表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある日、俺は殺し屋になった。  作者: タスク
第一章
12/89

十一話

 中華街まで担がれ、辱しめを受けたあげく。俺みたいな一般人でも聞いたことのある、大陸系マフィアの縄張りに、平気でズカズカ入っていく。


 顔面タトゥーのムキムキ坊主、明らかに異常なガリガリの男が中華刀を振り回している。


 控えめに言って超ヤベーところなのに、さらにヤバそうな廃墟の地下へと連れてこられた。


「モウ、大丈夫……」


 優しい口調のカタコトの日本語でそれだけ言うと、薄暗い部屋のベッドに寝かされた。


 清潔なベッドで寝かされても、体の節々が強烈に痛み、自然と口から出てくるのは小さな呻き声だけ。


 青白い白熱電灯が照らす薬品臭い部屋のあるじ、白衣を着た黒髪の女性が現れる。


「……あら、珍しいお客さんね。こんなところで何してるの、13番」


 力の無い青い瞳の女性、背丈やらナニやら、全てを小さくした一ノ瀬のような女性だ。


 13番とは、俺に言ってるのか……目は確実に俺を捉えている。


「いってぇ……アンタ、闇医者ってやつ……すか?」


 闇医者といいつつ先生と呼ばれる人種、つい反射的に敬語もどきを発揮してしまった。


「そうね。闇医者ってやつよ。貴方はどう? 私の事、覚えてないかしら?」


「さぁ、知らないっすね。だけどあんたに似た女を、一人知ってます」


 一瞬眉をピクリと動かした一ノ瀬似の女性は、俺を連れてきた女性に向きなおる。


「彼ならすぐに治せるわ。(しゅう)はもう帰って大丈夫よ」


 コクリと頷き、俺を一瞥すると踵を返す。


「あぁそれと、貴女がいる組……『羽籠(はごもり)組』だったかしら? 組織に狙われているわ。用心しなさい」


 日本語を正確に理解しているのか、朱と呼ばれた女性は部屋を出ていった。


「さてと貴方にはコレしかないのよ」


 そう言って一ノ瀬似の女性は、ボールペンのような物を取り出してきた。


「えっと……なんすか、ソレ?」


「ナノマシン注射器よ」


 ナノマシンってSFとかで良く聞く、小さい機械を体に入れて治療をするって、アレか?


「じゃあ、いくわよ」


 力の無い眠たげな目を向けて、怪しい注射器を俺の首筋に当てた。


 カチリとなにかを潰す音が聞こえると、首にチクりと痛みを感じ、身体中になにかが流れ込んでくる。


「はい、おしまいよ」


「え? コレで終わりっすか!!」


 そう言ってベッドから上半身を起こして闇医者を非難するが、全身の鈍い痛みが消えていることに気付いた。


「驚いたわね。『セルドライブ』のナノマシンでも、無能力者が取り込んですぐに効果が出るなんて……」


「は、はぁ……」


 ちょっと何言ってるか分かんないっすね。


 専門用語の羅列に思考停止してしまった。


「さて傷は治ったんだから、早く帰りなさい」


 ベッドから降りて穴の開いたブレザーを着、財布を取り出すとカツアゲにあって一円もないことを思い出した。


「あの……治療費っておいくらですか?」


「いらないわよ。ナノマシンの実験も兼ねてるから、この臨床データを海外の医療機関に売った方が、お金になるわ」


「そ、そういうもんなんですか……」


「そうね。治療費のかわりに、貴方が知ってる『私に似た女』について教えてくれる?」


「そんな事で良ければ。一ノ瀬(いちのせ) 雪子(ゆきこ)って言って歳は15くらいですかね。先生より……なんと言うか……いろんな所がオオキイデス」


「最後はよく聞こえなかったけれど、そうね。私は一ノ瀬(いちのせ) 氷華(ひょうか)、あの子の姉よ」


 ん? 姉? てっきり妹かと……って医療なんて高等技術、大学生以上じゃないとありえないか。


「お姉さん……一ノ瀬の口からは聞いたこと無かったんで、驚いたっす」


 そもそも一ノ瀬と知り合って日が浅い、当たり前と言えば当たり前だが。


「雪子の知り合いって話だったけど。私を知らないってことは、組織(・・)の人間ではないようね。なら忠告させてもらうわ──」


 神妙な面持ちで口を開く氷華先生が、浅く息を吸った瞬間──診療所の扉が勢いよく開かれた。


「先生! 急患です!! 彼が刃物で斬られたようです」


「患者に猿轡(さるぐつわ)をして、手足を拘束! 早く奥に連れていきなさい」


 血塗れの顔面タトゥーの坊主が、痛みに絶叫している。


 舌を噛まないようにか、口を開けた瞬間硬い布を噛ませてタンカーについている手錠、足錠で拘束すると急いで奥へと連れていかれた。


「いろいろ教えてあげたいけど、時間が無いわ。また怪我をしたら、必ず私のところへ来なさい……貴方は特別頑丈に作られているからって無茶しないことね」


 それだけ言うと、白衣を脱ぎ捨て颯爽と奥へ消えて行った。


 男のくぐもった絶叫に、慌てて薄暗い診療所を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ