第39話
アスハは信頼のある鑑定士を知っているが、その人の協力を仰ぐには難しい条件があるようだ。
「条件はね、スキル鑑定士……名前はツラモ……と生きたファラクセロを引き合わせること」
「生きた、ファラクセロ……」
50年ごとに現れる魔物をどうやって今から生け取りにすればいいのだろうか。依頼を受けていれば何かわかったりするだろうか。
「条件は分かっても達成できなさそうでしょう?達成する方法はギルド長のほうがわかりそうだから、そちらに聞いたらどうかしら」
「ドヅミギルド長ですか、明日授与式の後に聞いてみます」
「授与式の後はみんなで食事するからその時がいいわよ」
「わかりました。しかしなぜ生きたファラクセロをツラモさんに会わせると、協力してもらえるとわかるのですか?」
アスハは肘をカウンターから離した。
「ツラモはね、世の中のスキルを研究してるの。あるパーティーに所属してね」
魔物のスキルを調べる役割でパーティーに所属しているのではなく、研究というのはどういうことだろうか。
「よくわからないって顔ね。そのパーティーの名前は【閃きのカモメ】。ここを拠点として、よく遠くへ行って活動してるの。そこで手に入れたものはシラクーラでは高値で売れるってわけ」
移動は体力も資金も消費する。それだけ強いパーティーということか。
「強いから、遠くへ?」
「いいえ、ツラモのパーティーは情報特化だからそんなに強いわけじゃないの。物を売る時機を見て稼ぐ集団ね」
「すごいです、行商人としては大いに興味があります!」
ロロは売るために立ち寄った街の特産品を仕入れていたこともあった。彼女にとってどこの何がどこでいつ高く売れるかは重要だ。それがよくわかるほど目を輝かせている。
「あら、ロロちゃんは行商人なのね。素材鑑定士の私と相性がよさそう」
「そうですね〜!」
「素材の値段はまた後で話すとして、スキル鑑定士の話ね。彼女はまだ見ぬ魔物のスキルや、人、その他種族、動物、植物などの全ての生き物のスキルにおいて地域による傾向とかを研究してるの」
それまで黙って聞いていたナリナミが口を挟む。
「オレ、それ初めて知ったぜ」
「私は友達だから知ってるの。まあこの話はしても大丈夫だと思ってしてる。で、彼女は今ファラクセロについて調べてるとこ」
50年に一度の現象となればその生き物について調べるだろう。
「では、あの日はシラクーラではない別の場所に?」
「もちろんファラクセロが出現する記録のあった場所にいたわ。でも、シラクーラに出現してそこには来なかった。結局生きたファラクセロには会えなかったの」
わたしは下を向いた。
「それは……」
「あなたのせいじゃないわ。ファラクセロは泳ぎがとても速い。しかも事前に待機してた場所の近くはあの日の前も後も通ってない」
全部のファラクセロを殺したわけではないし、怪我をさせた個体は泳ぐのも遅いためシラクーラから離れた後もそこには行かなかったのだろう。顔を上げた。
「あなたのせいじゃないんだけど、ツラモはすごくがっかりしてて……彼女を生きてるファラクセロと引き合わせてあげたら、力を貸してくれるんじゃないかって思うわ」
悪いが、ツラモがファラクセロに会わなかったおかげで助かりそうだ。
「生きたままファラクセロを捕まえるのはすごく難しい。だから言っても無駄かしらと思ったのだけど、一応ね」
「いえ、無駄だなんてとんでもない。とてもいいことを教えてくださり、ありがとうございます」
頭を下げる。
「いいのよ。この街を救ってくれた、私からのお礼」
アスハは微笑んで髪を指でくねらせた。
「他に聞きたいことはある?」
「いえ、ありません」
「あっ、わすはアスハさんとお話ししたいです!」
「いいわよ、そろそろ持ち場に戻りたいからあっちでお話ししましょ」
ロロはアスハについていった。わたしはナリナミに話しかける。
「そういえばわたしとロロは同じパーティーにいるつもりなのですが、こう言った場合は組み合わせの申請はなしでパーティーの届け出をすることはできますか」
「できるよ。明日オレが処理しとく」
親指を自分の胸に当てている。仕草だけは頼もしい。
「ありがとうございます。よろしくお願いしますよ」
「まかせとけ!」
今日は有益な情報が手に入った。ギルド職員からの情報収集が終わった後に、鑑定士やファラクセロについて冒険者にも聞いてまわった。しかしアスハからの以上の質のものは得られなかった。
その後はドヅミから提供された家で過ごし、明日の授与式に備えていつもより早めに寝た。




