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ある日、俺は殺し屋になった。  作者: タスク
第一章
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十四話

 毎朝学校へ行くため仕方なく掛けているアラーム、コレが夢の中で遠くから聞こえてきたら、それは起きる合図だ。


 目を開けてアラームを止め、制服を着て学校へいく、それを数年繰り返す。


 だからだろうか、セットした覚えはないがバンバンガチャガチャ、遠くから聞こえてくるってことは、目を覚まして学校へ行かないと。


 そう思って目を開けて、眼前のなにかに触れるとべちゃりと嫌なものが指にまとわりつき、ぐにぐにと弾力のある物をつついた。


「起きて恭一(きょういち)くん!!」


 耳元で怒鳴られ咄嗟にカッと目を見開き、今指先に触れているのが目玉であることに気がついた。


「うわぁ!!」


 手をサッと引っ込めたが、肘に激痛が走った。見ると肘には割れたガラスの破片が突き刺さってい、頭上を掠めた弾丸が目の前のワインのボトルを砕く。


「な、な、なななんだよ! どうなってだ!?」


 目の前に転がる厳ついバーテンの死体と共にカウンターの中に居ることは分かったが、状況が飲み込めず驚きの声を上げる。


 すると少し離れた所で、聞き覚えのある下品な笑い声が聞こえてきた。


「ハハハ! 銃撃戦の中で居眠りって、洒落た事してんなぁ! クソガキ!!」


 金髪クソピアスこと佐野(さの)だ。


「もぉ! 元を正せばジュンが悪いんでしょ!?」


 声を荒げながら避難するも、手にした大型自動拳銃(ラドムVIS)で応戦する、フライフェイスこと久世(くぜ)も隣に居る。


「恭一くん! 銃の使い方わかる?」


「止めとけ、やめとけ! 弾の無駄だ」


「ジュンは黙って応戦!!」


 実銃の使い方なんて知らない。と言いたい所だが、実銃もエアガンやトイガンと似た機構って事ぐらいはわかる。


 問題は銃の反動や、人間を殺める事への抵抗だ。


「む、無理だ! 人なんて簡単に殺せない!」


 久世にそう伝えたが、手渡されたのは小型の回転拳銃(オフデューティ)だ。


「殺す必要なんて無いよ! とにかく撃って近づけさせないで! ただしカウンターから頭を出して良いのは、二秒だけ!」


 俺にそう説明する間も、膝立ち(ニーリング)しながら撃ち返す。


 耳を劈くほどの銃声合戦、まるで花火大会のように立ち込める硝煙の香り、そしてそこに混じる錆びた鉄の匂い。


 俺は切り詰められたグリップを握り、軽く左手を添えると久世の真似をして左膝を立て、顔を上げた瞬間──頬を一発の弾丸が掠める。


「うっ……」


 頬を切るような痛みと衝撃に、思わず尻餅をついてしまう。


 笑いながら応戦を続ける佐野と、冷静に頭の位置や立ち上がるスピードを変える久世。


 そんな二人の目は共通して、心無いロボットのような眠たげな目だ。


 まるで人を殺すために生きているロボット。そんなロボットの1人、久世が肩を撃たれ、咄嗟に受け止めた。


「いったぁ~ごめんね。恭一くん」


「おい大丈夫かよ!」


 撃たれた肩をすぐに押さえ、久世は唇を噛みながら痛みを我慢し、ひどく爛れた左頬を軽く銃のグリップで撫でた。


 俺が撃てなかったから久世は撃たれたのか……


「長尾組を舐めてるからだ! クソガキどもが!」


 銃声は止み徐々に近づく足音。なにが長尾組だ……ただのチンピラの集まりが、偉そうにしやがって。


 脳裏にチラつく嫌な思い出、ヤクザってだけで偉そうに昼間から酒を飲み、母親に手をあげ、俺をオモチャにする親父(クズ野郎)


 目の前で涙を流している人間が居るのに、平気で嘲るゴミ共……思い出した。俺が殺したい相手への憎悪。


「悪い久世……ソイツ貸してくれ」


「え? でも恭一くん……」


 自分でも何故、久世の拳銃を借りないといけないのか分からない。夢で見た自分を真似してるのだろうか。


 左手にラドム、右手にオフデューティーを持つと、ふと氷華先生の言葉を思い出した『特別頑丈にできている』っと。


「なら、持ってくれるんだろ? 俺のからだ……」


 久世には聞こえたかも知れないが、小さな独り言を言う。


「さっさと出てこいクソガキ! 兄弟をこんなに殺しやがって! こっちは五人いるんだよ!!」


 今にも嬉々として飛び出しそうな佐野を制し、久世を介して援護してもらうようにハンドサインを送ると、小さな舌打ちをしてグラスを手に持った。


「チカ! グレネードいくぞ!!」


 明らかに動揺する声をあげるヤクザ共を尻目に、佐野は悠々とグラスをカウンター越しに放ると、俺はそれを皮切りにカウンターを飛び出した。


 テーブルを盾にしていた後が窺えるが、本当に男五人が一斉にフェイクグラスへ銃を向けて並んでいる。


 そんな連中へ飛び出す俺は今、どんな顔をしているのだろうか。


 佐野のように嬉々としているのか、久世のように冷静沈着なのか──はたまた一ノ瀬のように、何も感じない氷のような仮面を掛けているのだろうか。俺には分からない。

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