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幕末京都の御伽噺  作者: 鏑木桃音
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獣腹


今朝方、登城前の出来事である。

清子が支度が整ったと父のところに行くと、父はひどく驚ろいた顔をした。

清子は泰清の直衣を着て立っていた。

いろいろ思案した結果、こうなったのだが、言葉を失う父上に何か申し上げねばなるまい、

「泰清にそっくりでございましょう?

お父上さんは、泰清がここにおりましたら、私ではなく泰清をお連れになったはずです。

心外ですが、同じ(まつりごと)の占いをするにしても、女がしたとなれば結果が軽く見られてしまいますから。

私の占が当たって泰清の名が知られるようになりましたら、実は、あれは清子であったと仰ってくださいませ。さすれば、私も食うに困りませぬ。」

清子はあえて気丈に言ってみせた。


父は大きなため息をついて、

「まったく、また訳の分からぬことを。

もう時間がない。

やむを得ないのでそのままで参るが、これだけは言わせておくれ。

泰清が今ここにおったとしても、お前も共に連れて行く。我ら狐の末裔ゆえ、何をためらうことがあろうか。」


女のうえに双子。

世間では、双子は獣腹(けものばら)と蔑まれる。清子は、二重に卑しい自分が表に出てはいけないと思い泰清の直衣を着たが、父は清子の考えなどお見通しで、安倍晴明は狐の子なのだから、清子は清子で堂々としていればいいのだよと言ってくれたのである。

父の優しさに感謝しながら、清子は迎え駕籠の一つに乗り込んだ。


以上のような事情で、お父上さんは、今この様に、大樹様の前で冷や汗をかく羽目になったているのでした。





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