一つ目の友情
これは、僕が出会った不思議なお姉さんのお話
空が赤く染まる時間、友だちの家で遊んだ帰り道、公園の横を通り過ぎようとしたら僕の目に留まるものがあった。
暮色に包まれた公園でブランコが1つ揺れていた。人気のない公園に響くブランコの音。遠目からでははっきり見えないが、漕いでいるのはおそらく女性だろう。
理由を問われたら答えられない。気づいたら僕の足は彼女の方へ向かっていた。ブランコに近づいていくほど、彼女の見た目が鮮明になっていく。
髪は黒で襟足が長い。顔は決して美人ではないがブスすぎるわけでもない。ギリギリ付き合えるかなレベル。フレームが丸いメガネをかけていて目が大きく見える。唇や頬は柔らかそうであどけなさが残っている。黒い長袖のTシャツを着ており、明朝体の白で『青春後悔』いう字がプリントされている。顔立ちや胸のサイズなどから高校生くらいだろう。そう思いながら目線を下に移す。黒のショートパンツが見えて”黒に黒かよ”と洋服の組み合わせに心の中でツッコミを入れた。ショートパンツということはJKの生足が見れるということかと期待を胸に更に目線を下に移す。すると、ブランコの後ろの植木が見えた。は?足首は?
足首はなく、その下に黒の運動シューズが見える。他は見えるのに足首だけが見えない。正確には後ろの植木が見えている。透けてるってこと?
そんな疑問を浮かべながら彼女を凝視していると、突然彼女が僕の方を見た。
彼女のつぶらな瞳と目が合う。しばらくお互いに見つめあっていたが、先に沈黙を破ったのは彼女だった。
「少年、わたしが見えるの?」彼女の唇が震えてゆっくりと音を発する。声は高いがはきはきとしていて、周囲が静かなこともあり僕の耳にはっきりと聴こえた。彼女の問いにうなずくと、目を輝かせた彼女がブランコから降りた。持ち手のチェーンが僅かに音を立てる。
「時間ある?そこでちょっと話そうよ。」こちら側に歩きながら入り口付近のベンチを指差す彼女。まだお父さんが帰ってくるには早いし大丈夫だろうと彼女に続いてベンチに腰かけた。