第28話
ナリナミが客人が来たのだからと貴重な薪を使ってお風呂を沸かしてくれた。
ロロに先に入らせて、わたしとナリナミはいっしょに入った。薪を節約するためだ。
ナリナミにわたしの痩せた体や火傷の跡や左腕のまだ治っていない怪我を心配されたが、それについても寝る前に話すからと言うと引き下がった。
3人とも寝る準備ができた。
ベッドはひとつしかないので遠慮するナリナミに使わせた。
ナリナミは寝巻きを着ているが、ロロは薄着で分厚いマントのようなものにくるまっている。わたしは薄着でシーツに包まれて、自分の服を上に被せている。ベッドとロロに挟まれる形になった。
「さて、アギノフさん、さっきあんなことになった精神の問題とやらを話してもらいますよ!」
尋問のようにロロに言われる。きっと心配しているのだろう。
「オレも聞くぜ」
ナリナミがベッドの上から頭を突き出している。
「では、話します」
わたしは自分が無術者であったこと。
それを理由にセオドアという貴族に嫌がらせをされていたこと。
ある日突然スキルを授かり、それを好ましく思わなかったセオドアに火傷を負わされ嘘をつかれて街から追放されたこと。
そしてセオドアに見つかればどうなるかわからないため、その可能性が非常に低くなって安心したこと。
話しているときに2人がどんな反応をするか怖かった。実はセオドア側のスパイなんじゃないかとか、白き獅子団に引き渡されないかとか、無術者であったことを蔑まれないかとか。
2人は否定せず、ただ相槌を打ちながら聞いていた。
話し終わったとき、2人の顔を見ることができなかった。下を向いていると、ロロが口を開いた。
「わすは、アギノフさんの味方です。だって、5日だけですけども……いっしょに過ごして悪い人には見えませんでしたから!」
上からナリナミの声が聞こえてくる。
「オレはロロほど君のことわかんないけどさ、もし悪いやつならこの町では強いやつがすぐ捕まえる。だから、大丈夫で……なんというか今はもうオレ、アギノフのこと、信じてるよ」
ロロの言葉で、恐怖は一気に消えた。わたしはセオドアの呪縛から解放されたのだ。
ナリナミは意外と慎重らしい。それでも信じてくれるというのは嬉しかった。
「2人とも、ありがとうございます……」
自分の中身を、秘密を話したことが恥ずかしい気がして、床に突っ伏した。
「とにかく安心してくれよな、この町にはセオドア?ってやつみたいなのはいねえから!」
わたしは仰向けになって顔を天井に向けた。
「はい、そう願ってますよ」
「アギノフさんそれ好きですよね」
「なんだよ〜、信じてくれないのかよっ」
「ふふ、すみません」
全員の静かな笑いが空間を満たす。
「あっ」
ロロが笑いながらなにかに気づいたような声を出した。
「どうしましたか」
「なんだなんだ?」
「そういえば、アギノフさんの取りに戻れない忘れ物って今話したことが原因ですか?」
ロロは魔石のことを覚えていたようだ。自分のことを覚えてもらっているのは喜ばしいことだ。
わたしは今魔石のことは頭になかったというのに鋭い少女である。
「ええ、そうですよ」
ナリナミが会話に割り込むように声を出す。
「オレ今仲間外れ?」
ナリナミはいつでも愉快そうな声を出す、それに乗って少しからかってみる。
「ええ、そうですよっ、ふふ」
「なんだよっ」
「かわいそうに〜」
ロロとわたしでナリナミをからかった。
「冗談です。ちゃんと話しますよ」
次は辛いだけではない、暖かみもある思い出話だ。




