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ある日、俺は殺し屋になった。  作者: タスク
第一章
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十三話

 眠気に負けて爆睡していると、とっくに午後の授業は終わっていた。


 今朝は家を出る前に一ノ瀬が「登校初日だ」とか言ってたが、転校生ってのは本当らしく、放課後になるとクラスの半分は一ノ瀬目当てで群がってくる。


 やれ彼氏は居るのか、ハーフかクォーターか、趣味はなんだと一通りの自己紹介をさせられた挙げ句。


 今度は部活の勧誘に、放課後の勉強会? カラオケだゲーセンだクラブだ、羽虫のごとく煩わしい。


 人殺しとしての一ノ瀬って印象が強すぎて意識してなかったが、顔立ちは整っててスタイルも良い……いわゆる美少女ってやつなのか。


 もみくちゃにされる一ノ瀬を尻目に早々に退散した俺は、一人教室を後にし、寒空の下乾いた風に身震いしながら正門へ向かってトボトボ歩いていると、突然肩を叩かれた。


「よっ! 満身創痍(まんしんそうい)って感じだな。キョウ!」


 底抜けに明るく、髪まで明るい真っ赤な炎髪(えんぱつ)の男だ。


「え……誰?」


 俺をキョウなんて呼ぶやつはいない、何故なら俺には友達がいないからだ!


「は? だれってなんだよ! 新手の記憶喪失ギャグのつもりか? 俺だよオレ! お前の親友!」


 俺に親友なんていない────いや、居たな居た。なんで忘れてたんだろう。


赤井(あかい) 龍一(りゅういち)だろ?」


「そうだよ! なんだよ覚えてるんじゃねぇか!」


 目の前の赤髪の男、赤井龍一は親友だ。その証拠に俺は今、懐かしいという感情が芽生えている。


 だが何故だか、龍一と過ごしたはずの過去が一切出てこない────まぁいいか。


「今朝、ヤクザにボコボコにされて大変だったんだよ」


「ホーずいぶん楽しそうな事やってんだな? っで、何人ヤッた?」


「四人にリンチされて、手も足も出なかった。そしてこのザマだ」


「なんだよ! 弱いなぁ~キョウは!」


 雑談をしながら自然と歩みを進め、正門を出た俺たちは、流れで歓楽街へ繰り出す事にした。



***



「久々に酒でも飲むか?」


「まだ夕方だろ。それに未成年だし」


「堅苦しいなぁ! 『まだ夕方』じゃねぇ! もう夕方(・・・・)なんだよ!」


 そう言って無理矢理肩を組まされ、引き摺られるようにして一軒のバーへ入った。


 間接照明の薄暗い店にたちこめる煙草とアルコール、香水の匂いが混じったキツイ匂い。


「よぉマスター、この店で一番キツイ酒を2つ!」


「お、おい、龍一……」


 カウンターのスツールに腰掛け、堂々と振る舞う龍一とは対照的に、動揺を隠しきれない俺。


 そりゃそうだ。派手なスーツに高そうな貴金属を付けた連中のなかで一人、場違いな制服姿なのだから。


 マスターと呼ばれたバーテン風の厳ついおっさんは、俺を一瞥して訝しむも、慣れた手つきで2つのショットグラスに透明な液体を流し込む。


 どうか俺のは水であってくれと願いながら、ショットグラスを持つ。


「久しぶりの酒に! 乾杯!」


 そう言ってグラスを掲げて一気に呷る龍一を見て、俺も負けじと酒を飲み口一杯に広がるアルコールの匂いを払拭するよう、喉を鳴らしながら嚥下する。


 喉が焼けるように熱く滾ると、今度は目や鼻の粘膜まで焼くアルコールの勢いに、俺はスツールから崩れ落ち、絨毯を舐めた。


「あららそんなにキツかったか?」


 そう言って手を伸ばす龍一の上着が垂れ、脇にチラリと見えた銀色の拳銃(ピストル)──あれは夢の中で見たM1911A1(ガバメント)にそっくりだった。


「なぁ龍一……そのガバメント──」


 手を掴もうと腕を伸ばすが、何処からともなく電子音が聞こえたと思ったら、俺の手は空を切るとスツールに頭をぶつけた。


「あーもしもし? マジかよ……しゃーねぇ! 俺が行くからセレナを止めとけよ、アル!」


 ブレザーの襟を掴まれ、無理矢理座らされるとカウンターに二枚の万札を叩きつけられた。


「わりぃなキョウ、迎えを手配しとくから! お前はここで飲んでろよ! かわりと言っちゃなんだが、ここは奢るからな!」


 それだけ言うと颯爽と店を出ていった龍一に、遅れて「おう」っと了解の意を伝えたが時すでに遅し。


 揺れる視界と目の前の万札を握りしめ、厳ついおっさんに向き直った。


「ますたぁ~! もぅ一杯くれぇ!」

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