五つ目の友情
これは、僕が出会った不思議なお姉さんのお話
〈登場人物紹介〉
○天野 友陽
小学四年生の少年
後悔ちゃんが見える
○後悔ちゃん
友陽が出会った幽霊のお姉さん
青春をしているやつが好き
〈前回のあらすじ〉
後悔ちゃんが幽霊になった理由が分かった!
「自殺だよ。」
後悔ちゃんのその一言で周囲の空気がぐっと重くなる。先ほどまで聞こえていた風のざわめきや木の葉が擦れる音すらも聞こえなくなる。
「あっえっと。」思いがけない返答に言葉を詰まらせる。まだ10年しか生きていない僕にその単語は重すぎる。初めての経験になんと返すべきだろうかと悩んでいると、「返す言葉に困ってるじゃん!だから人の死因なんて軽い気持ちで聞くべきじゃないんだぞ!」と頭上から明るい声が降ってきた。顔をあげると彼女がにこにこと笑っていた。その笑顔は年下をからかっているようにも自分を嘲笑っているようにも見えた。
「自ら死を選ぶってことは、相当辛いことがあったってこと?」遠くを眺めて黙ってしまった彼女にそう問いかける。「あっ、えっ?」いきなり質問されたことに驚いたのか、間抜けな声を出してこちらを見る彼女。
「話聞くくらいならできるよ。」と彼女を見上げると、「面白い話じゃないよ。」と口ごもる。「面白いから聞いてるわけじゃないよ。」と言うと、彼女は僕の方を見て目を潤ませた。しかし、すぐに朗らかな表情に戻って「幽霊に干渉するの、あんまりおすすめしないよ。」と独り言のように呟いた。
「どうして?」僕がそう聞き返すと数回瞬きをして大きく息を吐いてから口を開いた。
「もし、わたしがキミに取り憑いて悪さをするような、悪い霊だったらどうするの?心を許すと簡単に取り憑かれちゃうよ?」そう話す彼女に「後悔ちゃんは悪い霊じゃないでしょ?それに、仮に後悔ちゃんが人に取り憑いたとして、悪いことをするような雰囲気には見えないけどな。」と返すと、彼女はそっかとだけ呟いた。
「ところで少年、時間大丈夫?空、真っ暗だけど。」彼女からの問いかけに空を見上げれば、空の赤さは消えていつの間にか月が出ていた。「ヤバい!」カバンの中からスマホを取り出して時間を確認すると、19時を過ぎていた。お父さんから何件か連絡も来ていて慌てて立ち上がる。「ごめん!帰るね!」そう言って彼女の方を振り向くとこくりとうなずかれる。早足で公園から出て帰ろうとすると、背後から「少年!」と呼び止められた。
「明日も会いに来てくれるか?」出入口の車止めに体重をあずけながら、そう聞いてくる彼女。「うん!また明日ね!」と元気よく返すと喜びを顔全体で表してから「またね~。」と言って手をゆるゆると振りながら公園の中に消えていった。
〈次回予告〉
出会って二日目!後悔ちゃんのこともっと知りたい!