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第38話

「わたしたちはギルドに向かう途中でしたが、コルソさんは他に用事はありますか」


ギルドはもうすぐそこである。


「素材集めの依頼をもう受けてて。でも今からギルドでパーティーを組むための審査申し込みぐらいならできるはずです。おれもギルドにもう一度行きます」

「では行きましょうか」


コルソと共にギルドへ向かう。扉を開けると、依頼掲示板に数人が集まっていた。受付に着くと、ナリナミが飛んできた。


「おはよう!何か用があるのか?」

「ええ、パーティーを組むための審査をしてほしいのです」

「おっ、そうなのか!」


ナリナミは近くにわたしと無関係なはずの人間がいることに気づいた。


「そこにいるのはコルソか?アギノフと知り合ったのか」


ギルド職員は冒険者の名前をどれくらい把握しているのだろうか。


「おはようございます。おれが頼んだんです。パーティーを組めないかって」

「君、相変わらずぐいぐい行くね、ランク差を考えたら難しいんだけど」


コルソからわたしに会話を戻した彼がじゃあ、と言いかけてやめる。


「どうしました」

「アギノフとロロはまだ冒険者ライセンスを持ってないからすぐには審査できないな」

「そうですか」

「あとスキル鑑定もしてないだろ、誰との組み合わせがいいかがわからない」


スキル鑑定をして組み合わせを決めると言うことは、ギルドにスキルを知られるということだろう。


「スキル鑑定したあとの情報は漏れないように取り扱われますか」

「絶対漏れないとは言い切れないな。スパイとか、ギャングに襲われてとか」

「わかりました。パーティーを組む申請はやめておきます」


後ろを向いて謝罪する。


「コルソさん、申し訳ないのですがパーティーは組めそうにありません」

「いえ!考えてみれば審査を通したらおれより良い人がめちゃくちゃ見つかると思いますし……」

「ロロさんも時間を取ってすみません」

「大丈夫です!このくらいで謝らないでくださいな!」

「では、おれは素材採取に行ってきます」


コルソは礼をしてここから離れる。


「君たち今日はどう過ごすつもり?」


ナリナミから問いかけがきた。


「鑑定士を探そうかと思っています」

「セオドアってやつの嘘を暴くためのか」

「はい」


鑑定士についてコルソにも聞けばよかった。出入り口の方を見ると、もう彼の姿はなかった。


「どうした?」

「コルソさんにも鑑定士の情報を聞けばよかったと思いまして」

「わすが行きましょうか!あ」


ロロは言ってから自分が骨折していることを思い出したのか、下を向いた。


「無理でした、もどかしいです……」

「治るまで辛抱しましょう。ゆっくり過ごすのも発見があるかもしれませんよ」

「そうですかね〜……」

「鑑定士のことだが、オレはよく知らねえ。でもギルド専属の鑑定士に聞くことができたらあるいは……」


パーティー申請でスキル鑑定をするなら、ギルドに専属鑑定士がいる。その人はギルドから離れられないので別の鑑定士に繋いでもらうという算段か。


「いい案ですね。その鑑定士とはどうすれば話せますか」

「ん〜……それがな〜。1ヶ月に3日鑑定する日をつくって仕事部屋で待機してるんだが、仕事以外の会話はしたがらない。しかも仕事が終わるとすぐギルドからいなくなるから、頼み事をするのは難しいんだ」

「だめじゃないですか〜!」


ロロが残念そうな声を出す。

1ヶ月に3日とは異様に少ない勤務日数だ。それでギルドに運ばれてくる魔物の素材を管理し切れるのだろうか。いくらなんでも無理だろう。


「素材とスキルは鑑定する人は違いますか」


無理ということから導き出された答えはこれだった。


「あ、そうかそうだそうだ。スキル鑑定士じゃなきゃダメだって思い込んでたよ」


彼は頭をかいている。黒髪も体も揺れる。


「素材鑑定士はずっとここにいるし、頼み事も聞くだけなら聞いてくれる。呼んでくるよ」

「お願いします」


カウンターの向こう側を少し移動してすぐに戻ってきた。その隣には長い髪の女性が立っていた。


「あら、このひとが私に用があるのね」


彼女は髪を手でかきあげている。まるで濡れているような艶やかでまっすぐな髪が流れるように動く。


「はじめまして。わたしはアギノフといいます。後ろにいるのはロロといいます」

「ロロで〜す」


ロロは手を上げて自身の存在を主張している。


「はじめまして。私はセリトレイのイルカたち専属、素材鑑定士のアスハよ」

「はい、よろしくお願いします」

「よろしくお願いします〜!」

「こちらこそ」


口調は柔らかくはないが、厳しいわけでもない。怪しまれたり、敵意を持たれてはいなさそうだ。


「あなたのことはここの人ならほとんどが知ってる。とっても活躍したんですってね」

「それなりに役には立ったかと」

「それなり、ね。ほんとかしら?」


体がこわばる。どちらの意味だろうか。


「ええ、まあ。本当です」


手を叩く音が響き、その場の注目を集める。


「あー、もう!アスハ!アギノフからの頼み事を早く聞きなよ!」

「そうだったわね」


ナリナミはそこまで伝えてくれていたようだ。アスハがこちらに向き直る。


「頼み事は、何かしら?」


体のこわばりを緩めて答える。


「わたしには信頼のあるスキル鑑定士とライシロという街まで同行してもらいたいのです。良い人を知りませんか」

「同行できる信頼されたスキル鑑定士ね……、正直信頼についてはここの専属スキル鑑定士ぐらいしか……腕が良いならともかく信頼っていうのが難点ね……」

「そうですか」

「ん〜……」


ここまで聞いて、それならば町に情報収集に行こうと思った。しかし、何か言いたげにアスハが考え込んでいるので待つ。


「難しい条件だけど、アギノフくん、飛び級鯨ランクだものね。一応言っておくわ」


アスハはカウンターに肘をついてそう言った。

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