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言伝

「何はともあれ、これで僕の勝ちだ。お母さんからの言伝を教えてもらおうか」


「勝利方法が変わっていますが…………それ以上のモノを頂けたのでまぁ良しとしましょうか」


 僕だってやりたくてやってるわけじゃないやい。

 でも放っておいたらティムを目の敵にしそうだったし、仕方なしでやったんだい。


「魔王様からの言伝は二つ。一つは私宛で息子、つまりはロゼ様がこちらへ向かわれるということで、ヨロシクやってくれとの内容です」


「やっぱり…………。あれほどやめてよって言ったのに」


「相変わらずロゼのお母さんは過保護だよな」


 過保護過ぎるのも考えものだよ。

 旅の意味がなくなっちゃうじゃないか。


「二つ目がロゼ様宛ですね。『私の愛して止まない可愛い可愛いロゼへ』」


「もう出だしから不安だよ」


「『ここに来るまでに怪我はしてない? ちゃんとご飯は食べてる? 歯磨きはしっかりするのよ』」


「まだ大した距離じゃないから!」


「聞いてるこっちが恥ずかしくなるわね」


 やっぱりロクな内容じゃないよ!

 聞くんじゃなかった!


「『ここから本題になるけど、私から手紙で手引きするのはここまで。ここから先は、ロゼとマルティムちゃんとディバイドくんの三人だけで頑張るのよ。

 魔族の領土内には基本的に私の配下が多くいるけど、そのほとんどはロゼの姿を知らないわ。そこのカイゾウ王国にいる人達はロゼの事を知っていると思うけど、それはカイゾウ王国が魔王城への入り口として私達と多く関わりがあったから。

 だからその国を出てしまえば、一人の旅人として、ロゼの望む冒険が待っているはずよ』」


 お母さん……。

 なんだかんだで、僕のワガママをしっかり聞いてくれているんだ……。

 なんか出発する時に申し訳ないことをしちゃったな。


「『だけど気を付けて。魔族の中には人間をまだ憎んでいる奴らもいる。ロゼも含めて三人は人間として注目を浴びると思うの。誰も彼もが良い人じゃない、それを念頭に置いた上で冒険をしてね。長くなったけど、あなたの無事を心から祈っているわ。マルティムちゃんもディバイドくんも気を付けてね。世界一息子を愛するお母さんより』以上が魔王様からの言伝となります」


「なんか……思ったよりまともだったわね」


「うん……。割としっかりとした話だった」


 もっと狂気染みた内容がつらつらと書いてあるのかとも思ったけど、今後の旅に対する注意って感じだった。

 スカル先生から歴史学を学ぶ中で、敵意がある魔族も未だ多くいるというのは聞いていた。

 所詮は話を聞いていただけで、僕の家に来る人達はみんな良い人ばかりで、敵意というものを向けられたことを僕は一度もない。


 お父さんの知り合いの人達と、お母さんの知り合いの人達が一緒に話しているところも見たことがあるから、スカル先生が大袈裟に話しているだけだと思っていた時期もあった。


 でも違う。


 それまでは魔王と勇者の息子だったからだ。


 お母さんとお父さんに守られていただけだったんだ。


 だからこれから先、僕のことを知らない人達と初めて僕は出会うことになる。


 特別視をしない、敵意を持った人達とも。


「ロゼロゼ、もしかしてブルった?」


 ディバイドがニヤニヤしながら聞いてきた。


「ばっか、そんなわけないじゃん」


「でも肩が震えてるぜ?」


 言われて気付いた。


 少し体が震えている。


 僕の根性無し!

 今更ビビるな!


「こ、これは武者震いってやつさ」


「違うわよね? オシッコを我慢して我慢プレイを楽しんでるのよね?」


「してねーよ!!」


「でしたら私めの口の中に!」


「しねーよ!!」


「ああんっ! 死ねよなんてそんな、貴方様のためならいつでも死ねます!」


 いや無敵すぎない? この人。

 何言っても快楽に変換してくるよ。

 ティムとルーザーさんのタッグとか最悪すぎるんだけど。


「と、に、か、く! 僕達の進むべきスタートはこの国を出てから始まるんだ! そうと決まれば早速出発だ!」


「もう行ってしまわれるのですか?」


 ルーザーさんが手を組んで、祈るようなポーズを取りながら下から見てきた。

 最初に会った時の毅然とした態度はどこへやら。


「僕は変態プレイ学ぶ為に家を出てきたんじゃない。お父さんと同じ、世界を見聞して知識を深めたいんです」


「ちっ…………あの腐れ勇者か」


 こ、こわ〜…………。

 お父さんの話になると毎回戦闘モードになるんだよなこの人……。


「ルーザーさんには申し訳ないけど、僕達はもう行きます」


 ティムとディバイドを交互に見た。

 二人とも僕の目を見て力強く頷いてくれた。


「そうですか……。寂しい気もしますが、魔王様の意思もそこにあるのなら、私が引き止める理由はありませんね」


「ありがとうございます。しばらくしたら戻ってきますので、その時に改めて挨拶しにきます」


「ではその時にまた私めをーーー」


「殴ったりとかはしないけどね!」


「ぐぅぅぅ……!」


 させるか。

 そっちのペースにはさせないぞ。


「じゃあ失礼します」


「………………おい人間2人!!」


 部屋から出ようとした時、ルーザーさんがティムとディバイドを呼び止めた。


「何でしょう?」


 ティムが柔らかく聞いた。


「……ロゼ様を…………頼んだぞ」


 ルーザーさんがまるで嫌いな食べ物を口にしているかのような表情で2人にいった。

 2人は顔を見合わせ、驚きつつも「もちろん!」と自信満々に言い放った。


 本当にいい友達を持ったよ僕は。


 こうして僕達三人はカイゾウ王国を後にしたのだった。

実は父であるラプラスからも言伝の手紙はルーザーに届いています。

だけどルーザーは勇者からだと分かった途端、中身を見ることなく切り刻んで、ペットのヤギ的な魔物に食わせました。


ヒドイ。

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