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ある日、俺は殺し屋になった。  作者: タスク
第一章
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四十八話

 眼前に立つ相場の姿。ロングコートの丈に合わない身長と、冬場だというのに半袖の黒いワイシャツ。


「蓄積されたエネルギーを解放するのさ」


 相場の軽口と同時に人差し指から発射された弾頭が、怯える男の眉間を貫いた。


 それと同時に小さな地響きと揺れが徐々に大きくなってくる。


「やっぱり、まだ全力では戦えないよね……他にロードローラー(・・・・・・・)とかナイフ投げとかしたかったのに……プフッ──」


 十重二十重に取り囲む大勢の男たちに一瞥もくれず、たった一人の男を殺すために能力を遺憾なく発揮していたにも関わらず、眼前の相場が振り返るとその姿は、出会った頃と同じ。


 フードを目深に被り、顔は砂嵐が掛かって同い年くらいの相場に戻っていた。


 そしてまた灰色の世界に変わる。


***


『さぁそろそろ遊びは終わりにして、キミは残酷な現実を思い出すべきだ。キミの生まれた理由(ワケ)目的(テキ)


 時間(とき)の支配者は悠然と俺の前へ立ち、また大仰に両手を広げると小首を傾げる。


『あ、ごめん。段取りを間違えた……おーい、草薙(くさなぎ)さぁ~ん』


 何もない空間に向けて手招きすると、ザザッっと灰色の世界にノイズのような砂嵐が起こり、何もない空間から現れたのは女子高生だ。


 ノートパソコン片手にセーラー服の上にパーカーを羽織り、フードを被った背の低い草薙と呼ばれた少女。


『対象は13番目のクローン『憤怒(ラース)』……6週目のA1からB2、八週目のE5からE8までをインストール……』


 抑揚のない無機質な声で、俺の元へ膝をつくとノートパソコンにもの凄い速さでタイピングを始める。


 13番……そういえば、氷華先生にもそう呼ばれた事を思い出した。クローンとは……


 思案していると徐々に思い出されてくる。


 クローンとは──No.=0『京一(きょういち)』を祖とする人造人間たちの総称。


 俺はそんなクローンの13番目に作られた通称『憤怒(ラース)


 さっき会った14番目の妹『咆哮(ロアー)』と1番目の『根源(シード)』たちと同じクローンだ。


 なぜそんな事を今まで忘れていたのか、その答えは眼前の少女──草薙が握っているに違いない。


『っで草薙さん、どれだけ思い出した?』


 相場の声が頭で響く。


『分からない……でも、別の世界線(パラレルワールド)の記憶をインストールしたから……記憶の齟齬と歪み(・・)が発生した……』


 さっき相場が大人の姿になり、大きな地震が起きた時にも言っていた『(ひず)み』


『あぁ大丈夫だよ。その歪み(・・)なら、ここにいる何人かを消せば解消できるから』


 そう言った相場はなにもせずポケットに手を突っ込むと、灰色の世界で音もなく男たちを消した。


 その姿に先ほどの大仰な予備動作が必要無い事を物語る。


『さて、キミの生まれた理由は言うまでもないだろう?』


「あぁ……──」


 口が利ける事に気付き、立ち上がると草薙を避けて相場の前へ立つすると、沸々と憎しみ似た感情が沸いてくる。


「──俺は……いや、俺たちは始原の異能者、相場 龍を殺す為に作られた……」


 俺たちの真祖『京一(ゼロ)』、氷華先生と龍一たち無能力者で構成された『No.=z(ナンバーズ)』が束になっても敵わなかった。


『そしてキミに与えられた目的は言わずもがな、僕を殺す事……なんだけど? まぁ無理だよね』


 癪だがその通りだ。この時間を止められた世界もそうだが、俺が今自由に口を動かせるのも、相場の意思によるもの。


 銃弾は止められ即座に錆びに変えられ、そもそも銃を撃つこともできない。


「玉砕覚悟でも、あんたをころ──」


『いやいやいや!』


 相場が即座に片手を高速で振った。


『玉砕どころか、キミじゃ僕の本体に会うことすら無理だよ! 第一、キミは僕より先に父親を殺すんだ』


「……チッ、別に血の繋がった父親じゃない……っが確かに言うとおりだ」


『血の繋がりは関係ない、少なくともキミを育てたのは事実だ』


「あんな奴にマトモに育てられた覚えもない」


『いいや殺し屋、日向 恭一を育てたのは紛れもなくキミの父親だ。マトモな親だったら人殺しになんてなれないよ』


 たしかに相場の言うとおりかも知れない、俺はアイツを殺したい一心があってここまで来た。


 それにヤクザ相手とは言え、殺人に強烈な罪悪感や嫌悪感は無かった。


「感謝する気にはなれないが、たしかにあんたの言うとおりかもな……」


 俺の言葉を聞いた相場は小さく頷き、その瞬間、灰色の世界に砂嵐のようなノイズが走った。


***


 冷たい風が頬を撫で、ボルト部分や銃口が破裂した銃が辺りに散乱している。


 周りに居た男たちは跡形もなく消えた。


「俺様を守るには役不足だったか? どいつもこいつも使えねぇ奴らだ……──」


 そう毒吐きながらゆっくりと歩いてくるのは、俺がこの世で二番目に憎んでいる男──本郷 允人。


 顔を伏せながらタバコを燻らせ、両手をバイオレットのスラックスに突っ込んでいる。


「──こんな出来損ないのクソガキ一人、殺す事すらできねぇなんてなぁ!」


 眼前に立つ憎き父親へ向けて、俺は右手に持ったベレッタM92FSの銀色の銃口を突きつけると同時に、ルガーP08の金色の銃口が眉間に向いた。


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