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ある日、俺は殺し屋になった。  作者: タスク
第二章
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三十六話

後半の展開が気に入らなかったので、再アップしました。

 相場が連れてきた地で、一ノ瀬の捜索をすること数日。


 すでに年は明けたが、いまだ最低気温を更新し続ける日、震える身体で着なれない黒色の学ランに袖を通し、黒縁メガネを掛ける。


 大きなあくびをしながら、ビジネスホテルの朝食バイキングで、眉目秀麗な金髪の青年が座る向かいに座る。


「おはよう、似合ってるよ。学生証は持った?」


 流暢な日本語を話し、青い瞳を向けて笑う青年は、髪色こそ違うがアルヴァスだ。


「今はセドリック・ユール……だったか? 本名か?」


「ハハッまさか、偽名だよ」


 そう言いながらスーツの胸ポケットから、国際運転免許証を取り出す。


「キミも学生証は持ってるかい?」


 アルヴァスに言われて、俺も胸ポケットから手帳型の学生証を取り出す。


日向(ひなた) 恭一(きょういち)……まさか、自作の偽名が本名になるとはな」


***


 なぜ俺たちが偽装をするのか。それは組織(・・)の情報部が掴んだ報せによるものだ。


 俺の言葉からか、氷華からの進言があったのか、情報部は一ノ瀬ではなく、バカ息子こと新羅(しらぎ) (ゆずる)へ捜査の向けた。


 すると捜査の糸にあっさり掛かり、七浜第二高校から──


「私立桜陵(おうりょう)学園……流石に場違いすぎだ」


 キッチリガッチリの学ラン姿の生徒が並び、今時珍しい黒色のセーラー服に赤いスカーフ。


 見るからに金持ち、見るからにボンボン。


 ガードマンに守られ、使用人を侍らせ、まるで異世界のような光景が広がる門扉に、吐き気がする。


 慣れない学ランに、慣れない通学路をとぼとぼ歩いていると、送迎組のボンボンどもに嘲られ、チラとそちらを見ると皆そそくさと逃げていく。


 何度かガードマンに止められたが、編入生という事で押し通す。


 校舎内もすこぶる綺麗に保たれ、俺がいた高校のように、ガラスが割れて寒風が吹くこともなく、生徒たちもどことなく気品がある気がする。


 俺が通う事になる教室に入ると、一斉にこちらへ怪しい視線が飛んできた。


 まぁ変な時期に、明らかな庶民が編入してきたら、金持ち様は風紀が乱れるだとか、気品がどうのとか思うものだろう。


 そして俺は適当な席へ座り、適当にカリキュラムをこなす……いや、正直こなす事が出来なかった。


 一年の三学期だと言うのに、レベルの高い授業……たった1時間が永遠のように長く感じられ、まるで宇宙人の言葉を教わっているような意味不明さだった。


***


 三限まで寝て過ごし、四限目に入る前に、俺はそうそうに教室を出て、本来の仕事を遂行する。


 と言ってもこれは半分、サボタージュ。ぶっちゃけバカな俺には、よく分からん授業を抜けるためのいいわけだ。


 学園内を見回る、新羅譲を探す事を名目に。


 教室棟、教員棟、講堂、学生食堂、室内温水プールetc……そして第一体育館へたどり着くと、出入口に見慣れた黒服達が居た。


「チッ……授業中だってのに、お守りは万全かよ……」


 悪態を吐きながら、黒服達の様子もメガネに録画すると、第一体育館の裏手に周り、能力を発動する。


(えにし)……」


 白い光が視界の端に溜まり、上を見上げて第一体育館の天井へ、両手首と両腕の四ヶ所に鎖を発生させ、重力による痛みを感じる前に一気に引き上げ、慣性で空へ投げ出されると、必死に天井にへばりつく。


 開閉式屋根伝いに、体育館へ侵入すると、中では体操着の生徒達がスポーツをして汗を流している。


 その中でも、一際異彩を放ちながら、バスケットボールを死守する男──新羅譲がワンマンプレイを遺憾なく発揮していた。


「流石です。新羅君!」


 熱血漢っぽい生徒の言葉を軽くスルーすると、新羅は黄色い声援を上げる生徒の中から、金髪の少女へ近づく。


「どうだった?」


「素敵だったよ譲くん」


 金髪の髪に、澄んだ蒼色の瞳、華開くような笑顔に、優しい声音……見覚えがあるし、なんだかモヤモヤする。


 メガネの縁を触り、ズーム機能を使って顔を撮影した。


***


 夕方、ようやく授業が終わる(ほとんどサボっていたが)


 ため息を吐きながら、下校時刻の学園内を見回る。部活動に精を出す生徒たち、図書館は勉学に勤しむ生徒で埋まり、中庭は恋人たちの憩いの場。


 とぼとぼ歩いていると、突然視界が真っ暗になり、背中になにやら柔らかいものが当たる。


「だぁ~れだ! フフフ」


 聞き覚えのある声、嗅いだことのある血と硝煙の匂い。


久世(くぜ) 千佳(ちか)……だろ?」


「えぇ~──」


 間延びした声に、甘い香水の薫りに、振り向けば俺と同じ、桜陵学園の制服を着た久世が、クスクス笑いながらミリタリー帽子を目深に被っていた。


「──もっとドキドキしてくれたら、嬉いんだけどなぁ~」


 久世は酷い火傷の痕を撫でながら、痛みを堪えるように笑う。


「あぁ……ドキドキしたぞ。殺されるかと思った」


 人を殺すようになって1ヶ月ほど、人の気配に敏感になっているのに、久世や一ノ瀬には、簡単に背後を取られるのだから、正直かなり心臓に悪い。


「それで? 恭一くんはなんでここにいるの?」


 久世は不思議そうに小首を傾げる。俺を試している訳ではないんだろう。


 俺達は名目上、組織(・・)に反して独自に行動していることになっているのだから。


「あぁ……一ノ瀬を探してる……──」


 声をひそめて、久世の耳元で囁くと、久世は驚いた様子で目を見開くが、それ以上は追及しなかった。


「──久世は? どうしてここに?」


「私も仕事だよ♪ 実は、雪ちゃんがやるはずだった【ハームフルコーポレーション】からの依頼でね。実験体(・・・)が逃げたらしいんだぁ~」



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