第23話
野宿することになるかもしれないと聞くと走りたいところだが、あまり体力を消耗すると枢壊撃を使う際に問題が起きる。それは避けたい。
太陽が高くなってお腹が空いたので用意していたパンと塩漬けの貝を食べた。塩辛いので水分補給は必須だった。
海沿いの道を歩いていると、遠くに人間ではない何か見えた。
「ロロさん、あれは魔物でしょうか」
「そうですね〜、これから戦う時は2人でやりましょ!わすがアギノフさんに近づく魔物を倒しますので、攻撃をしてくださいな!」
「わかりました、わたしの視界に近くからいきなり入ると危ないので気をつけてほしいです」
もしロロに枢壊撃をしてしまったら取り返しのつかないことになる。
反射的に視界に入ったものに撃ってしまうなどの万が一を考えて注意してもらうことにした。
「はいな!横や後ろの見えないところで蹴散らします!」
近づいてみるとたしかに魔物で、1匹大きな蟹の形をしているものがいた。脚を広げると4mはありそうだ。ズワイガニを攻撃的にしたような形の蟹の魔物は何かを食べている。よく見ると、何かとはゴブリンだった。
「ゴブリンを、食べている……横を通れば戦わなくても良さそうですね」
「道の近くにいるような魔物は倒しちゃったほうがいいです!もし人が食べられたら人の味を覚えた魔物の完成です!」
野生の熊が現代でされる扱いだ。でも知能の低い魔物に対する意識はそのほうがいいのかもしれない。
その場から枢壊撃を放つと、一瞬動きが震えて蟹の魔物は動かなくなった。
「銀魔猪をどうやって倒したのか知りたかったので、アギノフさんが魔物を倒すところをみるのを楽しみにしてたんですよね。斧を壊した時にはよくわからなかったので」
「いかがですか、感想は」
「よくわかりませんでしたあ!」
額に手を当てて残念!と言わんばかりだ。残念がっていても明るい雰囲気なのはさすがである。
さて魔物に視点を戻すと、高級食材で滅多に食べられない蟹が目の前にある。
「この魔物、美味しそうですね。蟹ですし」
「そうですね〜!前シラクーラで似たようなのを食べました!」
だが元魔物資源記録係とはいえ、海の魔物には詳しくない。この蟹を食べていいか定かではないのだ。
「しかし、毒があるかがわからないですね」
「食べてお腹壊すのはいやです〜!」
「食べないにしても、討伐証明部位も分からなければそもそも討伐対象かもわかりません」
こうしている間にも時間は過ぎる。野宿をしなくてもいいように、できる限り急ぎたい。
「今回は諦めますか」
「いや、アギノフさん。銀魔猪を運んだ時と同じようにすればいいのです!」
あの時はロロに担ぎ上げられた銀魔猪の上に乗って移動した。
「しかしあの移動方法はロロさんへの負担が大きいのでは?」
「銀魔猪のときよりははるかに小さい負担だから、大丈夫です!」
それならば運んでもらってもいいだろう。体力の無さが課題であると認識したばかりではあるが……
「恥ずかしい話ですが、最初からわたしを運んでもらえばよかったかもしれませんね、野宿の心配もなくなっていましたし」
運ばれることへの申し訳ない、恥ずかしいといった気持ちを誤魔化すように笑う。しかし安全のほうが大事である。
「もしとんでもなく強い魔物に遭遇した時のためやこういうときのために魔力を温存しておきたいのです!」
ロロは笑顔を返して言う。
「それに、わすは野宿でも大丈夫ですよ!魔物避けも持ってます!」
彼女の言葉に申し訳なさが薄れる。
「そう言ってくれると、楽になりますね。魔物避けは今は使わないのですか?」
「魔石の魔力で稼働するので充電期間が必要なのです」
この世界の魔石は使った後に置いておくと魔力が補充されているのだ。これは世界に魔力が満ちているからと言われている。
「ああ、理解しました」
「さあ、わすの右肩に乗ってくださいな!」
わたしは言われた通りにすると、リュックと肩にまたがる形になった。手の置き場所に迷う。
「頭に捕まっても?」
「あ、すみません!リュックの持ち手に捕まってくださいな!」
わたしはロロの首元の近くにあるリュックの持ち手を掴んだ。
「いきますよ〜!」
「はい!」
ロロは蟹の魔物を左肩に乗せて走り出した。




