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王国との騎士団の戦闘に勝利した俺たちはあの後宴を行い死者への弔いを行った。牛の乳を飲みながら俺は話を聞いてほしそうな顔ですり寄ってくる正宗の話を聞いた。
「拙者は余りにも無力でござる。同法が切りつけられる中、それに手を伸ばす力がないでござる。拙者がもっと強ければあの者たちは死なずに済んだかもしれないと考えると心が痛むのです。拙者がもっと強ければ...」
「まあ確かにそうかもな。俺だってもう少し強ければー、あの時努力していればーって考えるときなんて多々あるもん」
「そうなんでござるか?」
「一人で生きてくなんて中々強くないとできないぞ、俺は圧倒的強者ではないからな。弱者は必ず他者と手を取り合って生きていかねばいけないし、それが強さになるんだ」
それから俺と正宗は宴が終わるまで牛の乳を飲みながら話をした。
○○○
翌日、今日はどの防衛地点を強化するべきか考えていると。正宗とセバスチャンがやってきた。
「殿、某に稽古をつけて頂きたいでござる」
「ご主人様、私も自分の無力感を痛感しております。どうか訓練をつけさせてもらえないでしょうか?」
俺はしばらく悩んだふりをし、了承の旨を伝え今日は3人で稽古を行うことにした。
以前、この2人に体術を教えており先日の騎士団戦でもその効力を発揮していた。接近戦は対処可能になった。
なら次は何を学ぶか。それは魔法である。俺が魔法戦でいつも使用しているあの身体強化魔法のことだ。
「まず、2人は魔素がどのようにして体を動いているか理解してもらわないとな。これを怠ると魔素が暴走して体が裂け、その裂け目から魔素が放出されてるからな。気をつけろよ。」
「「了解」」
俺は二人の手を取り、魔素を2人の波長に合わせ、感じやすいように展開していく。セバスチャンの方は筋がよく、すでに少しずつではあるが魔素をうまく展開しているようだ。
逆に正宗はあまり得意では無いらしくコツを取得するまでかなりの時間を費やした。
「じゃあ次は身体強化魔法だな。これはさっき感じた魔素を全身に均等に展開することで全身を強化するというものだ。逆に魔素を集中させる部位によっては、脚力が異様に強化されたり、腕力が異様鬼強化されたりもする」
俺が説明を終わらせると、早速訓練を始める2人。その間に俺は近くにあるゴブリンの生活拠点に行った。
村中で何か欲しいものはないかと尋ねるが別に何もないと答えられてしまった。これはこれでいいのか?何か魔素吸収率を増加させる案などないかと考えていると、向こうで魔法が展開されているのに気が付く。
急いで2人が訓練している場所に戻ると、セバスチャンはすでに身体強化を展開しており、身体強化魔法の維持に集中していた。
逆に正宗の方はいまだ身体強化魔法の展開に集中しており、一定の部分しか展開できていない様子だった。
「殿~、いくらやっても無理でござる」
「うーん、じゃあ魔素を血管だと考えて、それを全身に展開するイメージでやってみよう」
「血管ってなんでござるか?」
「あ~、何でもない。じゃあ、血でイメージしてみよう」
よくわからないような顔をしながら訓練を再開する正宗。するとイメージがよかったのかすぐに全身に展開することが出来た。そして、展開継続ができている様子。
セバスチャンは継続が難しくて、正宗は展開が難しいのかな?
なら2人にあった特訓の方法を考えなくちゃね。
そう言って各々にあった訓練を課していく。