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ある日、俺は殺し屋になった。  作者: タスク
第二章
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三十九話

 目標(ターゲット)が決まった。


 第十二番分隊の面々──と言っても、俺には久世以外の知り合いは居ないが──元PMCの外人と、副隊長のガキが俺を睨む。


 組織(・・)にとって、俺は裏切りを繰り返した大罪人だ。良い顔をされると期待するだけ無駄。


 俺はワイシャツの上に、防弾繊維で出来た漆黒のロングコートを羽織る。これはNo.=zの連中が意思統一のために、似通った黒い衣裳を着てる物と同じ素材だ。


 『No.=2』赤井 龍一は俺と同じ黒いロングコート。


 『No.=6』アルヴァスは黒い唐装。


 『No.=7』セレナは黒い魔法使いのようなローブ。


 腰にはカルロスから貰った、二振りの直刀をがっちり固定し、マガジンを尻に四本の予備マガジンを差す。


 両脇には龍一から貰ったシルバーステンの『ベレッタM92FS』とブラッククロムの『M9』を下げる。


 完全武装で現れた俺に、目つきの悪い副隊長が吠える。


「雪姉のこと、根に持ってるからな! あれから氷華姉がどれだけ心配してるのか分かってんのか!?」


「そもそもお前は誰だ……」


 ガーンという擬音が聞こえてきそうなほど、ショックを受けている。


「お、俺だよ俺! 孤児院で雪姉の弟分だった本郷(ほんごう) (たける)だ!」


 本郷…………俺と同じ名字。


 いや正確には、俺に名字など無い。あるのは日向 京一を元にした素体番号だけだ。


一ノ瀬(あいつ)がベラベラと自分の事話すかよ……」


 そうだ。俺はあいつを知らない。本名やその正確な生い立ち。


 話してくれた事はあったが、あれが真実と考えるには証拠がない。


「ヘヘッそうだよな!」


「本郷……猛とか言ったよな? お前、両親は?」


「なんだよ喧嘩売ってんのか? 子供の時すぎて覚えてねぇけど、幼稚園で一人で遊んでたら拐われた。後で知ったが、俺は両親に売られたらしい」


 両親に売られたというのは組織(・・)がついた嘘だろう。母さんや親父(あいつ)の対応は、脅されていたと考えるのが妥当だ。


 誰がやらせたのかは分からない。だが俺『憤怒(ラース)』は、クローンとしての特性が弱いのだ。


 俺のひとつ上、素体番号12番は、明晰な頭脳を持ち、一つ飛んで10番は、共感性に秀でており諜報活動に向いている。


 俺の左腕となった2番は、高い治癒能力であり『シード』こと1番は、見た目通りの怪力を持っているのだ。


 絶対に裏切らない、与えられた任務に忠実なクローンに、敢えて感情を与えるなんて……たしか氷華は、俺が異能に覚醒している事を不思議に思わなかった。


 龍一と氷華は、俺を作った張本人だ。その二人が、俺に感情という特性を与えて、相場を殺すために的確な能力が育つようにと与えたのが本郷家だとすれば、目の前にいる本郷 猛はただの被害者だ。


「その……すまなかったな」


「あぁ? 気持ち悪いなぁ。別に構わないよ。今は雪姉や氷華姉さんも居るからな」


 俺の謝罪意図とは違うが、猛は口を尖らせながらも謝罪を受け入れ、少しだけ気持ちが軽くなった気がする。


***


 田井中の住む家には、両親と姉が居たが、今は三人とも両手足を縛られて視界と口を塞がれていた。


「家にはこいつらだけか?」


 聴かれても良いようにか、英語で話す隊員たちを尻目に俺は小さく舌打ちをした。


 仮とはいえ、田井中のガワを被っているであろ掵生は、当然田井中の行動パターンをなぞろうとする。


 なので家に帰ることも自然だし、罠を張るなら実家を占領すれば、目撃者やイレギュラーを減らせるのは、理にかなっているのだろう。だが気に食わない。今回の目標(ターゲット)は能力者だけだ。


「あぁそのようだ。さっさと殺すぞ」


 銃を構える外人どもがKillなどの単語と、ボルトキャリアを後退させるガチャリという音に怯えて震えだした。


 俺は一度目を瞑り、冷静に連中の行動を見逃そうと考えていたが、思考とは裏腹に俺の足は両親たちの前に立ち塞がってしまった。


「ま、まぁ待て……殺すのはよした方がいい──」


 少し前からアイリス等から勉強を受けて、アルヴァスとも任務中の日常会話を英語にすることで、語学力を鍛えている拙い英語と、銃口を下ろさせる。


「掵生レイは『獣化』の能力者、鼻が敏感だ。化薬や血の匂いがして、家から遠退けば、また探す手間が掛かることになる。せめて殺すのは、奴を捕らえた後でも良いんじゃないか?」


 外人たちが顔を見合せ、猛と久世は俺の言葉に同調してくれる。


「隊長、こいつの言うことは間違ってないかも、順番を少し前後させるだけだ。俺は賛成だな」


「私もです。なにより彼は異常者(・・・)に詳しいので、意見を受け入れるのが懸命かと……」


 少しだけ延命された両親と姉に「あなた達の息子が偽物かもしれない、その偽物を俺たちは追っている」と説明し、少しだけ状況を飲み込んでくれた。


「まったくお前、そんなお人好しでよく雪姉の部下やれてるよな。土壇場で殺しを躊躇するような甘ちゃんは、この世界で長生きできねぇぞ」


 初めてあった頃にされたような忠告を、改めて猛からされた。


「あぁ一ノ瀬にもそう言われたよ……」


 あいつは今どうしてるのだろう。早く助けないとな。


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