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デイドリームビリーバー

 どれくらい走っただろうか。肩が上下し、喉の奥からは血の味がする。足の裏は一歩進むごとに痛みを覚え、息が上手く吸えない。それでも、俺は走った。


 自転車は見境橋の前に置いてきてしまった。今からどこに向かうのか、どうすべきなのか。一切何も決めないまま走り出してしまったので、今自分がどこに向かっているのかもわからない。


 体力の限界を感じて、俺はその場で足を止めた。そして、振り返っても誰もいないことを確認してから、倒れるようにその場に座り込んだ。ここがどこなのかも、今が何時なのかも皆目検討がつかない。


 辺りを見ると、いつの間にか俺は知らない道に迷い込んでいた。見覚えのあるものといえば、河川敷の延長線上にある川のみである。それ以外はこれといった大きな建物もなく、だだっ広く赤い空が民家の上に乗っているばかりであった。


 なんとなく見過ごしてしまいそうだったが、その光景には明らかに異様なものが混じっていた。そう、空が赤いのである。それは夕日に染まった橙色の空をあえてそう示しているのではない。真紅の空は、民家のシルエットをグロテスクな色合いで浮き彫りにしている。そして、血のような空には白い月がぼんやりと浮かんでいた。そんな花札の芒に月のような光景を前に、俺は息を呑んだ。


 世界が、異様な方向に湾曲しつつある。そんな気がした。


 人気のなかった長い土手沿いの道の先から、自転車に乗った人間がやってくるのが見えた。車輪の部品が錆びているのか長らく油が差されていないのか、遠くからでもカラカラという車輪の回る音と金切り声が聞こえた。


 自転車に乗る男は俯きながら運転するために、不安定な走行になっている。見ていて不安になるような動きで何度も土手から落ちそうになりながらも、男はこちらにやってきた。そして、俺の目の前で自転車は停まった。


 「お前は、夢を捨てるのか?」


 地面を見つめているため、その顔は全く見えない。


 「はい?」


 「お前はどちらを選ぶ?」


 小さな声で、男はそう言った。


 「お前は誰だ?」


 その問いとともに男は突然、顔を上げた。俺は驚きのあまり、後退りした。そこには、俺の顔があったのだ。


 「お前は誰だ?」


 自分自身の無表情な顔が、口元だけ動かしてそう問いかけてくる。一方その顔の本当に持ち主である俺自身は、開いた口も閉じられずに後ろに下がることしかできなかった。


 「お前は誰だ?」


 三度目にその問いを投げかけられた瞬間、俺は後方を見ずに後ろ歩きをしていたために足場がないことに気づかず、土手から転がり落ちた。水気を帯びた水場近くの雑草は滑りやすく、止まろうと思っても傾斜が後押しして、どうしても止まることができない。止まろうとする意思と反して体は何度も回転し、雑草を掴んでもいとも簡単にそれらは土から抜けてしまった。


 結局、傾斜がなくなる河川敷まで落ちて、俺は背中に響く砂利の痛みに顔を歪めた。骨が折れているのではないだろうか。後頭部から血が出ているのではないだろうか。そんな不安が幼稚ながら頭の中に浮かんだ。だが、全身を動かしてみても後頭部を触ってみても、怪我らしい怪我はしていなかった。


 「お前は誰だ?」


 俺まで届くように、先程よりも大きな声で男は問いかけてきた。赤い空の中に、中年の体をした自分が浮かんでいる。その目はしっかりとこちらを見つめ、目元だけは俺のものにはない不気味さと無機質的な雰囲気を放っていた。


 あまりにもその光景が非現実的で気持ちが悪いので、拒絶反応を起こすように俺はその場から走って逃げ去った。


✳︎✳︎✳︎


 しばらく、不安を抱えながら川沿いの道を歩いた。足の裏が痛い。それに、骨が折れていなくても身体中を打撲しているのは確かだ。空模様からそろそろ日が沈むのではないかという考えが幾度となく浮かんだのに、空は一向に暗くならない。いつまでも鮮やかな赤を空に描き、周囲は常に薄暗いままだ。そんな曖昧な空の下、俺はただひたすらに歩いた。途中、何度か俺の顔を持った一般人たちが話しかけてきた。もちろん内容は最初の男と同じものである。そんなものも無視して、俺は足を進めた。


 そんな最中、俺は聞き覚えのある声を耳にして足を止めた。


 「おーい、奥村くん」


 土手の上からそう呼びながら手を振るのは、吉成先生であった。いや、待てよ。もしかしたら吉成先生の声と体を持った、俺かもしれない。俺は目を凝らして、先生の顔を見つめた。


 「なんで睨むんだよお」


 皺をいくつか増やしながら甘ったれた声で笑うその顔は、他ならぬ吉成先生のものであった。


 「今、何してるのさ?」


 「いや、特に」


 能天気な先生の問いに、俺はつい適当なことを言ってしまった。特に何もしていないわけがないのだ。


 先生はまた何かを言った。だが、今度は聞き取れない。何度か聞き返して、やっと聞き取れることができる。そんなやりとりが続いてまどろっこしいので、俺は土手を登った。


 「いやあ、ごめんごめん」


 先生はそう言って笑った。


 「それにしても、空が何だかすごいね」


 「はい、なんか世紀末みたいです」


 「たしかに」


 至近距離で見ても、先生の顔は先生の顔であった。先生の垂れた目や緩めの口元に対して、自分がこんなに安堵する時が来るとは思わなかった。


 「ここ、どこなんですか?」


 「知らないで歩いてたの? だいぶ学校から遠いけど」


 先生に詳細な位置関係を聞くと、どうやら俺は見境橋から逃げる際に家から反対方向に走ってしまい、さらには学校すらも通り越してきてしまったようだ。つまり、今は駅の近くにいるわけだ。


 「どうやって家まで帰るの?」


 「えっと、歩きです」


 俺の答えに、先生は驚いた表情を見せた。


 「大丈夫? 日暮れちゃうよ」


 「たぶん大丈夫です」


 俺の言葉に納得がいかなかったのか、先生は悩ましそうな顔を続けた。


 「ううん、そうだ、車で送っていってあげるよ」


 「いいんですか?」


 「家まで近いし、そうしよう」


 そんな経緯で俺は吉成先生宅まで歩いた。道中では空模様について話し、本当にそこから家が近かったために、特にこれといった深い話題にはならなかった。


 「少しだけ休憩しよう。学校からここまで歩くと、意外に疲れちゃうんだよな」


 平然と俺を部屋に招き入れながら、先生はそう言った。先生の部屋は絵に描いたような一人暮らし用のマンションの一室で、オシャレとは言えないものの掃除が行き届いていた。


 「なんであんなところにいたのさ?」


 キッチンで水を飲みながら、先生は話しかけてきた。俺は促されるままに、仕舞うタイミングが失われたコタツの中に入る。


 「なんか馬鹿馬鹿しいと思うかもしれないんですけど、自分自身に襲われたんです」


 「何?」


 先生は水を少し吹き出した。


 「それってドッペルゲンガーじゃないか」


 大真面目な顔で先生はそう言った。


 「それなのかはよくわかんないです。それで、そいつにあることを聞かれたんです」


 「あることって?」


 「夢の中で生きるか、夢を捨てて理性的に生きるか」


 俺の言葉に、先生は悩み混んでしまった。いつものように、不器用ながらに生徒の悩みに応えようとしているのである。


 「とっても難しい質問だ。高校教師の立場からしたら、宿題は提出して欲しいし進路もしっかり決めて欲しいから、理性の方を選んで欲しい気持ちもある。だけど、この社会で生きる大人としては、子どもには未来を見据えるための夢を持っていて欲しいと思う。どっちも一長一短って感じだ」


 先生は水を飲み、一息ついた。


 「難しい選択だから、どっちが多数派でどっちが少数派ってわけでもなさそうだね。そうすると、多数派が偉いってわけでもないけど参考にするべき人の意見ってのもあまり予想できないなあ。だって、どっちにも一理あるからなあ」


 そう言うと、ついには先生は黙り込み、一人で考え込んでしまった。そんな沈黙が、決して短くはない間続いた。


 「すみません、気にしないでください」


 そんな俺の言葉にも、先生は反応しなかった。


 「どっちが正しいとか正義とかは、ないんだと思う」


 突然、先生は口を開いた。


 「だから投げやりみたいになっちゃうけど、奥村くん自身が答えを出す必要があるんだ。ここで失敗しても他人のせいにはしない、責任感もすごく重要だ」


 「参考までに、先生はどうしますか?」


 俺の問いに先生は首を横に振った。


 「それは教えられない。だってそんなことしたら、純度百パーセントの奥村くんの意見じゃなくなっちゃうもん」


 先生は続けた。


 「それに俺の意見は、奥村くんと意見が変わるはずがないんだ」


 「え?」


 先生はその場で俯いた。


 「だってさ、俺も君の中の一部だから」


 そう言った瞬間、先生の顔の皮膚は泡立つ熱湯のように蠢いて、みるみるうちにそのパーツや配置を作り替えてしまった。垂れて細い目は少しだけ大きくなり、鼻の穴は丸くなって、唇は分厚くなった。そう、そこにはまた俺の顔があったのだ。


 「さあ、もう決めた? どちらを選ぶのか」


 「そんな、突然言われても」


 「駄目だよ、そんな曖昧な返事では。さあ、答えなさい。お前は誰だ?」


 その問いを受けて、俺は先生の家から逃げた。


✳︎✳︎✳︎


 先生との会話はあのような終わりを迎えてしまったものの、一概に無益とも言えなかった。自分が今どこにいるのかが判明したのである。一方でいまだにどこへ向かうべきなのかは判然としないのも事実だ。それでも先生の家の前で立ち止まっているわけにもいかないので、俺は学校や家がある東側へと進んだ。


 道中でも、耳にタコができるほど聞かれた例の問いが、何度も投げかけられた。通行人にそれを尋ねられるのは慣れてしまったが、鏡に反射した自分自身や散歩中の犬に問われた時には新鮮な衝撃とともにこれ以上とない気分の悪さを覚えた。


 「お前は誰だ?」


 「お前は誰だ?」


 「お前は誰だ?」


 道を聞くようにそんなことを聞かれても困る。俺が誰なのかなんて、どう説明するのが正解なのかわからない。


 そんなこと考えながら、学校を通過した。最初は助けを求めようとしていたが、吉成先生の一件を考えて思い直したのだ。


 足の裏が痛かった。こんなことならもっと靴底の厚い靴でいるべきだった。それでも、俺は歩き続けた。俺が俺であるためには、歩みを止めてはいけない。そんな気がしたのだ。ここで止まれば、きっと夢泥棒か夢の中の俺の顔をしたやつらに見つかって、また選択を迫られるに違いない。


 俺はただ歩き続け、気づけば見知らぬ釣り堀に辿り着いていた。釣り堀なんて、近所にあっただろうか。あったら十七年間も生きてきて、全く来たことがないなんてことあるだろうか。そんなことを疑問に思いつつも、俺はそこに足を運んだ。別に釣り堀に対してこれといった興味はなかった。ただ、学校や家みたいに以前から知っている場所に帰って、自分の顔をした知人に会うのが怖くて、全くもって知らない場所に惹かれたのだ。


 生け簀を蒲鉾型の屋根で囲う形になっている釣り堀は、天井がある一方で大きな窓からは自然光が注ぎ、半分屋内で半分屋外みたいな印象である。中には誰もおらず、循環用のポンプから排出される水音だけが響いている。店番もいないので釣竿は勝手に拝借することができたが、釣りに興味があるわけでもないので何も持たないまま生け簀の方へ直進した。


 破けた部分をテープで補強したパイプ椅子がいくつか並べられていた。お世辞にも綺麗とは言えないし、いつ壊れてもおかしくない雰囲気を放っている。それでも、俺は足腰の痛みに耐えられず、倒れ込むようにそこに座った。


 辺りには誰もおらず、水の中にはくすんだ色の鯉がいるのみである。彼らは何も尋ねてはこなかった。生け簀を覗いても水の循環のために波紋が広がっており、俺の顔が明瞭に映ることはない。つまり、この空間は完全に俺一人のものだった。


 ここを出ればきっと、また決断を迫るやつらに追われることになる。もしかしたら静かに一人でいられる場所は、この世界にはもうここしか残されていないのかもしれない。なぜこうなってしまったんだろうか。何がおかしくて、今に至るんだろうか。ううむ、わからない。


 次にこの空間から出る時は、決断をした時だ。そうやって心に決めつつも、結局は明確な締め切りがないのでなかなかに答えを出せない。わからない。何もわからない。駄目だ、わからない。


 俺は両の手で顔を覆い、視界を塞いだ。何も見えない。耳には水の音だけが入ってきて、その他の情報は何もその暗闇の中には存在しない。何もかもに対して背中を向けてしまうのは、とても心地のいいことだった。そうだ、このままここにいればいいんだ。そうすれば、誰にも責め立てられることもなく、なんの責任を負うこともなく生きていられる。うん、そうしよう。


 突然、穏やかな水の音を切り裂くように、大きな何かが水に入るような音が聞こえた。暗闇の平穏が、大きく広がる波紋によって乱された。


 秩序の乱れに驚いて目を開くと、そこには大きな錦鯉が顔を出していた。大きいなんてもんじゃない。大型犬並みのサイズなのだ。その口元の髭は長く、まるで老人のようだった。しばらく見つめ合っていると、錦鯉は水中へと帰っていった。


 そういえば、釣り堀には蛹の中で来たことがあった。だが、あの時は屋根のないタイプの釣り堀だったし、隣には邸宅の老人がいた。それに、タバコも蒸していた。


 あの時の、別れ際の老人の顔が思い出される。今彼は、どうしているんだろうか。いまだに秩序を重んじているのだろうか。彼は最後に、困ったら目を瞑るように言っていた。それも、逃げるためじゃない。そうだ、目は逃げるために瞑るのではない。対話するために瞑るものなのだ。


 俺はもう一度、目を瞑った。考えろ、考えろ、自分。「わからない」なんて言葉で何もかも切り捨てちゃ駄目だ。これは俺の問題で、俺の選ばなければならない道だ。それがどんな結果に転ぼうとしても、俺の責任なのだ。だって、俺の人生なのだから。


 じゃあ、具体的には俺はどうしたいのだろうか。とにかくこの世界にいたくはない。たとえ友達がいても、気になる子がいても、自分を必要としてくれる人がいても、それは偽物なんだ。それに、ずっと春の夕暮れに閉じ込められる人生なんて、あまりにも味気ないじゃないか。でも、夢を切り捨てる道も嫌だ。やっぱり人生ってものは、夢がなきゃ駄目だと思う。夢があるから怠けたり、挫折したりすることもある。それでも夢は人を前向きにさせてくれる。未来に希望を見出せるからこそ、今日を頑張って生きられるんだ。


 やっぱり煮詰まらない。一方の自分が説得力のあることを言うと、もう一方の自分も対抗しようとする。脳内でそんなやりとりがなされているようだった。わがままな自分が憎い。いつまでも答えは出ない。


 違う、違う、違う。なぜ俺は、選択肢を二つに絞っているんだ。たしかに夢泥棒に与えられた選択肢は二つだったけど、そんなものに則る必要はないじゃないか。ここは俺の世界だ。夢泥棒の世界でも、夢の住民たちの世界でもない。俺のものなんだ。誰かのルールに合わせる必要なんてない。俺は、俺の作った選択肢を歩む。そうだ、俺は夢に対して白黒つけない。逃避じゃない。それが俺の道だ。


 じゃあ、そのためにはどこに向かうべきなんだ。思い出せ、どこかに答えがあるはずだ。俺の中のどこかに、俺の選択を可能にさせてくれるものがあるはずだ。考えを巡らしている間、暗闇の中のより深層に入り込むような没入感があった。自分の中に浸っている。自分を客観的に見つめ直している。その時突然、黒一色の世界の中に小さな四角い小さな光が現れた。


 そうだ、あの場所に出口がある。この世界から抜け出しながらも、夢を失わない道がある。俺はその場所に行くべく、パイプ椅子から立ち上がった。


 「じゃあな」


 俺は錦鯉の背にそう言って、釣り堀を出た。


 往来に出ると、生ぬるい空気と赤い空が俺を陰鬱な気分にさせた。それに加えて、俺の顔をした老婆がこちらに向かって歩いてくる。


 「お前は誰だ?」


 俺の顔は、表情一つ変えずにそう尋ねてきた。


 「俺は俺だよ。他の誰でもない、俺なんだ」


 老婆の表情は変わらなかった。だが、それ以上老婆が追ってくることはなかった。


✳︎✳︎✳︎


 目的地に向かう道中、より異様な光景がそこには広がっていた。広い住宅街の道の隅に、美味しそうな料理が等間隔に置かれているのである。ラーメンや寿司、それに焼き鳥や天ぷら。外国人が好きな日本食ランキング載っていそうな、安直に多くの人間が好む料理が並んでいる。バイキングや屋台のような雰囲気を放ちつつも、地べたに料理があるから奇怪だ。


 極限に達しつつある空腹、鼻腔をくすぐる料理たちの匂い。馬鹿馬鹿しいトラップなのに、真っ直ぐ歩くことすら困難になっている。これを食べたらどうなるかはわからない。だが、これを食べたらギリシャ神話のペルセポネのようにこの世界から抜け出せなくなる気がする。本能が、俺に警報を発していた。


 噴水のように湧き出る唾液を飲み込んで前に進むと、今度は曲がり角がやってきた。


 「きゃっ」


 気がつくと、先を急ぐ女子高生とぶつかってしまっていた。なんて陳腐なアイデアだろう。そう思いつつも、俺は彼女の顔を見てしまった。丸い顔に、甘く丸い目元。小さな鼻に、薄い唇。タイプだ。その一言に限る。おそらく一生出会うことができないほどその顔は俺の好みど真ん中なのだ。彼女は転けて、今もまだ尻餅をついている。手を差し伸べたい。謝罪を皮切りに会話を始めたい。不覚にもそんな欲求が湧き上がってきたが、俺は全てを断ち切って、彼女を無視した。


 「ねえちょっと」


 背後から彼女は言った。悔しきかな、声も好きだ。だが俺は拳を握りしめて、歩き続けた。


 「ねえねえ、ちょっと遊んでいかない?」


 今度は年上と思われる女性に話しかけられた。クールな目元に、筋の通った鼻。口紅の映える口元。これはこれで好みだ。遊んでいくとはなんだ。遊ぶとは、一体全体どこで何をして遊ぶんだろうか。興味深い。とても気になる。だけど俺は、一言も発さずに彼女の横を通過した。その後も多種多様な女性が現れて、陳腐ながら魅力的なシチュエーションを演じた。だが、俺は前に進み続けた。


 食の魅惑を乗り越え、異性の誘惑を跳ね除けた。その後も睡眠、金銭、ゲームに漫画。人間の欲求をくすぐるものはなんでもアスファルトの道の上に現れた。それでも俺は歩き続けた。全ては自分の意思を通すために。


 できるだけ足元だけを見つめて歩いていると、いつの間にか俺は屋内にいた。くすんだタイル張りの床に、積み上げられた段ボールたち。ここはドリームセンター前の廊下だ。見慣れた光景なのだが、等間隔に配置された磨りガラスの窓からは赤い空がぼんやりと見えて、新鮮な不気味さをその廊下に与えていた。前に進まなければならない。その信念に突き動かされて、俺はドリームセンターの方へと向かった。廊下を渡って、重いドアをゆっくりと開ける。その行為にここまでの緊張を覚えたのは、初めてここに来た時以来だった。


 ドアを開けると、予想に反して誰もいなかった。てっきり、ここには万里小路がいて、新たな誘惑を俺に仕掛けようとするのかと思った。その時は相手を刺してでも前に進もうと考えていたので、少し安心である。そんな安堵も束の間、俺は新たな緊張を覚えた。所長室のドアが開いているのである。


 なるほど、夢側の本当の回し者は万里小路ではなかったようだ。俺は以前と違って漢方に擬態したコーヒーは淹れずに、その部屋へと足を踏み入れた。


 「待ってたよ」


 本棚に、大きな机。それと窓の奥のイラスト。以前に見たそのままの姿で、部屋は存在していた。その持ち主も部屋同様に以前と同じように窓側に向かって座り、大きな椅子の背もたれに姿を隠している。


 「君は夢に残らないらしいね。残念だ」


 そう言いながら所長は椅子を回転させて、振り返った。ついにその顔が露わになり、俺は開いた口を塞ぐのを忘れてしまった。


 そこには、俺がいたのだ。しかも、そこらで見かけるお面や合成を思わせる俺の顔をした人々ではない。そのスウェットパーカーを着た体も、微かに笑った表情も俺のものなのだ。


 「ここは君の理想の世界なんだよ。だから君が嫌いなものは極力排除されてるし、望んだものはドラマチックに手に入れられる。そのためにこれまで、頑張って君に適した世界を作ってきた。適度に課題を与えつつ、それを乗り越える手立てを与えてきた。なんだかゲームみたいで、素敵な人生じゃなかった?」


 「まあ、それなりに」


 自分の顔から穏やかな話し声が聞こえるのは、なんだか不思議な気分だった。


 「しかも、夢泥棒にも対処した。あいつがどんどん人から夢を奪うからさ、最初は参ったよ。でも、それが逆に君に居場所を与えるチャンスになったんだな。すごいでしょ?」


 「そうですね」


 「うん」


 所長は穏やかに笑った。


 「それでも君は、あいつのもとに向かうの? あいつは夢を捨てるほどの魅力を持ってる?」


 「いや、違うんです。俺はあいつのところにはいかない」


 「ふうん、そうか。なんだか面白そう。だけど、結局のところ君はここから出て行っちゃうんでしょ? そんなの、寂しいよ」


 「仕方ないんです」


 所長は宙を見つめて、しばらくの間何かを思案しているようだった。


 「君のここでの生活は、本当に全てがおかしかった? 全部が嘘だった?」


 今度は俺が黙り込む。だが、逃げるわけにはいかない。俺はぽつりぽつりと、浮かんでくる言葉を掬い上げながら声に出した。


 「たしかに楽しいこともあったし、色々真剣に考えさせられた。ここへの名残惜しさだってある。だけどさ、俺はずっとぬるま湯に浸かっているわけにはいかないんだ」


 「ぬるま湯?」


 「そう、ぬるま湯」


 「素敵な表現だ」


 所長は笑った。あまりにも優しい笑みが浮かぶものだから、俺は自分の顔の可能性に驚いた。


 「でも、ごめんね」


 「え?」


 所長の顔は、突然お面のように硬直した。


 「俺たちは、君が欲しいんだ」


 所長が指を鳴らすとともに、所長室に数名のスーツを着た男たちが入ってきた。その顔には、縁日で売っているようなヒーローのお面を被っている。大の大人がそんなものを真剣につけて、堅苦しく立っているのだから珍妙だ。だが、そんなことに笑っている暇もない。男たちは俺を囲もうとしている。


 唯一の逃げ道である部屋の出入り口はとっくのとうに塞がれており、大きな窓から飛び出せば、スタイリッシュではあるが無傷では済まされない。考えろ、逃げ道は必ずあるはずだ。六人のそれぞれ別のヒーローの顔を借りた、男たちがにじり寄ってくる。


 そうだ、ここは俺の夢の世界なのだ。事態は俺がどうにだってできるんだ。どこでもいいから思い出せ。そして場面を転換させるんだ。


 俺は目を精一杯瞑って、どこかの場所を思い浮かべた。


✳︎✳︎✳︎


 何か体が軽くなる感覚を契機に、俺は目を開いた。そこは学校であった。廊下の窓から覗く空は、もちろんまだ赤い。だが、男たちはいなくなっていた。


 安心を一瞬で覆すかのように、角から例の男たちが走ってきた。俺も動揺を無理にでも押し込んで、走り出す。だが階段を降りようとした瞬間、下の階から男たちは現れた。どうやら二手に分かれていたようだ。前も後ろも塞がれている。まずい。俺はもう一度、目を閉じた。


 インクの独特な匂いがして目を開くと、飯田書店にいた。今度は安心する暇すら与えずに、男たちが数メートル先に現れた。手当たり次第に本をばら撒きながら、俺は雑誌コーナー、漫画コーナー、小説コーナーを走った。だが、最後には角の参考書コーナーに追い込まれて目を閉じた。


 醤油と出汁の香りが鼻に広がって目を開くと、そこはルーメソ屋であった。どうやらまた内装を変えたらしく、ファミレスのようなソファ席ができている。そんなことに意識を向けていると、男たちは外の小さな駐輪場に現れて、店内へと入ってきた。俺は厨房に逃げ込み、寸胴やお玉を投げつけた。流石に中華包丁は投げつけられず、追い込まれた末に俺は目を瞑った。


 前髪を生暖かい風に撫でられる感覚がして、俺は目を開いた。そこは、土手沿いの道であった。赤い空に、白い夕日が浮かぶ異様な河川敷である。こんなに赤かったら、山田くんも自由に空を飛べなかろうに。


 そんなことを考えていると、男たちが目の前に現れた。六人の男たちは半円状に広がり、俺を土手の傾斜に追い込む。このままでは転げ落ちることになってしまう。すぐに体制を切り替えて滑れば、河川敷まで無傷で降りられるだろうか。そう考えて、俺は足元を確認した。


 「え?」


 眼下には、荒れた海が広がっていた。水面は遥か下にある。要するに、俺は崖の端に追い込まれているのだ。それも、ただの崖ではなく、サスペンスドラマのクライマックスで映るような断崖絶壁である。目の前にはお面を被った男たちが迫ってきている。


 俺は目を瞑り、新たに転移する場所を思い浮かべようとした。


 「無駄だよ」


 目を開くと、男たちの肩の隙間から知っている顔が覗いていた。俺の顔に、パーカー。所長である。


 「夢の主導権は夢を信じる者に握られるんだ。ちょっと油断しちゃったけど、もう渡さないよ」


 男たちが迫ってくる。もう、後退りできる足場も残されていない。どこへも瞬間移動することができない。どうする、どうする。


 土手沿いの道に、大きな空。どうしてもこの光景を見ると、山田くんを思い出す。そうだ、まだ手は残されている。


 「じゃあ、賭けようぜ。俺とお前、どっちの夢が強いか」


 精一杯の見栄を切ってそう言うと、俺は思い切って崖から落ちた。こちらを掴もうとしてきた手が、目の前で空を掻くのが見えた。


 信じろ、信じろ。俺は飛べる。俺は飛べるんだ。俺は崖から落ちながら、自分自身に言い聞かせた。自分で飛べないなんて決めつけちゃ駄目だ。人に言われたことを鵜呑みにして飛ばないことを選んではいけない。自分自身を信じ続ければ、きっと空だって飛べる。


 そうだろう? 山田くん。


 あまりにも水に落ちないので目を開いてみると、俺は水面の数メートル上に立っていた。立っていると言っても、何かに足を着けている実感はない。飛んでいる。そう、飛んでいるんだ。やっぱり飛べるんだ。


 俺は目一杯空気を蹴って、崖の上まで飛び上がった。すぐさま、驚いた所長の顔が目に映った。自分の顔ながらなかなかに間抜けな仕上がりである。慣れない浮遊感と開放感からひとしきり笑いながらやつらを見下して、それが飽きると俺は目的地へと向かった。


 どこに行っても、何をしても、空には障害物がなかった。もちろん重力なんて概念は全く存在しない。俺を押さえつけるものは何一つない。飛んでいるんだ。そう思うとまた笑みが溢れて、口の中に冷たい風が飛び込んできた。追い風が全身を包み込む感覚ばかりが体に伝わり、まるで全世界が俺を肯定してくれているようだった。


 そんな自由さに笑みを浮かべながら、俺は目的地まで直進した。


✳︎✳︎✳︎


 通行人の目を避けながら、住宅街に降り立った。目的地まではあと少しだ。そんなことを考えながらも歩き慣れた道を進むと、俺は新たな怪異に遭遇した。知っているはずの道を通っているのに、どうしても目的地に着かないのだ。まるで狐に化かされたように、数分前に通った場所に戻ってきてしまう。かれこれ同じ電柱の横を六回ほど通っただろうか。目的地はもうそこにあって、場所によっては見えてさえいる。なのに、辿り着けない。真っ直ぐ進んでいるはずなのに、世界に歪みが生じて前進させることを阻害する。


 そんなじれったい道に苛立ちを覚え、俺は走った。何度目的地に近づいても、角を曲がるたびに元いた場所に連れ戻されてしまった。体力に限界を感じて、その場で止まって膝に手をついた。息が乱れ、喉が痛む。このまま走り続けても、同じことを繰り返すだけだ。かと言って、ここまで来たら逃げるわけにもいかない。どうするんだ、自分。落ち着きをなくした心臓の上に手を当てて、その興奮を宥めながらも心に問いかけた。


 「ねえ、ねえってば」


 視界の左から声が聞こえて横を見ると、そこには三谷文乃がいた。不思議とその顔は、俺のものではない。いや、だからといって信用ならない。そう考えて、俺は彼女のいる路地から距離を置いた。


 「来て」


 彼女の言葉にどう対応すればいいかわからなくて、俺はその場に立ち尽くすことしかできなかった。


 「私も怖い?」


 そう尋ねてくる彼女の瞳は夕日を強く反射しながら、こちらを真っ直ぐに見つめていた。


 「そんなんじゃない」


 「わかってる、わかってるの。私が陽介の目にどう映ってて、本当は私がどうしなきゃいけないのかもわかってるつもり。だけど、心がわかってくれないみたい」


 彼女の声は震えていた。


 「馬鹿みたいだし信じてもらえないだろうけど、私は今、陽介の力になりたいと思ってるの。私先に行くから、もし信じてくれるなら来て」


 その言葉を残して、文乃は路地の奥へと行ってしまった。このまま別の場所を行けば、もうこの路地に遭遇することはないだろう。悩んだ末に、俺は小道に入った。


 伸び伸びと育った雑草とゴミ箱を避けながら、俺は三谷文乃の後を追った。


 「待って」


 小さな背中に、俺は声をかけた。


 「何?」


 振り返りもせずに、彼女は言った。


 「ごめん、なんでもない」


 「そう」


 なんだかそっけない彼女の態度に気圧されてしまった。


 その後、しばらく無言のまま歩き続けた。


 彼女は夢側の人間なのに、危険を冒してでも俺に新たな道を示してくれている。夢の中の登場人物でしかないのに、自分の意思で俺を助けようとしている。そう考えると、俺はどう彼女に声をかければいいのか尚更わからなくなってしまった。


 「ここ、出たら家だから」


 大通りへの出口を指して、彼女は言った。俯いているため、その表情は見えない。


 「ありがとう、助かった」


 どうすればいいのかわからなくて、俺はその言葉だけ残して出口に向かおうとした。


 「ねえ」


 彼女の細い指先が、俺のワイシャツの袖を掴んでいた。


 「本当に行っちゃうの?」


 「うん」


 静かな時間がしばらく流れた。日陰特有の湿った涼しさが、沈黙をより寂しいものに感じさせる。


 「嫌だ、私は陽介に行かないで欲しい。だって、そっちの世界の私は陽介と話もしないんでしょ?」


 彼女の声がまた震えた。どうすればいいのかわからなくて、俺は彼女の手を握ってあげることしかできなかった。細く白い指には幼い時の面影が微かに残されている気がする。


 「それでも駄目なんだ。行かなきゃいけないんだ」


 「なんで? なんで苦しい道に進むの?」


 手を振り解いて声を荒げる彼女の体に、俺は手を回した。彼女は静かになって、俺の胸に顔を埋める。そうだ、もっと早くこうしてあげるべきだったんだ。俺は彼女に拒絶されるのを怖がって、自分の気持ちも彼女の気持ちも蔑ろにしてしまっていたんだ。


 「苦しくたって、向かい合わなきゃ。楽しいばっかりじゃ、みんなに置いていかれちゃうから」


 胸元に熱いものが伝わってきた。彼女は嗚咽を漏らしながら、俺のシャツを力一杯握りしめている。


 「でも、ここで手に入れたものは全部なくなっちゃう」


 「そんなことない。文乃のおかげで、俺は勇気を持てた。ありがとう」


 彼女のシャツを握る手に、より力が加わった。


 「向こうに帰っても、私のこと忘れないでいてくれる?」


 「忘れないよ。絶対に」


 「約束」


 「うん、約束」


 昔のように、俺は指切りげんまんをした。小指が絡み合う懐かしい感覚が蘇る。


 「じゃあ、行くよ」


 彼女が落ち着いたのを確認して、俺は路地から出る決意をした。大通りに出ると、どうしても振り返ることができなかった。どうしても、もう彼女の顔が見られなかった。


✳︎✳︎✳︎


 目的地である自宅に入り、薄暗い廊下の電気をつけた。そして、俺は廊下を進んでリビングに入った。もうすぐで目的地に辿り着く。そんなことを考えながらリビングの電気をつけると、ダイニングテーブルの椅子に俺が座っていた。今度は夢泥棒の方である。


 「結局夢から逃げて、やっぱり理性が大事なんじゃないか。それならそうと早く言えばいいのに」


 余裕綽々な様子で脚を組み、彼は微笑を浮かべた。黄色い電気の光が、そんな彼の顔に影を作る。


 「違う。俺はお前を選んだわけじゃない」


 「は?」


 夢泥棒は顔をしかめ、組んでいた脚を解いた。


 「だから、邪魔しないでくれよな」


 「お前、自分が何を言っているかわかってんのか?」


 彼は立ち上がって、俺に迫ってきた。へえ、こんなところに黒子があるんだ。客観的に自分の顔を見て、そんな感想が浮かんだ。


 「白黒つけないままでいいと思ってるのか? 寝てもなく、目覚めてもいない曖昧な状態が許されると思ってるのか?」


 熱心な声で、夢泥棒はそう問いかけてくる。でも、決めてしまったものは仕方ない。一度決めてしまったものを、たかだか自分の心の一環に問い直されて変えるほど俺の意思は軟弱ではない。


 「いいよ、曖昧なままで。いや、曖昧なままがいいんだよ。白か黒かじゃなくて、グレーがいいんだよ」


 「何言ってんだ、お前はそれでいつも人生に失敗してきたんだ。そうやってどっちつかずな日和見遊山ばっかしてるから、大切なものを失っていくんだ」


 声を荒げる夢泥棒の肩に、俺は手を置いた。


 「違う、そんなに人のせいにすんなって」


 俺はやつの目を見つめた。


 「これまで失敗してきたのは、俺たちがみんな自信を持てなかったからなんだよ」


 「は?」


 「ごめんな、俺が自信持てないせいで、お前がしっかりしなきゃって思っちゃったんだろ?」


 「何言ってんだよ?」


 夢泥棒の肩が小さく震えた。


 「俺もお前も所長も、みんな自信がなかったんだよ。自分の責任は誰かが負ってくれるものでもないし、俺やお前の誰か一人のものでもない。俺の中にいるみんなで背負わなきゃならないんだ」


 俺の言葉に、やつは何も反論を示さない。


 「だから、喧嘩はやめよう。みんなで頑張って自信持って、生きていこう。理性も夢も、一人で背負い込む必要はない。曖昧な微睡の中で、俺たちは生きていこう」


 呆然とする夢泥棒に、もうこれ以上かけてやる言葉は残っていなかった。さあ、やっと目的地に着く時間である。


 「おい、どこ行くんだよ」


 夢泥棒が歩き出す俺に尋ねてきた。もはやその風采に、連続通り魔の迫力は残されていない。


 「そんなの、お前自身がよく知ってる場所だよ」


 俺は最後にまた、やつの顔を見た。自分の顔ながら、悔しがる表情もまた見ものである。


 「たまにはお前の話も聞いてやるよ」


 俺の言葉に、夢泥棒は反応を示さなかった。そして、俺は歩みを進めてリビングの奥にある仏間へと足を踏み入れた。


 幼い頃、押し入れの向こうには別世界があると漠然と思っていた。そう、もっと楽しい世界が向こうには広がっていると思っていた。でも、実際はちょっと違うみたいだ。押し入れの向こうには、とても辛くて、いつも忙しくて、何をするにも大変な世界が広がっている。それでも、俺は向こうに行かなければいけない。だって、そうじゃないといつまでも成長できないし、たまに訪れる幸せにも出会えないから。


 この先、この決断を後悔する時が来るのだろうか。それとも、こんな濃厚な数ヶ月間も、いつかは風化して忘却の彼方へと飛び去ってしまうのだろうか。本当は白黒つけるべきなのか、いまだに心の奥底では悩んでいた。自分一人で決めた意思は果たして正しいのか不安だった。


 俺は一度、大きく深呼吸をした。鼻の中に畳とお線香の匂いが充満する。どうして夢の中なのに、こうも生活感のあふれる匂いがするんだろう。


 まあ、いいか。


 そう思って、俺は襖を開けた。

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