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雑貨店主の好きなもの  作者: 更科


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3/3

雑貨店主はお揃いがお好き

「あ、これかわいいですね」


 令嬢といえど年頃の乙女である。

 少し弾んだ声で隣で同じように目ぼしい商品を探しているお友達に声をかけている。

 丁寧に編み込まれた髪や、その所作や声色から言って身分の高い女の子達のようだ。お忍びで来ているのか、外で従者が待っているのかはわからないが、楽しそうに店の中を見て回っている。

 美しい宝石とは違う幼女心をくすぐるようなアイテムも、多数取り扱っている当店はお小遣いの範囲で気軽に手に入るものも多い。

 いいところのお嬢様となればこの店にあるものは大体は手が届くだろう。


「ペン? このでかでかとしたいかにも宝石ですからね! と主張しているのがガラスなのがいいわね」


 連れの女の子が手に取ったペンには黄緑色のガラスが宝石のようにカットされて付いている。


「昔はこういうでかでかとした宝石が好きだったのよね」

 

 懐かしそうに言っている。

 

「私も私も。時にこういう乙女チックなピンクの宝石とか、神秘的な紫色の宝石に憧れたもんだわ」


「そうよね? 最近ピンクってなんだか子供っぽいって思われたら嫌だなぁって思って選ばなかったんだけどやっぱりかわいいわよね?」


 顔立ちが大人っぽい女の子は年齢を重ねるにつれピンク色を忌避する事が多い。自身の雰囲気に似合ったものをと思えば必然大人っぽい配色になり、子供っぽいイメージの定着しているピンクの宝石やドレスには縁が遠くなるのだ。


パーティなどのドレスに合わせる物の場合はほかの人間からのプレゼントである場合や、親の見立ての要素が強く入ってくる。


その点、今2人が見ているような文具の場合は彼女たちの好きなものを使うことを許容されていることが多いのだ。とはいえ、かなり位の高い人間は使うものまで一流であれ、と一点もなの高いものを使っている場合もある。


あれもかわいいこれも可愛いとさまざまな物に目移りしながら、きゃっきゃと戯れているのを微笑ましく思う。


えへへと少しハニカミながら、揃いの《デッカ宝石ペン》を買っていく女の子二人の姿に、店主はにこにこしながらありがとうございました、と声をかける。


その後すぐにあの二人の同じものってありますか?と聞いてきた1人の女の子がいた。


明らかにこの店のものには興味がないといいたげな雰囲気を出している。金銭的な計りでしかものごとを推し量れない人種はどこにでもいる。

店主は、それをすぐさま見抜く。だてに王都で店を構えていない。さまざまな人間を見てきた観察眼を舐めてもらっては困る。


ある、ほんとは在庫が山程倉庫にある。


「ぁぁ、あの商品はちょうどあれで品切れなんですよ」

が、ないと答えた。


「あれに似たものだったら、ありそうなんですが、見て行かれますか?」


商品棚に案内しようとした店主に、女の子はすぐさま否を返した。


「あれと同じじゃないなら意味がないのよ」


その少女の言葉に不穏なものを感じた店主は、一年ほど同じ商品は倉庫で眠らせておくことにした。


事件は未然に防ぐものなのだ。


この店のものを犯罪に使われでもしたら目も当てられない。



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