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私の中のヒーロー  作者: マフィン
ノースフェイスとぬいぐるみ
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登校初日と新学期

朝ごはんは、納豆だった。そもそも納豆以外を、食べれる気がしなかった。この気分の悪さは単なる寝不足なのか、新しい学校に行くのが億劫なのか、それとも、昨日見たよく分からない幻が原因なのか分からなかった。ただとにかく、納豆に刻みネギを大量に入れて食べることしか今は出来ない。

そもそも学校も最初から嫌いだったわけではない。小学生、中学生の時は、体育祭や文化祭などの行事は、むしろ積極的にというか、最前線を突っ走るタイプだった。ところが、高校生になってからは、その姿勢が仇となり、気づけば孤立していた。だが友花莉は、それが悪いことばかりではないと思っていた。なぜなら、孤立するようになった友花莉は、その時くらいから、絵を描くことに出会い、彼女の才能に気づいていたその時の担任が、友花莉の絵を自分の知り合いの編集会社の人間に見せたのが、友花莉が自分の才能に気づくきっかけになった。だが皮肉にも、そのおかげで学校に行く意味を見出せなくなってしまった友花莉は、不登校になり家で絵を描くことに熱中するようになった。友花莉は知らないことだが、それが理由で編集社は友花莉を起用する条件に、学校を卒業することを条件に入れたようであった。そのせいで、友花莉はこんなに苦しんでいるとは、当時の担任は思いもよらないだろう。

そうこうしているうちに、登校の時間になった。

 「いってきます。」新しい学校はセーラー服だった。友花莉にとってはマイナス要素がさらに増えた。

 「送っていくわ。」

 「ううん、大丈夫。どうせすぐ帰ってくるし。」

 「そう?じゃあ気をつけるんだよ。」そこから母親からのやってはいけないこと十ヶ条が始まり、友花莉はそれをしっかり聞いてから、家を出た。高校までは自転車で二十分。そこはプラス部分だった。そこだけというべきか。友花莉は、自転車を漕ぎながら、漫画のことを考えていた。そうでないと胃が悲鳴をあげて、しばらくトイレから出られなくなってしまう。新学期早々遅刻なんてしたら、ただでさえ転校生ってだけで注目が集まってしまうというのに、さらに目立ってしまう。だがその時間のおかげで、主人公の名前が決まった。

 「ノースフェイスのでっかいカバンを背負ってるから、ノースフェイスちゃんにしよう。」友花莉は、この通学時間も悪くないと思い始めてきた。そして二十分の有意義な通学時間を終えると、学校の正門が見えてきた。そこには自分と同じセーラー服を来た女子と、学ラン服を来た男子が群がっていた。恐らくクラス発表が行われており、その結果に一喜一憂しているようだった。友花莉はそれを知ったとて何も変わらない。とりあえず職員室に行ってから聞けばいいと思い、そのまま素通りして、いつも通りを装って生徒に溶け込んだ。正門を通過したところで、すぐさま障害が降りかかってきた。なんと自転車置き場が、クラスごとに分かれていたのであった。

 「うわっ。朝から気分悪。」友花莉は他の人に聞こえないように呟くと、その辺に放置したい気持ちを抑えながら、人混みに入っていった。全部で八クラス。どこを探しても自分の名前がなかった。これも転入生の宿命なのか。そう思いながら、先ほどから見当たらない、教師という立場の大人を探した。だが、すぐに見つからなかったのは、探そうとしていなかっただけだということがすぐに分かった。友花莉は今どき、どこに行っても使っていなさそうな竹箒を持った、元気に生徒に挨拶され華麗に無視されている全身ジャージの、いつか缶蹴りを強要してきそうな若い女の先生に近づいた。

 「おはよう。」元気な笑顔が眩し過ぎて、友花莉は愛想笑いと会釈で返した。

 「あの、転校してきたんですけど、私の名前がなくて・・・。」

 「あー、三組だよ。」まさか、この先生から有益な情報が得られるとは思っても見なかった。

 「ありがとうございます。」

 「ちなみに私が担任の大久保です。よろしくお願いします。」意外な場所で、担任とご対面してしまった。

 「あ、廣坂友花莉です。よろしくお願いします。」

 「じゃあ、チャリ停めてきて。早く登校してくれたから、朝のホームルームまでの三十分で学校の説明をします。」

 「わかりました。」友花莉は、言われるがままに、三組の自転車置き場に自転車を停めた。もちろん周りからこいつ誰?というような視線をしっかり受け取って、担任の大久保のもとへ戻った。

 「どうだ?クラスメイトとは挨拶したか?いい奴らばっかりだから、すぐに仲良くできるはずだぞ。」友花莉は全く信じなかった。

 「よし、じゃあまずは体育館から。」友花莉の想像通り最初は、卒業式からそのまま入学式へと移行できるように、紅白の幕で覆われた体育館に案内された。そこから基本的には体育系の場所から案内されたところを見ると、担当科目が体育であることは、服装からも安易に想像がついた。

 「ここで同じ三組の山田が転んで歯がかけたから走らないように。」そこは校庭から教室へ続く廊下みたいなところで、その転んだところの近くの扉は、ガムテープで補強されていた。そんな感じで担任の大久保は、ちょくちょくクラスメイトの名前を出しては、特徴だったり事件を話してきかしてくれた。だが、残念ながら友花莉は、全くその情報を耳に入れてはいなかった。そのかわり友花莉は、人気が無さそうな場所を探して休み時間の居場所を探していた。

 「そういえば、廣坂は部活何やってるんだ?」呼ばれ慣れない苗字で、少し間を空けてしまった。

 「あ、いや別に部活は・・・。」

 「そうなんだぁ。てっきりテニスかバドかと思ったけどなぁ。」確かにやってはいたから間違ってはいなかった。適当な感じだけど、クラスメイトの話などを考えると、かなり生徒を見てくれる良い先生だなぁと友花莉は新しい担任に対して好印象を抱いていた。

 「あっ、でもうちのクラスは全員部活入ってもらうから今のうちに考えておいてね。」友花莉は一気に担任の大久保が嫌いになった。


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