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ある日、俺は殺し屋になった。  作者: タスク
第一章
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四十七話

 どこまでも落ちていきそうな深い闇の上を、火花を散らしながら滑空し、右手に銀白色のベレッタM92FSを持つ。


 屋上にはカラシニコフやユージンにアーマライト、IMIなんかの突撃銃(アサルトライフル)短機関銃(サブマシンガン)による銃弾の応酬。


 俺はそれに対してなんとも弱々しい拳銃(ピストル)での応戦だ。


 何発か掠る銃弾を避け、屋上へと達する前に鉄鎖が断ち切られ青白い光へと霧散した。


 慌てて俺は屋上に居た数人の男と、自分を繋げる鎖を想像し発動する。


(えにし)! 奴らと俺を繋げろ!」


 俺の腰に二本の鉄鎖が現れ、ハーネスのように屋上のヘリにすんでで引っ掛かると、鎖の色が徐々に赤みを帯びていく。


 ヘリポートから男たちの怒号が聴こえ、アスファルトを駆ける数人の足音が近付いてくるのを感じ、すぐさま繋がる鎖が引き寄せられるイメージを意識する。


 するとガリガリと嫌な音を立てて赤みを帯びた鉄鎖に引っ張られるようにしてヘリポートへと登った。


 額に浮かんだ脂汗を拭い、崖っぷちのヘリポートで完全武装した数人の男たちに囲まれる。


「アイツは……本郷 允人はどこだ!!」


 適当に見渡した男たちへ向けて叫ぶと、一部の奴らは少し怯えたように後退る。


 そして俺の問いに答える奴はいない。


「そうか……じゃあてめぇら全員殺して死体の山から探してやるよ!」


 ベレッタを構えた瞬間、四方八方から十重十二重の豪放が鳴り響き一瞬にして俺の両手足が吹き飛んだ。


 まさかの練度の高さと正確な射撃に瞠目する間もなく、血溜まりに伏した。


***


 今度は死んではいない、ただ手足を無力化されただけなのに、激痛が永遠と続く灰色の世界に変わった。


「おいおい、まだ俺は死んでないぞ」


 自分の口が自然と動き、発声できたことに驚いた。


『勇んでここに来たのはいいんだけど、キミはノープランすぎるし、弱すぎる』


 俺の理解者──相場(あいば) (りゅう)は平然と現れた。


『多勢に無勢……こんな時にこそ、異能を使うべきなのにキミは頭に血が上って、そこまで思い至っていない』


 たしかに俺は戦闘になると、目の前の敵を殺すことだけに集中するが、そのせいで今の瀕死の状況に陥ったと考えれば、少しだけ反省させられる。


『うんうん……反省しているなら、少しだけサービスしてあげよう……前の世界線では、僕の力を初見で見破れずに負けたしね』


 意味深な言葉を残し、相場は仰々しく両手を広げると灰色の世界が動き始めた。


***


「な、なんだ? この小僧どこから?」


 アスファルトに伏した俺に相場が触れた瞬間、千切れた手足は当然のように身体に繋がる。


「ば、ばけもんか!!」


 周囲の狼狽え声とすぐさま銃が向けられるが、相場は平然と連中に向き直ると、また両手を広げた。


 周囲の銃のトリガーが引かれた瞬間、ガチャリガチャリとほぼ同時に排莢口が詰まる。


『いやぁこんな偶然があるんだね。今この時、この瞬間に全ての銃がジャムっちゃうなんて……』


 頭に響く声は相場のモノだ。


『確率でいえば……新品で買ったカップ麺に虫が入ってた……くらいかな? プフックク……』


 くだらない事を言って一人で笑った瞬間、屋上に巨大な亀裂が入り、動揺が広がった。


『おっとと~思わず笑っちゃったから、歪み(・・)が開いちゃった。ごめんごめん』


 異次元の力を前に周囲の男たちはかなり混乱している中、瞬きする間に巨大な亀裂は跡形もなく消えていた。


『さて……反撃開始だ……』


 さっきの冗談を言った弾んだ口調ではなく、今度は恐ろしいほど沈んだ声を発して一歩ずつゆっくりと一人の男に近付く。


 周囲の男たちも必死にチャージングハンドルを引き、詰まりが解消されたと思い銃を向けてトリガーを引いた瞬間──突然、銃が爆発した。


 それも次々と……


「がぁぁあああ!」


「いてぇぇえええ!」


 右手が吹き飛び、頬を焼きのたうち回る男たちに一瞥もくれない相場は、暴発に怯えながら銃を構える男へゆっくりと歩み寄る。


『クーポンを差し上げよう。サービスだ……』


 訳の分からない事を話す相場に対し、決死の覚悟でトリガーを引くと豪放が鳴り響いた。


 まるで掘削機のように規則的かつ素早い爆音が四十連発し、白煙がゆっくりと流れる。


『無料で弾が撃ち放題のサービスはいかがかな?』


 相場が言葉を発すると、突風が白煙を掻き消すと眼前には信じられない光景が広がっている。


 四十発分の細長い弾頭が、まるで透明の板に阻まれているように空中で静止していた。


『キミたちはクラ◯ト・ワーク(・・・・・・・・)というスタンドをしているか?』


 また訳の分からない事を言い出す相場は、人差し指の先でトントンっと一発の弾頭をつつき始める。


『固定化した物質に衝撃を与え、エネルギーを蓄積すると解放した瞬間に凄まじい破壊力を持つんだ……まぁ僕にはそんな事できないけど! プフッ』


 誰も笑っていないのに、また一人でに笑い出した相場が弾頭の壁を前に大仰に両手を広げた時、静止する弾頭は一瞬にして鉄錆の砂へ変わり、風に吹かれて消えていった。


 相場が笑ったということは、あれが来る。


『プフッフフフ……いや、できるか?』


 笑いながら右手を少し伸ばすと、風に溶けていった鉄錆びの砂が集まっていき、一発のライフル弾に戻った。


 弾頭の先はライフルを構えていた男へ向き、相場は弾頭を人差し指でトントンとつつき始める。


『希望とやる気がムンムンわいてくるじゃあねーかッ!』


 興奮したのか相場は漆黒のロングコートを脱ぎ捨て、初めて見た相場 龍の本当の姿。


 はじめて会った時は、ただのガキ……俺と年齢も変わらないように見えたが、今眼前でコートを脱ぎ去った男は立派な大人だ。


「なんてなぁ~プフッ!」


 はじめて聞いた本当の声に、なぜか懐かしく思えた。

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