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ある日、俺は殺し屋になった。  作者: タスク
第二章
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一話

 ある日、俺は組織(・・)に追われる身となった。


 12月23日、昨日のヘリポート爆発に巻き込まれた氷華先生は平然とソルジャック、カルロスとの合流地点である『七浜総合医療センター』へと到着する。


 そして親父を殴り殺したおかげで、両手と両目が故障し、前回とは違って今度はナノマシンを投与されると、翌日の朝にはすっかり回復した。


 一応ここには、俺たちクローン用ではないにしろ、水治療用の設備もあり、手の外科手術によって両手も復元され、両目の千切れた神経も繋ぎ直された。


「まったく……貴方の頑丈さと再生能力は大したものね。2番目の力を得ているとはいえ……」


 氷華先生の呆れた口調とは裏腹に、優しく俺の包帯を取り替えている。


「どうして昨日、俺の居場所が分かったんです?」


「貴方たちは管理の都合上、いつでも居場所が分かるようになっているの」


 そう言えば思い当たる節がある。


 最初に一ノ瀬と出会ったあの日、龍一はあの場に居なかったにも関わらず、俺を生かすよう命令した。


 他にも狙ったように病院から帰る駅前で鉢合わせたり、一度死んだ俺をロアーが回収したりしていたな。


「それで、昨日は聞きそびれましたけど、どうして俺を助けたんです?」


 包帯を取り替え終わった氷華先生に制服を手渡され、着替えながら質問を続けると、氷華先生は深く椅子に腰掛けながら答える。


「私の見立てた通り、当初の計画通りに異能を手に入れた貴方は組織の敵になったから……約束通り私たちが組織を抜け、探している別の道(・・・)について教えようかしら?」


 相変わらず死んだ魚のような覇気の無い目を向けながら、淡々と話始めた。


「そもそも龍一(坊や)は、異能者を憎んでいるわ……そのせいで未だに組織は、能力者の手助け無しで事を成そうとしているのよ」


 昨日の相場の力を見ても、ただの人間が何人束になっても敵うとは思えないが。


 ようは氷華先生は、余計な犠牲を強いる龍一のやり方とは違った方向で、相場を殺す為に組織を裏切ったって訳か。


「なんとなく分かります」


「えぇそうでしょうね? 貴方が目的を思い出したって事は、私が貴方を作った事も、知識として知っているでしょ?」


「はい……」


 俺に13の数字を与え、能力者に必要な『歪んだ価値観、感性』を身につける為に、他の連中とは違う育成経緯を持って生まれた。


 そして氷華先生の狙い通り、俺は異能に目覚め、その計画にようやく気付いた龍一は13の数字が意味する『裏切り』の意味に気付き、俺は現在進行形で追われる身って訳だ。


「ふぅ~なんか、上手く手の平で転がされているみたいですね……」


 俺の呟きに珍しく笑みを浮かべる氷華先生。


「フッ、私たちが昔受けてた異能覚醒実験は、もっと凄惨なものだったから、それと比べれば遥かにマイルドな実験よ?」


「愛情は無かったとはいえ、実の両親を殺す身にもなってくださいよ……おかげでマトモに眠れやしない……」


 軽い談笑を終え、俺はカルロスの作ったハーネスをブレザーの下に着込む。


「それより氷華先生、昨日は一ノ瀬たちをどうしたんですか?」


 昨日の七浜グランドホテルの地上部隊に、一ノ瀬たちが居た筈だ。


 まさか鉢合わせて殺し合いになっていたら……と思い訪ねたが、氷華先生は小首を傾げる。


「雪子? あぁ~もしかして坊やに『地上からは雪子たちが来てる』って言われた?」


「はい、地上から一ノ瀬たちと挟み撃ちに……っと 」


「あの作戦は、貴方を殺し屋としての技量を高めさせる謂わば演習よ? わざわざ無駄な被害出すような事はしないわ。坊やの口車にまんまと乗せられたわね」


 そう言うと氷華先生は二振の鍔の無い日本刀──いや直刀を手渡す。


「なるほど名役者ですね。だからあの日は、やたら試すような口振りが多かったのか……」


 一人愚痴りながら直刀を受け取り、両脇に携える。


 二振の直刀はカルロス・バレットが打った刀であり、彼が背負っている忍者刀を模したものだが、まず刀身の材質がまったく違う。


 黒鉄(くろがね)よりも更に強度が増した鋼鉄(スラグ)でできており忍者刀よりも刀身が分厚く丈夫だ。


 二振の直刀──黒い漆塗りの鞘には『黒桐(こくとう)』と朱色の鞘に蜘蛛の糸ような模様が特徴の『夕雲(せきうん)』二振の直刀の柄には、俺の異能を生かせるようランヤードが付いている。


 ご自慢の刀もそうだが、氷華先生曰くあの日使っていたベレッタと龍一のガバメントも元はカルロスが組織に居た頃に作った物だそうだ。


 最後にブレザーを羽織り、氷華先生に向き直る。


「組織の連中が氷華先生を、血眼になって探してました。ここに居ても大丈夫なんですか?」


「あぁ~そういえばこの前来てたわね。でも大丈夫よ。ここには私たち四人の異能者に加えて、もう一人強力な異能者がいるわ」


 五人目の異能者……朧気な記憶だが、前にここを出る時に見た患者服の女性のことだろうか。


 氷華先生は平常運転の意味深な発言をすると、重い腰を上げて立ち上がると白衣を羽織り、日本刀の鞘を手に処置室の扉を開けた。


 外には高級そうなコートと左肩にマントを羽織る長槍使い──ソルジャックと、忍者のような黒装束を身に纏った巨漢の黒人──カルロスが立っていた。


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