第25話
ライセンスについてナリナミに聞いてみる。
「実は冒険者になろうと思ったのが最近でして。ライセンスについてよく知らないのです」
「よーし任せとけ!」
ナリナミは自信ありげに胸を叩いた。
「説明する前に、君たちこのリクアルキガニ食べたいんだろ。調理できる場所が外にあるんだ。ほんとはタダじゃないけど、オレにもカニを分けてくれるんならタダで、というかオレが金を払っといてあげるよ」
とても大きい蟹だから、2人では食べきれないかもしれない。むしろ3人で食べたほうがいい。
「わたしはそれでいいですが、ロロさんはどうですか」
「いいですよ!そうしましょ〜!」
「よしきた!ライセンスの説明は食べながらしよう。カニを持ってついてきてくれ」
ナリナミはわたしたちが入ってきた扉とは別の扉から外へ出る。この建物には複数の出入り口があった。
外へでると海と港が目の前にあった。建物の前は石畳がなく地面が見える調理場が、その先に公共の道があり、港がある。
海側からでもギルドに来れるということだ。
ナリナミが調理場で待っていろと言うのでそうすると、彼は調理場の近くの倉庫からすこしの藁と薪、火ばさみと火打ち石を持って戻ってきた。
「これが貴重だからここを使うのに金がかかるんだよなっと」
かまどの近くに薪が置かれる。
かまどは現代のキャンプ場に置いてあるものとほぼ同じだった。奥と横を石で囲っていて四角い。石に金属の棒が挟まるように固定されていて、網の役割を果たしていた。
「火の準備はオレがするから、君たちはカニの分解をしてくれないか?」
「わかりました」
「はいな」
薪が組まれ、火打ち石で藁に火が付く。その藁が組んだ薪の中心に投げ入れられる。
「火を魔法で起こすことはしないんですね」
「オレたち海の民は火の魔法は苦手なんだ。スキルとして持ってるヤツは全然いないし、魔力で火を作ろうとしてもなんかうまくいかねえのさ」
苦手なことを話しているのに、とくに嫌そうな感じはない。海の民であることに誇りを持っているように見えた。
「そうなんですね」
火そのものは調理に使うのだから想像できないということはないはずだが、遺伝や環境で適性が変わっているのだろうか。おもしろい。
さて、蟹の分解をしなければならない。
「脚を胴から離せばよさそうですね」
「よ〜し!わすがやってみます!」
彼女は調理台に蟹を置き、その横リュックを下ろした。そして蟹の脚を手で千切ろうと試みている。
「うぐぐ、ふぅ」
苦戦しているようだ。
「たぁっ!」
ぶちっという音と共に脚が千切れる。
「結構力いりますね……自信あったんですけれども」
「わたしがやってみます」
枢壊撃を一番最初に使ったとき、木の枝はじわじわと壊れて千切れた。破裂させると危ないので、それと同じようにやりたい。
「……すー」
深呼吸をしながら集中する。少しずつ脚の関節であり、薄くて可動できるが丈夫な外の部分に水を発生させる。
ぷちゅと組織が壊れる音がして、脚が胴から落ちる。あと6本、全ての脚の付け根に同時に枢壊撃を行う。6本ともうまくいき、脚と胴の分解は終わった。
6箇所に魔力で水を発生させた時、そこの位置の違いが感じられた。6箇所という多くの場所に魔力を発生させたからだろうか?
「おお、いい感じですね!」
「これでかまどで焼くことはできそうです」
ナリナミのほうを見ると、火が調理に使えそうなくらい大きくなっていた。
「分解できました」
呼びかけると彼は振り返って答えた。
「こっちもいい感じだ!カニを持ってきてくれ!」
蟹を持っていくとナリナミが網に乗せていった。
わたしたち3人はかまどで蟹が焼けていくのをしばらく見ていた。
「よし!そろそろだろう。皿を持ってくるから待ってな」
ナリナミはギルドの建物の中から大きい皿1枚と普通の皿3枚、ボウルを1個持ってきた。小さい皿とボウルをテーブルに置くと、大きい皿に蟹を火ばさみでつかんで入れていく。
かまどには薪がまだ残っていた。燃やし尽くしてから灰置き場に置くとのこと。
テーブルに蟹が置かれ、食べる準備ができた。時間的にこれはおやつ扱いでいいだろうか。
「殻はボウルに入れてくれ、それじゃいただきますをするか」
「「「いただきます」」」




