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きっかけ

 〜5年前〜  ロゼ=マグナート10歳




「それでは、今日は今までの総復習を行なっていきます。坊ちゃん、準備はよろしいですかな?」


「はい。スカル先生」


 僕は木々に囲まれ木漏れ日が指す場所で、勉強机に座ってスカル先生の授業を受けていた。


 スカル先生は全身ガイコツで、歴史の担当の先生だ。


 ローブのようなものを着ているので体の部分は隠されているけど、頭の部分はドクロの顔そのものなので、小さい頃はよく怖くて泣いていた。

 そのたびにお母さんがスカル先生に仮面をつけるように怒っていたけど、最近は僕が慣れたこともあって仮面を外している。


「まず、人類と魔族の戦争についてからです」


 そこから先はスカル先生のお話が始まった。



 〜〜〜〜〜



 人類と魔族の戦争は根が深い。


 争いが始まったのは約800年前とされている。


 人類は国をいくつか作り、その国一つ一つに対して統治する指導者がいたが、魔族の指導者はただ1人、魔王様だけだった。


 魔王様は完全世襲制で、不思議なことに魔王様は始祖から現在に至るまで女系魔王であった。

 なにより魔王様は配偶者を必要としなかった。

 ある時期になると自分の子供を一人で産み、その子供が新たな魔王になる。

 そうして魔族の指導者は受け継がれてきた。


 人類と魔族の戦力はお互いに拮抗しており、幾度となく衝突が繰り返され、双方が疲れ果てていた。


 そうして800年が経ったある時、人類に救世主が現れる。



 勇者ラプラスである。


 その強さは正に一騎当千。

 多くの魔族に囲まれながらも生き抜き、その返り血に塗れた姿は、魔族にとって恐怖の対象でしかなかった。


 しかし、我らが魔王様におかれても歴代最強と呼ばれるお方だった。



 それが、魔王マイナ様。



 マイナ様は勇者の猛攻を止めるべく、自らが出陣し、そして二人は出会ってしまった。


 お互いの運命の人に…………。



 〜〜〜〜〜〜



「……そして二人は三日三晩戦い続け、誰しもが戦いの終わりを待っていた結果…………!! 二人は突然結婚を発表したわけですな。それがお坊ちゃんのお父様とお母様になります」


「うおおおおおカッコいいいいいい!!!」


 何度聞いてもお父さんとお母さんはスゲー!!


「それで人と魔族は仲良くなったんだよね!!」


「左様です。流石に魔王と勇者が家族になったことが予想外過ぎて、誰しもが拍子抜けされていましたからな。お互いに好きで争っていたわけではなかったですし。まぁ、中には納得のいっていない輩もおりますが…………15年経った今では少数派ですな」


 お父さんとお母さんが、人と魔族を繋いだんだ!

 ケンカなんてしてても良くないもんね!


「先生、先生。お父さんとお母さんは何で結婚したのかな?」


「マイナ様に一度聞いたことがありましたが…………『一目惚れ』、と申しておりましたな。それなら何故三日三晩も戦い続けたのか疑問ではありますが……」


「一目惚れ?」


「要は一目見ただけで相手の事を好きになった、ということです」


「ふーん」


 よくわかんないけど、僕もお父さんとお母さんが好きだし、同じことかな?


「僕もズバーっと剣を振れたり、魔法をドバーッと使えたりする?」


「お坊ちゃんのお父様もお母様も、下手をすれば世界を滅ぼせる力をお持ちですからね。そんな二人の血を受け継いでいるお坊ちゃんなら、きっと出来ますよ」


「やった!」


 最近は剣術のシシマル先生にも褒められるし、すぐにお父さんのようになれるかも!


「ただ、戦うことが全てではありませんからね。特に今の時代は勉強ができなければ大変な目に遭います。ですから、お勉強もしっかり行いましょう」


「はーい」


「お、しっかりやっているようだな」


 僕は後ろを振り返った。

 そこにはお父さんとお母さんが笑顔で立っていた。


「お父さん! お母さん!」


「偉いわよロゼ。ちゃんとお勉強していてお利口さんね」


「これはこれは、ラプラス様にマイナ様。間も無く授業は終わりますゆえ」


「すまないなスカルさん。本来の役割とは別の事をさせてしまって……」


「いえいえ。お二人のご子息に勉強を教えることができるなど、恐悦至極でございます」


 スカル先生がお父さんにお辞儀をした。

 顔の表情は変わってないけど、たぶん声の感じからして笑ってると思う。


 僕はお母さんに今日やったプリントを見せた。


「お母さん、見て見て! いっぱい丸もらった!」


「あら本当ね! これだけ丸ばっかりなんて、私の子は天才かしら!」


「おいおい、俺の子なんだから当然だろう?」


「お二人の子、でございますよ」


 僕はお母さんに褒められて笑顔になった。


「えへへ〜」


「ああ……本当に可愛い! ロゼはどうしてこんなにも可愛いのかしら。大好きよ、ロゼ」


「僕もお母さん大好きだよ!」


「ロ、ロゼ、お父さんは? お父さんも好きか?」


「うん! 大好き!」


「くぅ〜!!」


 お父さんが僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。


 僕は二人の事が大好きだった。


「さぁ! 勉強の後はいっぱいお父さんと遊ぶぞー!」


「やったー!」


「はしゃぎ過ぎちゃダメよー」


 アハハハ……

 ウフフフ……



 ーーーーーーーーーーーーーーー



「と、まぁ俺の記憶魔法で5年前のロゼを録画していたわけだが…………」


「さすがね! アナタ!」


「やめろよおおおおおおおおお!!!」


 何で今それ流すんだよおおおお!

 もういっそ殺せよおおおお!!

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