表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/645

6魔法石

 朝、目が覚めると僕は、マシロのふわふわな毛皮に包まれて寝てたよ。


「起きたか。」


「うにゅ…、おわよ…。」


 目を擦って周りを見ると、昨日ご飯を食べた所で、みんながもうご飯を食べてるのが見えました。

 僕は立ち上がって、歩き出そうとしたんだけど、起きたばっかりで、上手く歩けなくて転びそうになっちゃった。そんな僕の洋服の襟首に、マシロはうまく噛みついて、僕のことを持ち上げて歩き出したよ。

ぶらんぶらんと揺れながら、みんなの所へ連れて行ってくれました。


「おお、起きたか。おはよう。」


「おわよ、ごじゃます…、………。」


「はは、半分寝てるな。ほら起きろ。ご飯食べそびれるぞ。と、その前に顔と手を洗ってと。」


 団長さんは、マシロから僕を受け取ると、木で出来たバケツの方へ移動して、その前に僕を下ろしました。それでねびっくりする事が。

 ボケッとしている僕の目の前で、団長さんがバケツに手を近づけた瞬間、バケツの中に水が溢れてきたんだ。僕、びっくりして叫んじゃった。


「おみじゅ!!」


「ん?どうした?」


「おみじゅ!おみじゅが、でてきたでしゅ!」


 お水はどんどん溜まって、すぐにバケツは、お水でいっぱいになりました。


「ああ、魔力石を知らないのか。そうか、ユーキはまだ小さいからな。ほらこれを見てみろ。」


 団長さんが手を開くと、そこには透明で少し青色の、小さな石がありました。ちょっとだけ光ってるみたい。ぽわあああって。


「いし?」


「そうだ。この石のおかげで水が出せたんだ。おい、ノア!」


「何ですか」


 お鍋をかき混ぜてたノアさんが、すぐこっちに歩いてきました。


「悪いが、火を見せてやってくれ。」


「あー、はいはい。ユーキ君いいですか。」


 ノアさんの手には、今度は赤い透明な石が乗っかってました。団長さんが持ってた石みたいに、ぽわあって光りました。そして…。


「ふわわ!しゅごいです!」


 ノアさんの手の平、ちょっと浮いた所に、火の玉みたいなものが現れました。凄い!僕が喜んで見てたら、団長さんが説明してくれました。

 この石の名前は魔力石って言って、お水を出したり、火を出したり、色々な事が出来るんだって。石が大きかったり、色が濃い方が良い石です。でも、そういう石は、あんまりないんだって。


 石がなくても、みんな生活出来るけど、この石があった方が楽だから、みんな持って歩いてるんだって。

 みんな使えるんだ。僕も出来るかな?やってみたい!僕は団長さんにお願いしてみました。


「ぼくも、ぼくもやりたいでしゅ!」


「うーん、ちょっとそれは無理かな。」


 え、ダメなの…。くすん…。みんな出来るのに、僕だけダメなの?


「だめでしゅか…?」


「ああ、そんな顔するな。ダメって事じゃないんだ。説明して分かるか?

ユーキはまだ小さいだろう。この魔力石を使うには、自分の魔力を使うんだ。」


「じぶんの、まりょく?」


 そう言えばさっきから、魔力って言葉が出てくるけど、魔力って何のこと?


「そう、魔力。自分の体の中にある力のことだ。その力をこの石に流して、火とか水とか出すんだ。この力を使えるのは、もうちょっと大きくなってからって、決まってるんだ。だからまだユーキは使えないんだ。」


「…?」


 団長さんが魔力のこと、教えてくれたけど、よく分かりません。小さいとダメなの分かったけど、力を流すって何だろう?


「その顔は、分かってないな。」


「ユーキ君、ほらこれ見てください。」


 いつのまにか、近付いて来てた副隊長さんが、自分で持っていた袋の中から、たくさんの石を出して、僕に見せてくれました。団長さんが言ってた通り、いろんな大きさで、いろんな色の石です。


「まだユーキ君は小さいでしょう。小さい子は、魔力を使えないんですよ。もう少し大きくなったら、こんなに沢山の石を使えるようになります。だからそんな寂しそうな顔しないで、今はちょっと我慢ですよ。」


「…ぼく、ちいちゃい、まだちゅかえない?がまん?」


「そうだな。」


 そう団長さんは言って、副団長さんは頷きました。そうか、小さ過ぎるのか…。残念だな、僕もやってみたかったんだけど、もう少し大きくなって、魔力が使えるようになるまで我慢だ。


「うん、ぼくがまんしましゅ!」


「よし、偉いぞ!」

 団長さんが頭を撫でてくれました。僕は頭を撫でてもらえてニコニコです。褒めてもらえた、嬉しい、これからも言うこと聞いたら、頭撫でてくれるかな?そうだったら嬉しいな。


「ユーキ君良い子ですね。特別です。この石触ってみますか?」


「いいでしゅか!」


「ええ、触るだけでは、何も起きませんから。」


 副団長さんは、僕にキラキラの粉が入っている石を、持たせてくれました。

 おお、これが魔力石。ツルツルしてて、冷たい石です。大きくなったら使えるようになるんだ。早く大きくなりたいなあ。

 これはどんな魔力石なのかな?青が水で赤が火で、うーん、これはキラキラだから光かな?


 そんなことを思ってたら、急に体の中がポカポカしてきました。あれ?何だろう、とっても温かい。

 不思議に思ってたら、その温かいものが、石を持つ手の方へ集まり始めて…。そして…。


「おい、おい、おい…、まさか…。」


「これは…!」


 僕の手の中で、キラキラ魔石が、どんどん強く光り始めました。

 暗かった森の奥の方まで、明るくしちゃうくらいの光です。その光に、みんなの動きがほんの少し止まってたよ。


 あとね体から、なんかが出て行くみたいにな感じがしました。僕が魔力石と光を、ボケっと見てたら、


「主!魔力石から手を離せ!」


 マシロの声でハッ!とします。え? え? 何? 何が起こってるの?僕どうしたら良いの?僕が魔力石を持ったまま慌ててたら、団長さんが、


「ユーキ、ゆっくりでいいから、私の手に石をのっけろ。慌てるな。」


 って言って、自分の手を僕に出してきました。僕はそっと、団長さんの手の上に魔力石をのっけます。


「良い子だ。」


 団長さんの手の中で、魔力石は元のキラキラ石に戻りました。


「主、大丈夫か?」


 マシロがすりすり、顔を擦り付けてきたよ。


「だいじょぶれしゅ。げんきれしゅよ。だんちょうしゃん、ごめんなしゃい。」


 僕は団長さんに、ごめんなさいしました。

 我慢て約束したのに、魔力石使っちゃった。やっぱり怒ってるよね、ちゃんと謝らなくちゃ。あれ?そう言えば、小さいと使えないって、さっき言ってたよね。僕が持った石、光ったよ。何でだろう。


「何でごめんなさいだ?」


 団長さんは不思議な顔をして、僕を見てました。


「やくしょく、おおきくなるまで、がまんでしゅ。」


「ああ、そう言うことか。気にするな。」


「…おこってないでしゅか?」


 僕はチラッと、団長さんを見て、すぐ下を見ました。団長さんが僕を抱き上げて、僕の目と自分の目を合わせます。


「怒るもんか。わざとじゃないだろ。そんな心配そうな顔するな。ほら、ユーキは笑顔が可愛いんだ。笑え笑え。それで、手と顔を洗ってご飯を食べろ。そうしたらカージナルの街へ出発だ!」


 団長さんが怒ってないって分かって、僕は安心です。良かった。

 手と顔を洗って、朝ごはんを食べて、いよいよカージナルの街へ出発です。




 

 

 


 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ