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ある日、俺は殺し屋になった。  作者: タスク
第二章
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三十五話

 助手席でベレッタM9を軽くメンテナンスしながら、傍らの相場を見る。


 相変わらず前が見えているのか不明な、砂嵐の掛かった顔が、真っ直ぐ道路を見ていた。


「目的の都心部はもうすぐだし、相方ももうすぐ起きるだろう──」


 相場が真剣なトーンで語り始めた。


「最後に2つ、キミに言っておきたい事がある」


「未来予知でもしてくれるのか?」


 やや挑発混じりの言葉に、相場はご機嫌そうに笑う。


「あはは! 僕のは未来予知じゃないよ。未来視(みらいし)|(物理的に)で、絶対に起きることなんだよ」


「俺がそれを聞いて、言うとおりに動くと思ってるのか?」


「ふふん! そうやって回避できると思ってる時点で甘いよね。僕の能力は、時間を操るんだよ? キミが未来を変えようと動けば、僕も未来を変える……まぁ、未来なんて、僕以外に変えられないけどね! ははっ!」


 本当に良く笑う。相場にこんな質問をした人間が居なかったのか、嬉々として俺に情報を教えてくる。


 俺は一応、お前の敵なんだがな……


「話が逸れた。えっと、2つだったね。一つ目は言わずもがな、彼女を助けること」


「言われるまでもない」


「その意気だ。2つ目、キミはこの後、掵生(はばき) レイという少年と出会う。彼は異能者だが、キミの敵ではない事だけ覚えておいてくれ」


 まるで預言者のような口振りだが、目の前の相場(コイツ)には、本当に未来が見えているのだ。


「あぁ分かった……一応、覚えておく……」


「三つ目だけど──」


「話は2つじゃなかったのか?」


「三つ目を思い出したんだよ……その前に一つ確認! キミが何者か、理解しているかな?」


 相場は突然、真剣なトーンでこちらを向く……というか前見ろ、運転中だろ。


「理解した。つい最近な……俺は日向(ひなた) 京一(きょういち)という能力者をベースに作られた、短命なクローン人間、人造人間とも言えるな」


「キミが作られた目的は?」


 今度はシートの上で胡座(あぐら)を組み、両腕をこちらを向いてきた。


 完全に手放し運転をしているのに、まるで自動運転のように、シフトレバーが動き、ハンドルが切られている。


相場(あいば) (りゅう)……お前を殺すためだけに生まれた」


「うんうん。ちゃんと思い出したんだね」


 そう言うと相場、七浜グランドホテルの屋上で、父親を殺した日の事を語る。


 相場いわく、あの時瀕死の俺を助け(肉体を過去の健康体に戻しただけ)俺の出生に関わる記憶を戻したのは、相場ではなく別の異能者──草薙(くさなぎ)だと言う。


 彼女の能力は、新羅にも似た能力で『記憶操作』である。


 だが新羅と大きく違うのは、その影響範囲だ。


 新羅(しらぎ) (ゆずる)は対象を一人として発動でき、対象の記憶を自由に書き換えられる能力。


 一方、草薙(くさなぎ) 彩花(さいか)には対象の上限は無いが、記憶操作の限界もなく、能力の行使には人間一人では不可能なほどの演算能力が必要らしい。


 その高度な演算能力を使って、俺に眠る機械的に操作された記憶を、異能によって復元させたという。


「さて本題に戻るよ。三つ目は簡単な事だよ? 日向 京一は組織(・・)の本部、円卓の会議場の奥で、培養液に浸かっている。彼と対峙した時、必ずその左目を抉り取ること、そしてその左目をキミの左目に移植することだ…………」


「は?」


「その為に、キミの左目は無事に残してあげたんだよ?」


 そう言われてハッとした。


 たしか、街中でいきなり親父──本郷(ほんごう) 允人(まさと)にルガーで撃たれた時、左目を撃たれていた。


 シャツの中を探り左胸に残る弾痕に触れる。


 切られたり、撃たれた事は何度もあったし、その致命傷は治っていても、傷跡は治らなかった。


 相場の言葉通りなら、いずれ起こる未来のために、故意に左目の傷は癒されたのだと気付く。


「さっ! 暗い話は終わりだ! キミたちには成すべき事がある!」


 車が自動で止まったのは、都内のとあるコンビニだった。


 後部座席のアルヴァスが悪夢に(うな)されているのか、师父……等の中国語を話している。


 アルヴァスへ意識を向けていた時、運転席の相場は忽然と姿を消していた。


「はぁ……いつも突然出て来て、突然居なくなりやがる。おい、アルヴァス起きろ!」


「ハッ! はぁはぁ……ここは?」


「酷い汗だな。ここは都内のコンビニだ。水でもいるか?」


  

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