第42話
食事会が終わった。空になった皿が運ばれ、ゴミが集められて外で燃やされている。
日は傾き、後片付けはほぼ終わっていた。
ロロには先に帰ってもらった。松葉杖はまだ手離せないが、1人で移動する分には問題ない。
依頼掲示板の前にツラモたちが向かっているのを見つけ、急いで駆け寄った。
「アギノフ、来たね」
「はい。今からわたしは閃きのカモメに、生きたファラクセロを見つけるまでの間所属するということでよろしいですか」
ツラモは首を横に振る。
「ファラクセロの調査が終わって、無事に帰って来れるまで」
たしかに、ファラクセロ見つけた途端わたしがどこかに行ってしまってはよくない。
「そうですね。すみません、間違えました」
「いい。自己紹介をする。閃きのカモメのメンバー」
彼女は右手で3人の団員を差した。彼らは順番に口を開いた。
「ウィアです。感知と記録やってるんだ。よろしく」
「ゴルルゥ、です。ほんとの発音は違いますけど……荷物を守って運ぶのが担当です」
「ペディイ。戦闘してるのはあたし」
ウィアは背の低い男性、ゴルルゥは竜人、ペディイは体格のいい女性だ。
「ウィアさん、ゴルルゥさん、ペディイさん、少しの間よろしくお願いします」
「どうぞよろしく」「よろしくお願いします」「よろしくー」
挨拶を済ませた。
「ファラクセロのことはちょっと情報がある。それを今日共有したらどこに向かうか決めて、明日すぐ出発する」
「待ってください」
ロロのことがあるので、お世話をする人を探さなければならない。
「仲間のロロが足を骨折していて、お世話をする人を探さなければならないんです」
「それあたしがやるわー」
ペディイが手を挙げた。声色からしてあまり乗り気ではなさそうだ。
「嬉しい申し出ですが、断ります。ロロに何かあってはいけないので」
いい加減な世話をされて、ロロに何かあっては困る。そう考えると、シラヤト教会の病院にいてもらうのが一番いいだろう。
「いや、別にそんな変なこと考えてるわけじゃなくてさ!ただアギノフの……さん噂だと戦闘力が高いんでしょ?あたし今回いらないんじゃないの」
不機嫌そうな声から、焦る声に変わった。
「何でもできるわけじゃありませんから、そういった心配はありませんよ。それに閃きのカモメで連携が取れているのはペディイさんです」
こちらもペディイが敵のような態度をとってしまったのを取り消すように、柔らかく言った。
「う、ん……」
不機嫌は解消されたようだ。
ロロは教会で預かってもらおう。もちろん寄付はする。
「ではロロは教会で預かってもらいます。戻ってくるまでここで待っていただけますか」
「わかった」
ツラモに待たせる許可を得て文句を言うロロを説得して教会に預け、閃きのカモメが拠点にしている下宿に着いた。教会への寄付は自分の財産から1万ドエル出しておいた。
「ガノワラ諸島で調べた結果、ファラクセロが向かうのは魔力が出てるところ」
5人で過ごすには少し狭い部屋で説明を聞く。3人くらいを想定して作られた部屋ではないだろうか。
「あと方角は西。わかってるのはこれだけ」
「そうですか……向かう方向がわかるだけでも助かりますね」
「あとは魔力感知して強いほうに行けばいいんだから向かう場所だけなら簡単なんだ」
ウィアが感知担当らしい発言をする。
魔力の強さというところにどう感じるのかという疑問が生まれた。わたしの感知は魔力受容域を作り出した地点に、魔力があるか無いかしか分からないからだ。
スキルによる感知は仕組みが違うようだ。
「ファラクセロに余裕で対抗できるアギノフさんが来たから、うちのリーダーが推理した方向にいけるってわけ」
「推理?」
ということは西に向かうという答えは断片的な情報から導き出したものだ。情報自体も聞いておきたい。
「さっきの答えに辿り着いた理由はどんなものですか」
「セリトレイのイルカたち本部にある資料とガノワラ諸島の伝説から」
「聞きたいのですが、いいですか」
「いいよ。ゴルルゥ、内容まとめたやつをここに」
「はい、はい!」
荷物から羊皮紙が取り出された。貴重なものだ。床に置かれたそれを慎重に覗き込む。
そこには根拠となる資料と伝説の文が書かれていた。
資料はこうだった。
『生き残った彼らはガノワラから去った。体の大きいものたちが群れて西へ向かい、小さいものたちは散り散りになった。西へ向かうものを追うと、現れる魔物が強くなっていった』
伝説は歌の一節のようだ。
『鎧の怪魚はマナが好き 落としたマナのかたまりに みんなはげしく踊り狂う』
「マナは魔力、マナのかたまりは魔石ということでしょうか」
聞いたことのない言葉だったが、ファラクセロが魔力の出るところに向かうということから意味はわかる。だが、知らない解釈もあるかもしれない。
「それであってる。魔物が強くなるという記述から魔力の出てる場所に近づいてるってわかる」
魔力の出ている場所。知識として知らないわけではないが、実際に見たことはない。吹き出す魔力の影響で魔物が強くなり、強くなければとても近づけないからだ。
「この魔力が出てる場所は黒力場って呼ばれてる。わからないことだらけで暗闇みたいだから」
そんな場所に専門家と調査に行けると思うと楽しみだ。
「ガノワラ諸島から西にある黒力場に向かってファラクセロの調査を行うと」
「そう。じゃ解散。みんな夕食まで自由に過ごして」
ウィア、ゴルルゥ、ペディイは立ち上がってそれぞれ自分の荷物が置いてある場所にいく。
ツラモはその場で座ったまま話しかけてきた。
「あなた、文字が読めるの」
「親に教えてもらいました」
「いい両親」
実の親でない父ひとりに育ててもらったので、どう答えるか迷って目を逸らす。
「そうですね。とても徳の高い人ですよ」
ツラモが立ち上がる。
「そう、私の親も負けないくらい素敵。裕福でもないのに魔法学校に通わせてくれた」
まだこの世界における学校というのはお金を持っている人たちのもので、一般的な家庭で進学を考えることは滅多にない。
「それはすごいですね」
「ありがと」
この後はそれぞれの時間を過ごし、夕食を食べて眠りについた。




