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籠の中の鳥

  ここでの生活は何不自由なく、わたしがほしいと思うものは何でも用意された。


 華美でないが上質な家具に囲まれた、日当たりもいい、快適に過ごせる部屋。

 可愛らしくて高そうな布で作られた、誰かのお下がりでなく、わたしだけの為に買われた色々な色の衣服達。

 退屈な時間などできなそうなぐらいたくさんある、娯楽的なものから専門書までが集められた本。

 自分で用意しなくても、朝昼晩と出てくる悪くなさそうな食事。

 掃除も洗濯も自分でやらなくても、使用人がやってくれている。


 それら全ては、以前のわたしにとっては喉から手が出る程欲しているものな筈だった。


 昔のわたしは公爵令嬢だったが、妾の娘で、誰からも気にかけられず、身分相応な暮らしなど送れていなかったから。

 食事なども自分で必死に調達しなくてはいけなかったり、身の回りの事をやってくれる人が側にいない事も多かった。

 それに本なんて贅沢なもの、いくら読みたいと思っても全く読める機会などなかったし。

 おまけに服に至っては、姉にお下がりとして譲られた赤い服以外着る事を許されていなかった。そのせいで変なあだ名をつけられるまでに至ったのだから、いっそ笑えてきてしまう。


 だから、今の生活は本当に恵まれているのだろう、ある一点を除いては。

 その「ある一点」のせいで、わたしにとってこの生活はただの地獄となっていた。


 わたしは窓ガラスをそっと押す。


「……開かないわね」


 それは当然な事なのに、わたしは気落ちしてしまう。

 窓ガラスだけではない。部屋の扉も開けられないし、開ける事は許されていない。つまり、わたしはこの部屋から出る事は出来ないのだ。


 ーーそう、わたしはこの部屋に監禁されていた。


  わたしにはここへ来てから、何もかもが与えられていたが、自由のみは与えられていなかった。

 そしてわたしは人に監禁されているなんて状況下で、悪くないであろう食事も、面白そうな本も、楽しめるような図太い人間ではなかった。


 何もかもが揃っていたって、そんなの全部全部、今の私にとっては色褪せてみえたのだ。


 それにわたしには叶えたい望みがあったのに、わたしを監禁しやがったあいつに粉々に打ち砕かれた。

 ……その望みだけを心の支えにして、日々生きてきていたのに。 これからどうしたらいいのか、わたしには全く分からなかった。


 わたしはあいつに昨晩も抱かれ潰されたせいで、痛めた腰を引きずりながらベッドへと倒れ込む。

 ……あぁ、ここでの生活で嫌な事って、監禁されている事以外にも、あいつに毎日抱かれてるって事があったわね。


  望まぬ夜伽などただの暴力でしかないと、わたしはあいつに教えられた。


「はぁ……」


  わたしは苦々しい気持ちでここへ来てから何回したかわからないため息を、再びついた。


「どうしてこうなっちゃったの?」


 わたしはそう言いつつも、諸悪の根源が何かは分かっていた。



 ……全ての始まりは、あのアーサー王子から下された、わたしとアーサー王子の婚約を破棄するという宣言からだった。

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