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ある日、俺は殺し屋になった。  作者: タスク
第二章
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四十一話

 俺の少ない所持金(一ノ瀬の財布から抜いた)で、全世界で有名なハンバーガーチェーン店のハンバーガー。それらを包むカラフルな包み紙の山が出来上がる。


 俺は一つも食べていないが、目の前の眼鏡を掛けた男子生徒──掵生(はばき) レイは、狼のように鋭い歯で、バンズとひき肉を噛み、口の周りをトマトソースで汚す姿に、出会った時の凶暴な獣の影を見た気がする。


「ニク! ニク! うまい!」


 まるで子供か何かのような、キラキラとした目を俺に向けてくる。


 餌付けが功を奏したのか、掵生はハンバーガーを満足そうに食べると、今度は俺の前でうとうとし始めた。


「おいこら、寝るな。俺とお前は敵だろ」


「!! テキ! ニク!」


 キョロキョロ周りを見ているが、敵は目の前だとツッコミを入れる気にもならない。掵生レイの年齢は、俺と同世代の14から15くらいのはずだが、何故こいつはこんなにも幼いんだ。


「お前、普通に話せないのか?」


 俺の言葉にキョトンとする。


「ハバキ……レイ……」


 今度は確認するように、自分の名前を呟く。


 出会い頭の光景を思い出す。掵生(こいつ)は今でこそ、田井中の姿を借りてるが、出会った時はまるで合成獣(キメラ)のように、肢体を別の動物へ変化させていた。


 カンガルーの足、ゴリラの手、コンドルの胸、そして人間の頭。


 合理的に考えて、組み合わされたものだと考えていたが、能力名の『獣化』から考えても、単純に獣の姿へ変えた方が扱いやすいように感じる。


 カンガルーなら、身体全体をカンガルーへ、ゴリラならゴリラへ素早く変化した方が、敵を翻弄できるだろう。


 そうしない理由、デメリットがあるのだろう。考えるに、掵生の『獣化』は、脳まで獣並みになってしまうのではないだろうか。


 目の前の掵生が犬のように、ピスピス鼻を鳴らしなから、口元のトマトソースを長い舌で舐め取っている所を見る。


「お前、元の姿に戻れるのか?」


 俺の言葉は分かるらしく、大袈裟に首を横へ振る。


 そういえば、久世に見せてもらった資料の中に、詳細は不明だが『無効化』の能力者によって、元の姿に戻れたと書いてあったな。


 脳みそまで獣なら、人間の姿には戻れないのか。


「チカラ……使ったら……皆食べちゃった……もうなりたくない……」


 悲しい目で自分の拳を握る掵生の姿に、資料の来歴を思い出す。たしか掵生(こいつ)は友達や家族、村の全員を食い殺したんだったか。


 初めて手にした異能の使い方を、俺は相場によって脳みそへ叩き込まれた。その使い方やメリット、デメリットを理解できるが、目の前のこいつのように、突然能力に目覚めれば、暴走し取り返しのつかない結果を生むらしい。


***


 血だらけで全身痛む身体に、アスファルトで顔半分を擦ったせいで、熱さを帯びる頬を触っていると、ふと店の外に二人組の警官が俺たちを睨んでいた。


 ほどなくして店内に入ってきた二人組の警官が、俺たちの前で仁王立ちする。


「キミたち、学生だよね? それにキミの傷、もしかしてケンカか? 両親に連絡つくかね?」


 厳かな声で俺の顔を指差す。


 顔の擦り傷どころか、こっちは掵生に殴られて骨の一本や二本折れてるかもしれないんだぞ。なんて思いながら、俺は警官二人を見ると、警官が睨んできた。


「ッ! なんだその目つきは! 我々は心配しているんだぞ!」


 俺は目を合わせただけで怒られてしまった。


「それにその格好、コスプレだとしても銃刀法違反になる可能性があるんだぞ!」


 俺の胸と腰に差された二挺拳銃と二振りの刀を指差す。あまりにも堂々と持っていたので、模造品と思ってくれたらしい、今度から気を付けよう。


「あー、両親は死んだ。俺とこいつは……まぁ友達みたいなもんだ」


「トモダチ! トモダチ!」


 テキトーにあしらっても食い下がられそうだったので、真実を伝えると、警官は額に青筋立て、胸ぐらを捕まれた。


「大人をからかうな! こっちは店から通報を受けているんだ」


 咄嗟に両脇のホルスターへ手を伸ばしそうになるが、ふと一ノ瀬の言葉が思い出される。


 たしか依頼で殺す人間くらいは、警察によるお目こぼしもあるそうだが、こんな衆目で人を殺せば問答無用で犯罪者だ。


 だがどのみち身柄を拘束され、銃や刀を調べられれば本物であることがバレる。どう切り抜けたものかと考えていると、ふと掵生が人差し指を警官へ向けていた。


「ん? なんだ?」


 その指が警官の頬へ、ピタッとついた瞬間、バチン! と強烈な閃光と共に紫電が走った。


「トモダチ! トモダチ!」


 掵生がニコニコと笑っていると、警官はそのまま床へ倒れ、もう一人が拳銃を向けようとした瞬間、再びバチンと閃光が瞬く。


 掵生の指が黒く変色し、ヌラヌラとした表面に電気が走っている。まるでデンキウナギのような指によって、失神した警官二人を尻目に、俺は慌てて掵生の襟を掴んで走り出した。


「お前何してんだ! 殺してないだろうな!」


「イキテル……」


 全身の痛みを忘れ、冷や汗をかきながら掵生を連れて夜の街へ逃げ出した。

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