第24話
銀魔猪のときよりもロロの移動が速い。何も持たずに走ったらどのくらいになるのだろうか。
わたしは何かあってもいいように進行方向以外にも視線を向けた。前にも、左右にも後ろにも異常はない。感知スキルが欲しいものである。
「いい日、ですね……」
今日も晴れている。太陽の暖かさと風の心地よさに身を委ねた。
右に見える海をときどき観察していた。磯に打ち寄せる波が見える。生き物の観察をしたくなる。
この世界の生き物は魔力の影響を受けていて現実世界の生き物とは違う。そして危険なものを魔物と呼んでいる。
「そろそろ着きま〜す!」
監視塔をしながらこの世界の生き物について考えていると前方に街が見えてきた。あそこが、海辺町シラクーラ。
道中、蟹の魔物以外に会うことはなく無事に町へ着いた。
「それじゃ降ろします!」
「はい、ありがとうございました」
ロロの肩から降ろされた。町には門がついていたが今は空いているようだった。
「冒険者ギルド、『セリトレイのイルカたち』に向かいましょうか」
「はいな!」
門をくぐり町に入ると海がすぐ近くにあるのがわかった。港と船が見える。来るもの拒まず去るもの追わずができる町ということで、発展している。
「にぎやかですね」
「そうですね!前来た時より広くなってもいます!港の方にあんな建物はありませんでしたよ〜!」
そういって、ロロがここから奥に見える大きめの建物を指差す。
前はなかった建物。ということはそれが進出してきた冒険者ギルドの建物かもしれない。
「新しくできた建物なら、それが『セリトレイのイルカたち』のものかもしれません」
「たしかに!賢いですね!」
「どうも。覚えているのもすごいですよ」
「やった、ありがとうございます!」
建物の方に視線を戻した。
「まだギルドの建物と決まったわけではありませんが、向かう価値はあると思います」
整備された道を歩いてロロが指差した建物へ向かう。
ラヤのときは変異種の銀魔猪で注目を集めてしまったが、シラクーラでは蟹の魔物を抱えていても誰も気にしていない。よっぽど冒険者が多いらしい。
だんだん近づいていくと、その建物の看板が見え出した。冒険者ギルドとイルカの紋章、それにセリトレイのイルカたちという文字がある。
「セリトレイのイルカたち……あそこで合っているようです」
「そうですね!」
冒険者やハンターは文字が読めなくてもできる仕事であり、彼らの識字率は低いと考えられる。
だから紋章で識別しやすいようにしてあるのではないか。調査したわけではないのでただの予想だが。
「ごめんください!この魔物について聞きたくて来ました!」
建物に入るなりロロが要件を伝える。少し騒がしさが減ったが、また騒がしくなった。
カウンターのほうには魔物を持ち込んでいるであろう人たちとその魔物を見ている人たちがいた。
「魔物討伐か!?こっちに来な!オレが見てやるぜ!」
ロロと同じくらい元気な青年がカウンターの向こうから手を振って声をかけてきたので、そちらへ向かう。
青年は日焼けして浅黒い肌、わたしより少し低い背、短い黒髪を持っていた。
「これです!食べられるかどうかを知りたいです!」
またロロに応対させてしまったが、もう気にしないほうがいいだろう。当の本人は蟹の魔物を頭上に掲げて青年に見せている。
「そいつはリクアルキガニの仲間だな、食べられるぜ。一応ちゃんと見とくか」
青年はカウンター横にある台を指差した。
「そこに置いてくれ」
ロロが蟹を置くと彼は座って甲羅を見たり裏返したりした。
「よし、間違いはなかったな。食べられるヤツだ。ところで君たち、シラクーラは初めて?」
わたしとロロは顔を見合わせた。ロロが先にどうぞとこちらに手を向ける。
「わたしはそうです」
「わすは前に来たことあります」
青年は笑顔で立ち上がった。
「お兄さんはようこそ、おじょうさんはまた来てくれてありがとう、オレはナリナミ。名前を聞かせてくれ」
「ロロです!」
「アギノフです」
「そうしたらロロ、アギノフ、君たち冒険者かい?」
ナリナミはコミュニケーションが得意なようだ。楽しそうに話している。
「まあ、そんな感じです」
ロロも頷いた。
「そんな感じ?あー、えっと、じゃあライセンスとかは持ってる?」
「いえ、これからです」
「行商人なのでライセンスを失効しそうでえ……」
あまり堂々とは言えないことだからか、ロロは体をゆすっている。
「はははっ、行商人はしょうがないよ。そっちのお兄さん、アギノフだっけ?」
「はい」
「アギノフはどうするんだ?ここでライセンス取ってくのか?」
わたしはライセンスについてはよく知らない。ここは詳しく聞いたほうがいいだろう。




