第13話
前を歩くコモリエが話しかけてきた。
「おふたりはとても腕のいいパーティですね」
「いえ、わたしたちは……」
そんなわたしの言葉を遮る声が横から飛んでくる。
「そうでしょう!わすもそう思います」
驚いて隣を見ると、ロロがピースして笑っていた。思わず笑い返す。
パーティ。ロロと組めたらとても頼もしいだろう。この街までだけでなく、一緒に行動できないか後で頼んでみよう。
「そんなおふたりだから勧めるのですが、変異種ハンターを目指してみては?」
「変異種ハンター……」
「はい。変異種は元の種と違った動きや生態をすることも多いので、強さと臨機応変差ともに並外れたものが必要です。そしてここからが夢のある話でして……」
コモリエは振り返って立ち止まる。
「暴角の轟炎竜『エシ・ルアーハ』、斬涙の慘滝鮫『アハザリ・カリーシ』、衒黒の陰翳霊『ライラ・アラフェル』……これらの代表的な伝説の生き物たちは変異種だったとも言われています」
異世界のわたしはあまり教養がない。それでも聞いたことのある名前だった。たしか、なにか有名な神話に出てくる。
「あの、神話の……」
「へええ!そうなんですか!?」
「あくまで説ではありますが。神話のような存在に触れることのできる可能性があるのが、変異種ハンターというわけです」
たしかに夢のある話だ。
「そして、変異種の研究が進めば人はさらなる進化をすることができるとも思うのです。それがいい方向への進化になるかは使い方次第ですが……」
コモリエは研究者としての葛藤を見せている。
「本当に、そうですね……でもわたしは、人の精神も進化することを信じますよ」
わたし自身、自分含めて人間の美しい心とかにはあまり触れてこなかった人間ではある。
しかし現代のわたしは義務教育やインターネットで昔の厳しい世界を少し知った。技術や物質的な余裕は人の精神を豊かにしてくれるとわかった。だから……
「便利なものの研究は、倫理や道徳を……物事の悪用やそれによる悲劇を恐れる心。それを忘れない人ならして良いと思います」
「ほう……」
コモリエはあごに手を当てる。
「倫理や道徳。まだこの世界にはあまり浸透していないように思えます。しかしなるほど、このコモリエは肝に銘じておきますぞ」
「ええ、そうするのがいいかと」
「もし変異種ハンターになったときにはぜひご贔屓に、ほほほ」
コモリエが再び歩き出す。わたしたちはそれに続いた。
受付に着くとコモリエと受付の女性が話しだす。
「やあソレイユ、交渉は成立だ。アギノフさんとロロさんに50万ドエルを」
受付の女性の名前はソレイユというらしい。椅子に座ってしばらく待っていると、先ほどと同じように呼ばれる。
「お待たせいたしました。こちらが変異種銀魔猪、複腕オーク、カモフラージュゴブリンの報酬、合計50万2500ドエルでございます。」
ソレイユはお盆に10万ドエル金貨5枚、1000ドエル銀貨2枚、100ドエル銅貨5枚を出してみせる。
「ありがとうございます」
「ありがとうございま〜す!」
今度はしっかり前に立って話し、ロロに爪先立ちをさせないで済んだと思った。しかし彼女は普通に爪先立ちをしてソレイユの顔を見ようとしていた。
つくづく人に接することがとても丁寧な少女である。見習いたい。




