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幕末京都の御伽噺  作者: 鏑木桃音
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君に会いたい

陰陽師から託宣を受けたかたちの三郎たちは、どうやって悪い運命を好転させるのでしょうか。


千成屋は、正確には、鴨川にかかる松原橋を東に渡ってすぐのところにある。松原橋は五条大橋の川上、隣橋だ。


三郎が店主に寺での出来事を話すと、三郎たちが受けたお告げは、天誅被害の警告だということになった。それから松原通りの両側町の商人の間で話し合いが行われ、結果、月に一度両側町で生活困窮者向けの炊き出しを行うことに決定された。京の町では天誅騒ぎはありふれた日常になっている。

昨年の閏8月22日、鴨川のそこの河原に公家の九条家ご家臣(宇郷重国)の首がさらされた事件は、町の皆に鮮烈に記憶されている。三郎は、その日もいつものように朝の新鮮な空気を吸おうとして、なにげなく店の前の土手に出て、川を見下ろした。河原には見慣れない棒が刺さっていた。棒には何かがぶら下がっていて、それが梟首(きゅうしゅ)であった。


 商人に対する天誅は、おおまかに二種類ある。

 まずは輸入品を売っている商人が排外主義の志士に狙われる場合、もう一つは、高利貸し等不当に暴利を貪っている商人が、庶民の不満を汲んだ志士に罰っせられる場合である。

 誰より恐怖におののいていたのは、通り向かいの両替商の泉屋さんだ。両替商をしながら金貸しもしている。この辺は祇園に近く、程よく人通りも減るので、借金を頼むにはもってこいの場所なのだ。

 千成屋京都支店は輸入品を扱わない。まっとうな商売をしていると自負しているが、ここ数年物価上昇が続いている。ぼったくっていると思われている可能性も無きにしもあらず、他店の天誅騒動に巻き込まれる可能性も無きにしもあらず、である。



 既に2回の炊き出しは盛況で多くの人に喜んでもらっている。浪人風の武士が多くいたのが印象的だ。

 出費は痛いが、商店街に人が集まってくる。中には買い物をしてくれる人もいる。これで町全体の天誅被害を避けられるのであれば悪くない。

 泉屋さんは、人寄せの張り紙すべてに自らの資金提供を大きく宣伝し、善良な商人だと訴えている。必死さが伝わってきて思わず苦笑してしまう。


果たして、三郎の早死にの相は消えただろうか。


三郎は、もう一度あの不思議な子に会いたくて、清水寺に通っている。

お告げのお礼を言いたい。それから、できれば三郎と店の運命が変わったかどうか教えてほしい。やっぱりそれは有料かな。無料だと嬉しい。それは図々しいか。


◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇  


今日も会えなかった。

そろそろ、本拠地に乗り込もうかと三郎は本気で考えている。ここでいう「乗り込む」は「営業をかける」という意味である。目指せ土御門家御用商人!はてさてどうなることやら。




次は、将軍家茂に会いに行きます。さて、誰がどうやって会いに行くでしょうか。

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