第12話
「暇ですね〜」
「そうですね……なんだかどんな結果が帰ってくるのか気になって、落ち着きません」
「きっといい結果がでますよお!」
「ふふ、そう願ってます」
他愛のない会話をする。友人の少ない、人間との意思疎通があまり楽しめない気質のわたしであったが、今は会話を楽しんでいる。
なぜロロが行商人の里で優秀だったのかがわかる。
「今日はこの街の宿屋に泊まりです〜、いいとこでありますように」
「この街で泊まったことはあるのですか?」
「いや、初めてで〜す。前は通っただけでしたあ」
「わたしはきたこともありませんでした」
周りを見てみると、この建物は外部の人間が入れるところは木製でできている。そしてあまり綺麗とは言えない。小規模な研究機関だ。
10分ほど待ったとき、名前が呼ばれる。
「ロロ様!アギノフ様!結果が出ました!」
女性は少し興奮している声色だった。急いで受付へと向かう。
「は〜〜〜い!ロロです!」
「お待たせいたしました。今回特殊な事例ということでわたくしでは説明がしきれません。所長室のほうでの説明をします。着いてきてください」
興奮気味の女性の言葉に相槌を打ち、言われるがまま着いていく。
何がなんだかわからない。なにか問題がおきたわけではないといいが……不安になってしまった。
「こちらです」
明らかに地位が高いであろう人の部屋の扉が目の前にある。さらに緊張をしてしまう。
女性が扉を叩いて返事を待つ。すぐにどうぞという返ってきた。
「失礼いたします。お二人とも中へ」
促されて中に入る。
「失礼しま〜す……」
「失礼します」
「あとは所長が対応したいます。それでは失礼いたします。」
扉の閉じる音がして、女性の歩く音が扉の向こうで遠ざかっていく。
所長室の中には、白衣を着た背の高い、歳を取った男性がいた。彼はわたしたちをみると微笑んで言った。
「わしは、大陸西部魔物研究会ラヤ支部のコモリエ所長、といいます。はじめまして」
「ロロです、はじめまして」
「アギノフです、はじめまして」
「ほほほ、そんなにも緊張しないでもらいたい。今回わしはあなた方にとても感謝している。さあさ、座ってお話しをば」
コモリエ所長とテーブルを挟んで、ロロといっしょにソファーに座る。
「それでは今回あなた方が持ってきた魔物について話します。あれは、変異種です。」
「「変異種」」
同時に返事をしてしまう。
「ほほ、変異種とは何らかの理由で魔力を多く取り込み、強力になった魔物のことです。ありあまる力から凶暴になるものも多い」
「そんなにも危険な魔物だったんですね〜」
ロロが隣で身震いする。
「はい、よく仕留めたと思いますよ」
コモリエは姿勢を正し、真剣な顔になる。
「変異種はレアものです。さらにあれはもともと銀魔猪という数が少ない魔物。ぜひとも研究がしたい。つきましては」
彼は大きく息を吸う。
「50万ドエルで、お譲りしていただきたい」
受付の女性と同じように所長も興奮を抑えきれない様子だ。
ドエルという単位だが、これはお金の単位で1ドエル=1円で考えていい。つまり、50万円!普通のゴブリンは1匹で100ドエル。つまりゴブリン5000匹分の値段。
「わあ〜……行商人やってきてこんなの初めて関わりました……変異種」
「わたしも初めてです」
コモリエはそれには答えず、黙って返事を待っている。
「あ、すみません。わたしはそれでいいです。」
隣を見て意見を促す。ロロはうなずいてコモリエに答える。
「わすはアギノフさんに合わせますよ」
「おお!それでは交渉成立ですな!」
コモリエはわたしに右手を出して握手を求める。握り返した。ロロとも握手をしていた。
「受付まで行って伝えにいきましょう。待合室で椅子に座っていていただけますかな」
3人全員で所長室から出て受付に向かう。




