82寂しい…。でも、いい事思いついたよ!
「ふえ…、ふゆ…、うわあああああん!」
とっても寂しくなっちゃった僕は、泣くの我慢出来ませんでした。
どうして誰も居ないの、皆んな一緒に居るって言ったのに。側に居てくれるお約束なのに。1度泣き出したら、もう止まりません。
「とうしゃああああん、わあああああああん!とうしゃんとこ、いくでしゅう!!」
でもアメリア、僕がお父さんの所行くの、最初ダメって言いました。大切なお仕事の最中だから。僕はもっと泣いちゃいます。泣いて、ガタガタお椅子揺らしてたら、お椅子が倒れそうになっちゃって、落ちそうになっちゃいました。
「ユーキ様!!」
慌ててアメリアが下に僕を下ろします。僕は床の上で丸くなって、大泣きです。
そんな僕を、エシェットが優しく抱っこしてくれました。それからお部屋を出ます。お父さんのお仕事のお部屋に、連れて行ってくれるって。マシロ達も後に付いてきます。ディルとリュカは、僕泣かせたこと、怒ってあげるよって言ってくれました。アメリアがお待ち下さいって言ってたけど、エシェットが振り返って、煩いぞって言ったら、一瞬だけ立ち止まって、それから分かりましたって。
僕はわあわあ泣いたまま、お仕事のお部屋のドアの前に。アメリアが止める前に、エシェットがドアを、思いっ切り蹴って開けました。バリバリバリ、バアーンってすごい音して、ドア壊れちゃった。中に居たお父さんとアシェルが、とってもびっくりしてます。
「何事だ!!お前は何を…。」
「何を、だと。」
お父さんは途中で、何か言うのやめました。僕は下ろしてもらって、お父さんに駆け寄って、そのまま抱きつきます。
「とうしゃあああああん、わああああああん!!」
「ユーキ?どうしたんだ?…エシェットお前が怒っているのは分かった。…威嚇を止めてくれ。」
お父さんは僕を抱き上げ、ドアが壊れちゃった部屋じゃなくて、休憩のお部屋に行こうって、皆んなでまた移動です。僕はお父さんにギュッて抱き付いたまま、ずっと泣いてました。
お部屋に入って、お父さんが僕を抱っこしたまま、ずっと泣いてる僕の代わりに、アメリアに何があったのか聞きました。お父さんお話聞いて、ちょっと驚いたみたい。
「誰も居なかったのか!?」
「はい。皆様の仕事の時間が、ぴったり重なってしまって…。夕食のお時間になるまで、私達メイドも使用人も、誰も気付きませんでした。申し訳ありません。」
アメリアの言葉に、ディルとリュカがそうだぞって言って、こっちに近付いて来て、お父さんに何か、キラキラした粉をふりかけました。これでオレ達の言葉分かるだろうって。そうか、今のが言葉が分かるようになる、妖精さんが持ってる特別なお粉なんだね。僕それなくてもお話出来るから、考えたら初めて見たよ。
今の妖精さんのお粉見て、ちょっとだけ涙止まりました。
「ユーキこの頃、ずっと寂しいって言ってたんだぞ!それなのに誰も気付かなくて。」
「ユーキよりも大切な物、この家にはたくさんあるって訳?」
「いや、本当にすまない。寂しそうにしていると報告は受けていた。だから誰か1人でも側に居られればと、気を付けていたんだが、まさか1人になるなんて。」
そう言うお父さんに、ディルとリュカだけじゃなくて、他の皆んなも怒ってくれます。思うだけじゃ何にもならないとか、僕の笑ってる顔が好きじゃないのかとか、僕の大好きなユーキ泣かせるダメッとか、いっぱいいっぱい怒ってくれました。皆んなありがとね。
お父さんは僕が泣き止むまで、ずっと抱っこして頭なでなでしてくれました。頭なでなで僕大好きなんだ。ちょっとだけ、嬉しい気持ちになったよ。ふへへ。
それから少しして、僕はやっと涙が止まりました。
お父さんが僕に、お話してくれました。
今お父さん達は、とってもとっても大切なお仕事してるんだって。そのお仕事はお父さん達にしか出来ないお仕事で、これからも、まだまだ忙しくなっちゃうかも知れないんだって。だから、皆んなで一緒にご飯は、少しの間出来ないって。それに遊ぶのも、皆んな一緒にはダメなんだって、教えてくれました。
でもね今度からは、僕が1人にならないように、寂しくならないように、いつも誰かが居てくれるようにしてくれるって。そんなにお仕事忙しいの?
「おしごと、いしょがしい?ぼく、おてちゅだいしましゅ。マシロも、みんなで。そしたりゃもっといっしょ、いられましゅか?」
「はは、ありがとなユーキ。でもな、これはユーキには出来なくて、お父さん達にしか出来ないお仕事なんだ。だからやっぱり、もっといっぱいは、今は無理だな。」
そっか…。やっぱりダメなんだね。お仕事忙しいの、しょうがないよね。
それにね、お父さんのお顔よく見たら、何かちょっと疲れてるお顔してる。僕の前のお母さん、疲れたって言ってた時、よくこんなお顔してた。お父さん、お仕事忙しくて疲れてるんだ。僕我がまま言っちゃ、ダメダメだね。あっ、でも…。
そうだ、たくさん一緒に居られなくても、お父さんが、僕にお仕事のお手伝い出来ないって言っても、お荷物運ぶとかなら、お手伝い出来るはずだよ。
お父さんもじいじも、お母さん達だって、たまにたくさんの紙とか荷物、お部屋からお部屋に運んでるんだ。それを僕が代わりに運んであげれば、少しはお父さん達ゆっくり出来るよね。
「ふへへ、ふへへへへ。」
「おい、何だその笑いは。変な事考えてるんじゃないだろうな。」
「とうしゃん、とうしゃん、ぼく、だいじょぶでしゅ、おてちゅだいできましゅ!」
<洞窟の入り口にて>
「次に狙うのは、奴が言っていたガキが居る、あの街にするか。」
俺は夕飯を食べる手下達を眺めながら、ボソッと囁いた。
少し前に仲間にならないかと言う、黒服の男から情報を聞き出し、その後殺してから少しずつ移動して、ようやくカージナルの街の近くまで来た。
ふん。胡散臭いあの黒服どもの仲間になるつもりはないが、奴の言っていたガキの契約魔獣には興味がある。もし奴らが言っていた通りの魔獣が手に入れば。
黒服共の言う、世界征服に興味はないが、俺自身が自分の手で、国を乗っ取る事には興味がある。簡単な話、俺は自分がトップでなければ、許せないのだ。黒服共の仲間に入って、手下のような扱いをされるなんて真っ平御免だ。
さて、街の近くに来たは良いが、これからどう行動するか。とりあえず、近くの村でも襲いながら考えるか。
明日の話をするために、何人か手下を呼ぶ。
「明日から、近くの村をまずは襲撃する。」
「まだカージナルは襲わないのか?」
「ああ。黒服の言っていたことも、確認しないといけないからな。それまでの時間稼ぎに村を襲うんだ。いいな。」
手下が元の場所に戻り、俺は隣で寝ている、黒い大きな魔獣に目をやる。こいつと、黒服達が言っていた奴が、手に入れば…。




