表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

習作 三題噺

習作 -  三題噺②《スカイダイビング 古びた方位磁針 アイスクリームのコーン》

作者: 都田祥

方位磁針は、同じ方向を示している。

 ――あの時、アイスクリームのコーンまできちんと食べておくべきだった。

 そんなことを思うのは、今とんでもなく腹が減っているからだ。

 腹が減って死にそうだ。

 比喩ではなくて、このままだと死んでしまうかもしれない。



 方位磁針は、同じ方向を示している。



 カラフルな砂丘の上で途方に暮れる。

 空には三つの月。

 太陽が地平線に沈んでいくが、もうすぐ別の太陽が反対側から昇ってくるだろう。


 今、こんなところで死にかけているのは、あの時アイスクリームを食べきらずに、店を飛び出したからだ。

 片手には祖父の家で拾った古びた方位磁針。

 こんなものを拾ってしまったから、追われ追われて気づいたら空から飛び降りていた。

 


 方位磁針は、同じ方向を示している。


 ――いや、本当はわかっている。

 今途方に暮れているのは、道を見失っているのは、そもそも進むべき方向を知らなかったからだ。

 方位磁針はどんなに古くても、同じ方向を示すのだから。



 でも、今欲しいのはこんな骨董品じゃなくってアイスクリームのコーンの方だ。


 方位磁針は、同じ方向を示している。


 僕は何とか立ち上がって、歩き始めた。

 方位磁針の差すのとは逆の方向に。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ