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7さあ、カージナルへ出発…、出発?

ご飯を食べ終えて、荷物を片付けたら、いよいよカージナルの街へ出発!

と、ここで1つ、問題が起こりました。僕を連れて行くのは自分だって、マシロと団長さんが喧嘩を始めちゃったんだ。


「主は、我が街まで連れて行く!」


「いいや、私が連れて行く!」


 マシロは自分の背中に、僕を乗っけてくれるつもりで、団長さんは自分の馬に、一緒に乗せるつもりだったみたいで、いざ出発、と、なった時に、2人がそれに気づいて、喧嘩になっちゃったんだ。


「主は、我の主だ!我が連れて行くに決まっている!」


「いいや、ユーキはまだ小さいんだ。誰かが支えてやらなければ。それならば、私が一緒に馬に乗るのが1番だろう!」


 なかなか喧嘩が終わらない。そして、


「「主 (ユーキ)は、どちらがいいんだ!」」


 て、同時に僕に聞いて来て、僕、本当に困っちゃった。だって僕、マシロと一緒にいるのも、団長さんと一緒にいるのも、どっちも好きなんだもん。


「ぼく…ぼくは…」


 何か悲しくなって来ちゃった…。みんな仲良くがいいのに…。

 そんな僕と1匹と1人を見て、副団長さんがお話してきました。お話? 副団長さん怒ってます。


「貴方達は、一体何をしているんですか!ユーキ君困って泣きそうじゃないですか!団長!貴方はいい年をして、少しは他の人の気持ちも考えながら、行動してください。ユーキ君のことが可愛いのはわかりますが、泣かせてしまっては本末転倒でしょう!」


 団長さんが怒られているのを見て、マシロがフンっと鼻を鳴らしました。それを見た副団長さんが、今度はマシロを怒り始めたよ。


「マシロ!貴方もですよ!自分の主を泣かせるとは何事ですか!貴方の役目は主人を守ることでしょう。泣かせることではないはずですよ!」


 側にいたリアムさんが、ボソボソっと、


「最強のフェンリルを叱るって、凄いなこいつ…。さすが鬼の副団長様。」


「何か言いましたか…、リアム?」


「い、いや何も!」


 リアムさんは自分の荷物を持つと、さっと自分の馬の方へ行っちゃった。

 リアムさん、副団長さんのこと鬼だって、とっても優しいのにね、おかしいなあ?

 そんなやり取りの最中も、団長さんとマシロの言い合いは、なかなか終わりません。


「だってこいつが、なかなか譲らないから…。」


「そっちが譲ればいいことだろう。もともと我の方が先に、主といたのだぞ…。」


「…そうですか。反省はしないと言う事ですか。ようく分かりました。ええ、それはもう本当に。」


 ん? あれ? 何か、副団長さんの周りが寒く感じる…。気のせいかな?

 不思議に思ってたら突然、団長さんが慌て出して、副団長さんに謝り始めました。


「お、おい待て、俺が悪かった!すまない!」


「何をそんなに慌てているのだ。我はまだ納得は…。」


「いいからお前も謝れ!あいつを本気で怒らせると、大変な事になる!」


 マシロに、謝らせようとする団長さん。どうしたんだろう、あんなに慌てて?


「もう遅いですよ。ユーキ君、2人は君を困らせるだけなので、もう放って置きましょう。それよりも、私と一緒に馬に乗りましょう。馬に乗っている間、街のことをいろいろ、教えてあげましょうね」


「ほんと? やったあー」


 万歳をする僕を抱き上げて、副団長さんはさっさと、自分の馬の方に移動を始めました。


「おい!ズルいぞ!」


「待つのだ!我はまだ…!」


「貴方達には、バツが必要みたいですからね。反省するまで、ユーキ君とは一緒に行動させません。ユーキ君を、この子を困らせるような輩には、近くにいて欲しくありませんからね。近寄らないでください、しっしっ。」


 うん。何か今の副団長さん、怖い…。


「まあでも私も、ユーキ君の気持ちを無視するのは嫌ですからね。ユーキ君、どちらかと一緒に行きたいですか?」


 うーん。僕は副団長さんの肩越しに、2人の事を見つめた。2人も僕の事、じっと見てます。ほんとは2人とも、順番に一緒に行きたいけど、でも、ケンカしてる2人と、行きたくないなあ。だって、楽しくなさそう?だから、


「けんかしゅる、マシロも、だんちょうしゃんも、きらいでしゅ。なかなおりしゅるまで、いっしょ、いやでしゅ。ふくだんちょうしゃん、おはなし、たのしみでしゅ。」


「そんな、ユーキ!」


「主、待つのだ!」


「いやでしゅ!はやくなかなおり、してくらしゃい!」


 僕は副団長さんと一緒に、移動する事にしました。

 2人は僕に嫌いって言われたのが、凄くショックだったみたい。マシロは、あのふわふわモコモコのしっぽを、ショボンと下げちゃって、団長さんも、見てすぐ分かるくらい、ガックリって感じで、下を向いちゃいました。でも、喧嘩した2人が悪いんだからね。


「まったく何をやっているんだか。良いですかユーキ君。もしまた、こんな事があれば、すぐ私に言ってください。私が2人を叱ってあげますよ。ユーキ君を泣かそうとする輩は、私が許しません。」


「ありあと、ごじゃいます。あの、ふくだんちょうしゃん。」


「何ですか?」


「みんな、なかよしがいいでしゅ。ぼく、みんな、だいしゅきでしゅ。」


 僕がそう言ったら、副団長さんが、頭を撫でてくれました。


「そうですね。皆、仲良しが良いですね。さあー、出発しましょうか。くだらない揉め事のせいで、出発が遅れてしまってますから、さっさと出発しましょう。そこの1人と1匹!行きますよ!いつまでもしょぼくれていないで下さい。自業自得なんですから。ああ、それから、団長はその荷物を、マシロはそっちの荷物を運んで下さい。」


「何で私が…。」


「我は上位の魔獣なのに、荷物運びなど…。」


 ぶつぶつ言いながらも、荷物を運び始めるマシロと団長さん。

 僕は副団長さんに支えられながら馬に乗り、今度こそカージナルの街へ出発です。


「しゅっぱーちゅ!」


 ぼくの掛け声と共に、馬はパカパカと歩き始めました。


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[気になる点] 隊長さん 小さい子の硬いパンはせめてスープに入れてあげようよ
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