表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幕末京都の御伽噺  作者: 鏑木桃音
52/154

番外編 ~飲まなきゃやっていられない。

急遽、三郎の心のケア編。


びしょ濡れの衣服を交換しに役宅に戻る。役宅は奉行所の隣だ。

奉行所の勤務時間は一応午後二時までだから、着替えて奉行所に戻れば今日はもう終わりなはずだ。

奉行所に戻ると番方の与力頭が、

「組頭が慰労金をくださったから、みんなで飲みに行くか。」と誘った。

三郎は内心溜息をつく。今はそんな気分じゃない。

職員の飲み会は、いつ奉行所から呼び出しがかかってもいいように一杯しか飲まない。それで飲みに行くって言う?

近所の料亭で同僚と親睦を深めるための仕事である。そして一番下っ端が職場の飲み会でどう振舞うべきかを考えれば、溜息がでても仕方ないだろう。

今日のはそんな慎ましやかな飲食で慰められるような心労ではない。三郎が知っている、気持ち良く酒を飲む集団と言えば・・・

「今日は新選組の屯所に稽古に行く約束が・・・」と三郎は遠慮がちに頭の様子を窺ってみる。

新選組は、その上層部に気に入られた三郎にとっては、決して嫌な所ではない。同じ方向を向いているけど部外者という絶妙な距離感が三郎を屯所に向かわせる。

奉行所にとって、市中警邏のお役目を仰せつかった新選組と上手く付き合うことは有益だ。だからこの名前をだせば駄目とは言わないと踏んでいる。近くにいい口実ができたものだ。

「こんな時まで壬生狼と稽古なんて感心だなぁ。行っておいで。」と頭。

「ありがとうございます。」三郎は心の中で舌を出す。約束などはしていない。屯所にはいつでも出入り自由なのだ。

それから公事方の与力部屋へ小走りで行って、

「お義父上、これから新選組の屯所に稽古に行ってきます!」と断りを入れる。

義父の承諾もそこそこに、いそいそと退散する。ここで長居をするのは危険だ。義父はいらない仕事をすぐに振ってくる。

義父等他の与力たちの話し声を背中で聞く。

「いい養子をもらいましたね。真面目だし、物覚えもいいし。」

「それほどでもないですよ。」義父がまんざらでもなさそうに答えている。


壬生屯所の長屋門内の稽古場

「三郎、気合が足りない!剣術は一に気組み、二に気組みだ!」と近藤先生。

「はい!」

三郎はとってもいい汗をかいたのでした。


稽古後

「三郎さん、一杯どうですか?」と山南さん

「山南様、お体の具合はいいんですか?」と三郎。

「酒は問題ないでしょ。百薬の長なんだから。」山南さんは、大阪の呉服屋で強請たかりを働いていた浪士を撃退し、重傷を負ってしまった。

「わぁ、僕も行きたい!」と沖田さん。

山南さんや沖田さんと飲む酒は楽しい。気前はいいし、格好いい武勇伝は聞けるし、辛気臭くないし、説教くさくないし。あれ?誰に対する不満?番方の頭や義父には内緒だ。


三郎は島原の角屋に連れて行ってもらい、楽しい一時を過ごしたのでした。

・・・角屋は揚屋です。

そして三郎の酒気を帯びた脳が言っている。心の傷にも体の傷にも効くなんて、酒って万能!(注意:どちらにも効きません。)


その夜の清子

「今日は、お師匠さんはどうしたのかしら。」

うんともすんとも言わない真っ暗な鏡に向かってつぶやく。


鏡はちゃんと肌身離さずお師匠さんの懐中にありますが、お師匠さんが今どうなっているかは知りません。


三郎の話は清子との会話で閉めることにしていたのですが、どうにも前話はそんな雰囲気ではない。

急ごしらえで軽い雰囲気の話を一話投下します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ