聖女様?
「聖女様の召喚が成功したぞ!!!」
はっと目を覚ますと、知らない場所にいた。目の前に大きなステンドグラス、見たことが無いような太くて大きな柱が均等に並んでいる。兵士のようないでたちの人たちが数人、立派な服を着た王様らしき男性を囲み、緊張した様子でこちらを見ている。なんだろうここは。ドラマの撮影?
兵士の一人がこちらに近寄ってきた。その長い髪の兵士はほかの兵士より上等な装備をしている気がする。「聖女様。」そう言って彼は跪く。聖女様!?いや、でも、なんだか私に体が向いていないような。
「なんと美しい……」
私は平均的な日本人顔のごくごく普通の会社員だ。特別美しいなんてことはない。ふと長髪の兵士の顔を見るとやはりこちらを見ていない。
……あれ?どこに向かって話しかけているの?
そう思い横を見ると、黒猫を膝に乗せた、透き通った銀髪の美少女がそこにいた。肌は白く、やわらかそうなほっぺたはふわふわで、つきたてのおもちの様だ。10歳くらいだろうか。華奢な肩も、掴んだら折れそうな手足も、なんとも庇護欲を誘う。顎のところで切りそろえられた髪もとても似合っている。こんなにかわいらしい子役いたかな、と記憶を探る。
「さあ、聖女様。こちらへ……」そういうと、長髪の兵士は近くにいた兵士に指示を出し、銀髪の少女をどこかへ連れて行く。
「では、以上で召喚の儀を終了する。各自持ち場に戻るように。」
その言葉をきっかけに、兵士たちはそれぞれの持ち場に帰っていく。するすると部屋から出ていく兵士たち。私のことはまるで見えていないかのように振舞っている。
「……この女はどうされますか。」
「ふん、こんなもの城下のどこぞに捨てておけ。」
「では、その通りに……」
残った兵士が一斉に私に向かってくる。なんだか嫌な感じがするぞ。
私に向かってきているのではないことを願い、周りに誰かいないか確認する。今度は間違いなく私に向かって歩いてきている。……そうだよね、私以外居ないよね。
何が何だか分からないまま、力の強い兵士たちに抵抗することもできず、されるがままどこかへ連れていかれた。