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第4話

記憶を整理した結果、

『スキルを持たない無術者が白き獅子団にいることが許せない貴族、セオドアによってわたしは市民権剥奪の上、恐ろしい魔物ひしめく森に追放された。』

というのがわたしが森で寝ていたあらすじのようだ。


追放されてすぐは意識を失っており、その間に異世界と現代のわたしの精神が融合したということのようだ。


魔物の多い森に戦えない人間ひとりというのは絶望するしかない状況だが、異世界転生に憧れていたわたしは魔法のあるこの異世界にこの上なく興奮していた。さっきまで涙が滲んでいた悲しみが消えたわけではないが、前向きに進んでいけそうなくらいには。


読み書きの心配はない。幸いにもスキルを持っていないわたしが生きていけるようにと教えてくれた人がいた。

赤ん坊のころに捨てられていたわたしを拾ってくれた白き獅子団の団員、ガロンドだ。


「すばらしい……!魔法が、ある!」


使えるスキルはなくても、魔力は使える。いやスキルの詳細もしっかり実験して知りたいが……現代の技術やさまざまなファンタジーを見てきたわたしにかかれば、きっと誰も発見したことのない魔法の使い方ができる。おそらく。


だがそのためにはまず安全な場所に行かなければならない。第一に森を抜け出す。第二にセオドアの目の届かない場所に行く。第三に職を探す。


森を抜け出すには魔物への対抗策を考えなければならない。魔力が特別多いわけでもないわたしは工夫が無ければ生き残れないだろう。精神が融合するまでのわたしなら知識が十分でなく工夫のしようがなかったが、今ならできる。幸い魔力の練りは下手なわけではない。


「喉が乾いていますし、お腹もすいていますね」


ずっと何も飲んでいないし食べてもいない。作戦を練りながら食料を探すことにした。


水を手から出してみる。まるで大量の汗がでるように表面から水がでてくる。異世界のわたしはなんとも思わなかったが、現代のわたしからすると、なんだかかっこ悪い。もっとかっこいい方法は……例えば水の球を手の上に発生させたい。

水の発生源を手の上にしてみる。そして形を念じて維持させる。


「できてますっ」


スキルがなく魔力を練ることで出せるものは単純なものだけであるが、これはとても助かる。ただこれに魔力を使うのはもったいなくもあり、早く水源を見つけたい。


「……ん」


水の球から水分補給をしていると、さっきの魔法への違和感が湧いてきた。


体から離れた状態で、魔法で作ったものがでてきた。これは、おかしいと異世界のわたしの感覚がいう。ものを生み出す場合、魔力から直接生み出そうがスキルを介そうが体の表面や魔導具が発生源になっていた。


そこからファンタジーの知識がある現代のわたしが考えたことのある仮説が思考の中で爆発した。


ファンタジーにおいて、魔法でものを生み出すのはありふれている。ここで、敵を倒すときに内部でものを発生させることができたらどうだろう。

中枢神経をあっさりと壊せるのだから、とても強い。だから、魔法によるものの発生源というのは制限があって、みんな手や口や魔導具からものを発射するのだろう。


この制限を、無視できたなら。


わたしはすぐそこにあった太めの枝を拾い、魔力を練って枝の内部に水を発生させるように念じる。硬い枝はあっさりと一部が水で壊れていき、3秒で折れた。


これはスキルだ。異世界のわたしと現代のわたしが融合したわたしはそう直感した。あってもなくても同じだと思われたスキルの内容が、こんなに早くわかってしまうとは。

現代知識がなければ、ずっと体に備わっている魔法の発生源からだけものを発生させていただろう。そしてスキルの真価に気付かなかったかもしれない。


作戦は、決まった。

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