プロローグ
「え、俺?」
ミドルスクールの卒業後、家族旅行で俺の住んでいるプレラリア王国から神聖ルシア市国に行き、そこで行われている勇者祭典に来ていた。
そこで、銅像で立っていたのが前世の俺ことリゲルであった。驚いたというよりはなんとなく納得した感じだった。言うなればずっとハマらなかったパズルのピースが綺麗にハマったような感じだ。
「うそおおおおおおお」
そう、俺が叫びたいのには理由がある。勇者リゲルは小学生でも習う有名であり通称“慈愛の勇者”とも呼ばれている。勇者が少なかったのならば問題はないが歴代の勇者は65人。その中でも有名なのが10人。そのうちの一人が前世の俺という訳である。
「とうとう頭でもおかしくなったか?」
「うるせえよ」
辛口を言うのは俺の双子の妹レーヴェンである。こいつは俺が親を殺したのかってくらいズバズバと物事を言う。顔は可愛いのに。
「折角の勇者祭典だ。お前が行きたいと言ったから卒業旅行で行くことになったんだぞ。お前が沈んでどうする」
レーヴェンの言葉に俺は何も言い返せない。俺は勇者を学ぶ“勇者史”と呼ばれる教科が大好きで5年に1回しか行われない勇者祭典に何日もかけて足を運ぶほどだ。
養成学校に落ちたならばハイスクールに行った後カレッジで勇者史を専門に学ぼうと思っていたほどだ。
リゲルは特に好きで彼の仲間が書いた自伝“勇者リゲルの冒険”を小遣いを叩いて買ったほどだ。なのに、どうして今思い出してしまったのだ! おかげで事実と書いてあることが違ったら鼻で笑ってしまうではないか!……まあ事実とは殆ど違うんだが。
「早く行くぞ、入れる人数は決まってるんだ。遅れて入れなくてもビービー泣いても知らんからな」
「……」