第21話
研究所を出たときには昼近くになっていた。
「昼食を食べたら出発しましょうか」
「そうしましょ〜」
さまざまな屋台が出ている。ライシロの街もこうだったが、食べ物に魚や貝が多いのは違っていた。
わたしたちはミズマキハゼの塩焼きを選んだ。そこまで大きい魚ではないので2匹食べることにした。
「わすより体が大きいのに、同じ量のごはんでいいなんて不思議です!」
「そんなに大荷物を背負って歩いている人と同じなのが不思議ですよ。なんならクアティエ・ホテルでわたしより多く食べることができていたでしょう」
他愛もない会話をしながら昼食を終える。川下りにどのくらいの時間がかかるかわからないので、パンを買った。
ロロは袋や蓋のあるカゴをたくさん持っており、パンはカゴの中に入れてわたしが持った。
サーフィー川の橋の下、舟がいくつか見える。
ひとつの舟が魚をたくさん積んで陸に近づいている。漁をしたのだろう。
「一体どれがアニー行きの舟なんでしょう」
「停まっているやつにきいてみましょ」
川まで行くと2つ舟が停まっていた。近かった方に人を乗せているか訊く。
「乗せてるよ。おまさんはどこに行きたいんだ」
「アニーです」
「通るね、乗って行くかい?」
船頭にも舟にもとくに問題がなさそうだ。あとはお金か。
「お代はいくらです?」
「2人なら10000ドエルだね」
ロロを見ると親指を立てているので承諾していいということだろう。
「ではお願いします」
「あいわかった」
乗り込むと舟は川岸を離れた。川の流れは穏やかである。船頭に話しかけても良さそうだ。
「どのくらいかかりますか?」
質問すると船頭は進行方向から目を離さず答えた。
「だいたい2、3時間かね、まあ暗くなる前には着くよ」
川下りは特に問題なく終わり、暗くなる前にアニーに到着することができた。
代金を渡し、船頭と別れる。
今日はアニーに泊まることになるだろう。先に宿を探すことにした。
「どこに泊まりましょうか」
「こういうときは何個か見て決めま〜す」
「勉強になります」
「あははっ!」
3つの宿屋を見て回った。
ロロは、お金に余裕があるので多少高くても清潔なところを選びたいという意見だった。わたしも火傷だらけの体を労わりたいのでそれに賛同した。
2階建ての、看板がなければ少し大きい一軒家に見える宿、川蹴り鴨の巣に決めた。話をきいた限り清潔そうでベッドの質が良さそうという理由だ。
「いらっしゃい、さっきの2人だね。ここに泊まるのかい?」
「はいな!」
ロロは声で返事をし、わたしはうなずいて答えた。
「はいよ!それじゃお代はさっき言ったけど2人で6000ドエルだよ。1階の右側、1番奥の部屋ね。これが鍵。1つしかないから気をつけな」
フロントの女性には部屋を分けるかは聞かれなかった。ロロは気にしていないようなので今回も分けなくていいだろう。
お金を払って部屋に向かう。クアティエ・ホテルよりは狭かった。前に使った人の痕跡はなく、よく掃除されている印象だ。
ベッドは部屋に対して大きいものが2つある。何人かで泊まる人たちが多いのだろうか。話の通り寝ることに問題のない、いいベッドだった。
窓から赤みがかった光が差し込んでいる。
「まだ明るいですね、ロロさんは品物の仕入れなどしますか」
「ん〜、今日はいいです!ここはラヤと特産品は変わらないと思いますし!」
「そうなんですね」
わたしは治療のための魔力練り、ロロは体術の型をして過ごした。
魔力を練っている途中、変異種銀魔猪の報酬を貨幣入れに入れるのを思い出した。
袋の中身の9割を貨幣入れに移し替え、1割は袋の中に残しておく。袋の口は結べるように紐が付いているのでそれをベルトに結びつける。
普段の支払いでは袋の中身で事足りるだろう。あまり大金を見られるのはよくない。
「持ち歩くのは不安ですね……」
約90万ドエルが入った貨幣入れを手に持って独り言を言う。するとロロが反応をしてきた。
「わすが持ち運びましょうか。リュックの奥なら取られる心配も少ないですよ!もし貨幣入れからお金を出すことがあっても、リュックの中でやれば見られにくいと思います!」
「それは助かります。お願いしてもよろしいですか」
「はいな!」
リュックの中に貨幣入れを入れてもらう。その後魔力練り治療に戻った。
日が暮れ、夕食を取ろうということになった。
今日の宿泊コースに夕食はついていない。
街に繰り出して、特製ソースで味付けされた焼きミズマキハゼを買った。ラヤで買ったパンを割り、そこに挟んで食べる。美味しかった。
帰ってきて寝る準備をする。火傷を見ると、まだ跡はしばらく残りそうだが左腕以外はほぼ治っていた。
「おやすみなさ〜い」
「おやすみなさい」
眠るときの挨拶をし、ベッドに横になった。




