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ダンジョン付近に鎮座していたのは、今まで見たことないほど巨大な魔物だった。見てくれは巨大な綺麗な岩が移動してるだけだが、魔素を含んでいるため魔物であることが分かる。移動速度は今まで出会った魔物の中で一番遅いものの、試しに放った俺の火魔法が一切効いてない。
王国騎士団から奪った望遠鏡でその様子を確認する。観察してみるとカメがそのまま巨大化したような見てくれをしている。
試しに放った矢が一切効果を示しておらず、鉄に当たったかような高い音を出しながら地面に落ちる。あの綺麗な石の甲羅を傷つけることが出来ないのはわかる。だが、カメ本体の表皮すら貫通することを許されない。
今度は何か魔法を展開しているか確認するため、魔素を使用して索敵する。あのカメ型魔物は今までで一番の防御特化の身体強化魔法を使用していることが分かった。
「これは中々しぶといぞー。どうやて倒そうかな?」
俺がどうやってカメ型魔物を攻略しよと考えていると、息を切らしながら俺に挨拶をしてくる正宗がいた。
「殿‼遅れて申し訳ありません。正宗、ビック参上しました」
俺の代わりに正宗の周りにいる精鋭ゴブリンが、正宗とビックにカメ型の魔物の情報と状況を説明をする。
先程まで青空教室で手を挙げていた青年とは異なる真剣な眼差しで話を聞いている。話を聞き終わった正宗は身体強化を使用しカメ型魔物を睨み付ける。
それに気が付いたカメ型魔物が動き出す。唾液なのか、溶解液なのかよくわからない液性のもの仮防衛拠点目掛け飛ばす。
俺は避けるが、直前まで気付いていなったゴブリンが一部、液性のものを浴びてしまう。
前線にいるもの、皆でそのゴブリンの様子を見ていると少しずつではあるが皮膚が溶け出し始めていた。
敵の近距離戦闘はいまだ不明だが、遠距離攻撃はそこまで大した脅威ではないと判断する。各自水を持たせていれば遠距離攻撃を浴びた際にも対応は可能だろう。
「これからカメ型魔物に接近を試みたの後、近接攻撃を行う!」
宣言した後、俺はビックに後方支援を頼み正宗たち精鋭ゴブリンを前衛として連れていくことにした。セバスチャンには他の有事に対処してもらうため、仮防衛拠点に待機させている。
仮防衛拠点の門を開き、広い空間に出る。そこには液性攻撃を防ぐための障害物は何一つおいておらず、相手の攻撃を回避しながら接近しなければいけない。
俺たち前衛部隊がカメ型魔物の溶解液攻撃を避けながら近づいてゆく。途中、王国騎士団の甲冑を着たゴブリンが溶解液を浴びたが、鎧は少し錆ができるばかり。こすれば落ちるだろう。
このまま甲冑を着用したゴブリンを先頭に少しずるではあるが着実にカメ型魔物に近づいていく。
「よし、近づけた!このまま近距離攻撃を行う!」
先ほど遠距離では効果がなかった火魔法を試しに使用するが、そこには傷一つない煙が上がる前と同じ様子の魔物が立っていた。俺自慢の魔法が聞かないとなるとどうすればいいか分からない。
剣で切りつけようにも、剣の方が先に折れてしまうだろう。完全な行き詰まりを感じている。このまま、仮防衛拠点に接近を許した場合、あの質量で基地は完全に破壊されてしまうだろう。
「どうすっかなぁ、これ。どうやって傷つければいいのか分からん」
傷をつけなくてもいいがこのまま追い返すことは可能だろうか。後ろから正宗の声が聞こえる。
「拙者に妙案がございまする」
「ほぅ。あのデカ物を倒す方法があんの?」
「はい、ありまする。殿の身体強化を拙者に使用し、拙者が切る。それだけでござる」
正宗は斬ることに対しては絶対的な自信があるのか迷いなく答えるが、そんなに簡単に斬れることなどできない。確かに俺の身体強化と、正宗の斬撃。
考えもしなかったこの2つが組み合わされば、意外と強いかもしれないが先に刀が折れてしまう可能性だってある。だが、このまま何もしないよりはやてみよう。試しにやってみる価値はある。
「分かった」
俺は返事を返すが正宗が刀で切れるまでの場所まで接近しなければいけない。俺は正宗にも身体強化をかけあの巨大なカメに向かって走り出す。
俺が身体強化をかけたのを確認すると、正宗は刀を抜き腕を上げる。正宗は正眼の構えのまま飛んでくる液性の攻撃を避けながらカメ型魔物の正面に踊り出る。危機を察したカメ型魔物が甲羅から首を出し、目にも見えない速さで首を伸ばし、正宗を喰らおうとしてくる。
その攻撃を正宗は半身になることで回避、そのまま首筋向かって刀を振り下ろす。カメの首に刀が入っていく。カメの首が地面に落ちる。正宗は雄たけびを上げた。
寝ます