのだ。
まぁ……俺の足元にある、核としての魔石に気づかせないようにという意図もありはしたが。
しかし窒素のことを説明するのもなぁ。
容易に暗殺が実行可能な危険人物だと思われるのは心外だ。
なので答えられずにいると、彼女は首を横に振った。
「まぁいいわ。それよりあれは死んでるの?」
目線で黒いオークを指すビーナに、俺は彼女の肩を掴んで離れようとしながら答える。
「あぁ、多分な。確認のために氷の杭を撃ち込んでみるか……」
グィッ
「……」
グィッ
離れようとした俺に対し、逆に首へ回していた手に力を込めるビーナ。
「おい」
「……なによ」
「離れたほうがいいと思うんだが」
「離れなくても氷の杭は撃てるでしょ」
「それはそうだが……とりあえずやるか」
ドズッ
氷の杭は滞りなく黒いオークの頭部に突き刺さり……それでも奴の能力が発動することはなく、奴の身体が動くこともなかった。
それはビーナも自分の目で確認しており、これで安心して離れるだろうと思って再度彼女の肩に力を込める。
グィッ
グィッ
「……」
「おい、もう大丈夫なのはわかっただろう」
「そうみたいね」
「そうみたいねって……いつまでくっついてる気だよ」
「ちょっとぐらい良いじゃない、怖い思いもしたんだし」
「えぇ……?まぁいいけど……」
「じゃあもう1回、ンッ♪」
チュッ、チュルルッ
「むぐっ?」
再びキスをしてきて、今回もスムーズに舌を入れてくるビーナ。
安全が確保され、全裸の美少女にディープキスをされる。
健康な男がそんな目に遭えば、前が反応してしまうのも当然だ。
「ン、ジュルル……ん?」
正面から抱き合う形になっているので、これもまた当然のようにビーナへ伝わってしまう。
「ンン……」
クイッ、クイッ
ズリズリ……
しかし、彼女は離れるどころか身体を押し付けてくると、踵を上下させて自身の腹部で俺の前を擦り上げてきた。
流石にまずいと思い、俺は唇を何とか離す。
チュパッ……
「プハッ。おい、流石に……」
と、止めようとすると、ビーナは俺を遮ってこんなことを言い出した。
「あのさ……あのオークに舐められて気持ち悪いのよね。よだれが付いて汚いし、そんな私を抱き締めてアンタも汚れてるでしょう?だから……アンタの水魔法で洗わせてくれない?」
「あぁ。それはいいが、なら離れた場所で……」
「……」
ススッ……
その申し出は理解できるので了承し、体を洗うのなら離れた場所にしようと言いかける。
すると……ビーナは俺の首に回していた腕を腰に下ろし、グイッと自分の方へ引き寄せた。
グイッ
「ん?おい……」
抗議しようとする俺に、彼女は赤い顔で言う。
「どうせなら一緒に洗えばいいでしょ。助けてもらったし、アンタの背中を洗ってあげるわよ」
「いや、俺のほうは服しか汚れてないんだが……」
「ついでに身体も洗えばいいでしょう?今日出た村でも濡らした布で拭くぐらいしかできなかったでしょうし、少しは汚れてるんじゃない?」
自分達だけ身綺麗にしていると悪い気がするし、商隊のメンバーに自分達も身体を洗わせてくれと言われるのも魔力的に困る。
なので身体を洗うのは控えており、それ自体はちょうどいい話なのだが……雰囲気的にそれだけでは済まなそうな気がするんだよな。
「いや、それでも一緒にである必要はないし……」
「背中を洗ってあげるって言ってるでしょう?それに、アンタだけ私の裸を見てるのずるいじゃない」
「えぇ……?あれは仕方なかっただろう?来たときには裸だったんだし」
そう返した俺に、ビーナは熱い眼差しで聞いてくる。
「それはそうだけど……私じゃ嫌なの?」
「ぐ、それは……」
「嫌じゃないわよね、こんなになってるし」
ズリズリ……
ムニムニ……
そう言いながら彼女は再び身体を上下させ、押し付けられて潰れた胸の向こうで俺の前を刺激してきた。
「ね?ただの助けてもらったお礼だし、アンタを独占しようとは思ってないから……シよ?」
耳元で囁かれたその言葉は俺に都合が良く、となればその気になっている身体を我慢させる必要はない。
というわけで……俺はビーナのお尻を掴んでそれに答えた。
ワシッ、モミモミ……
「お礼ってことなら、俺の好きなようにやらせてもらうぞ」
「んっ♡その……あ、あんまり慣れてないから程々に……」
「断る。嫌なら止めておくか?」
俺は最終的な確認を取るが、彼女は固い意志を表明する。
「……止めないわよ。こうなったら全力で来なさい!」
「了解」
こうして俺達は身体を洗うことになり……しばらくして、ビーナは裏返したカエルのようなポーズで白目を剥くことになった。
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