604早く戻って来ちゃったビリダス達
「いやな、ユーキ達が怖がらず、こっちに来て邪魔をしないのは良いんだ。良いんだが、マシロ見てみろ。新しい魔法が増えたようだぞ」
『何を言って…。はぁ、主、一体何をしているんだ』
マシロが僕達の方に歩いてきました。どうしたのかな? 僕達はまた応援始めたばっかりなんだけど。マシロもちょっとお休み? 考えてたらマシロが困ったお顔をしながら、僕達にうさぎさんのお耳どうしたんだ?って。
僕達は精霊の石さんが、新しい魔法を教えてくれた事をお話ししました。うさぎさんのモコモコお耳魔法。おしっぽもついてるし、これで完璧うさぎさん。ほっぺたとお髭は…。面白いから良いの!
『はぁ、分かった。良かったな、可愛いぞ』
そのままマシロは戻って行きました。困ったお顔して笑いながら。でも戻ってすぐでした。マシロとアンドレアス、それからシユルースがバッ!!とお顔を上げて、みんなで向こうの方を見たんだ。
ハロルドはどうしたんだって、とっても怖いお顔してて、結界の穴からエシェット達も何か叫んでます。
リュカがマシロの所に行って聞いて来てくれるって、ビュッ!!と飛んで行ったよ。それですぐに戻って来たんだけど。まだ遠い所だけど、あの黒服の気配がしたんだって。えとビリダスとエチゾロスの気配。それでどんどんこっちに近づいて来ているみたいです。
『不味いぞ、急げ!! エシェットこちらに敵が現れた! まさかこんなに早く戻ってくるとは! かなり厄介な問題が起きたようで、結局何も取らずに、全員がここから消えたはずなのだが。もう問題が解決したのか、戻ってきた!』
『ここに来るまでに数分といったところか。皆気合を入れろ! 1人分で良い、ユーキだけでも通れる穴を開けるんだ!!』
マシロ達がどんどん結界を攻撃します。僕達はさっきまで離れてそれを見ていたけど、今はいつビリダス達が来ちゃうか分からないから、今はマシロの近くにいます。
『ハロルド! こっちを集中して切るんだ!』
「分かった!」
『シユルース! もう少し右だ!』
『ああ!』
みんなが一生懸命結界を切るんだけど、なかなか穴が開きません。隙間はさっきよりも開いたけど、それでも僕よりも小さいディル達も通れないくらい、まだまだ細いです。
僕達はマシロ達が攻撃してる間、みんなで色々考えました。僕達の剣はおもちゃの剣だからダメダメだし、僕はお水の魔法と今は霧の魔法が使えるけど、それで結界は壊せなくて。
あの時みたいに開けって言ったらダメかなって。あのモヤモヤの塊に入った時に、開いてって言ったらモヤモヤが開いたでしょう? だからこの結界も開けって言ったら開くかなって。
後はさっきディルが言ったみたいに周りを切って、切った所を蹴ってみるとか。色々考えました。
それでマシロの側で開けって言ってみたんだけど、ダメダメだったよ。ぜんぜん開きませんでした。
蹴るのもマシロにお話ししたら、みんなにそれをお話ししてくれて。みんなが切った後に、足で蹴ってみたんだけどやっぱりダメでした。
『主、皆も考えてくれて助かった。さぁ、また近くで大人しく待っていてくれて』
マシロにそう言われて、マシロの後ろに戻ります。そしたらとっても大きな爆発の音がしました。バアァァァンッ!! バシャアァァァッ!!って。急いで頭を押さえてしゃがみます。それからちょっとだけお顔を上げて。
向こうの方、煙がもくもくしてたよ。マシロが今のはビリダス達の攻撃だって。僕達を驚かすためにやったって言いました。
それからも何回も爆発の音が聞こえて。僕はマシロのおしっぽにくるまって、みんなも僕にくっついてじっとしながら、音が聞こえなくなりますようにってお願いしました。
それでね、お願いしてすぐに音がしなくなったんだ。もう終わった?って思ってマシロに聞こうとしたら、マシロは向こうを見て唸っていて。アンドレアスとシユルースもとって怖いお顔してて、結界の穴からエシェットの『チッ』てお声が聞こえました。
『主、そのままじっとしていろ、皆もだ。今結界を張る。思ったよりも早くここへ、ビリダス達が来るようだ。主達は先ほどのように、静かに結界の中にいるんだぞ』
爆発するのをやめたビリダス達が、とっても早く移動して、こっちに来てるみたいです。マシロがおしっぽから離れてくれって。僕マシロのおしっぽに包まれてた方が良いのに、そう思ったけどマシロの言うこと聞かなくちゃ。だからおしっぽから離れました。
マシロがアンドレアスを呼んで、さっきみたいに2人で結界をはるぞって、アンドレアスにお話しをします。
僕もマシロ達のお手伝いできたら良いのに。剣はダメダメだけど、魔法もダメダメだけど、何かお手伝いできたら良いのに。
みんなを元気にする魔法は? 僕が力をもっとあげたら、今よりもいっぱい結界を切れないかな? 僕だけが出れるくらいの穴とか隙間じゃなくて、みんなが一緒にお外に出れるくらいの大きさの。
僕ね、いつも守ってもらってる。守ってもらってばっかり。僕もみんなをお守りしたいの。でもいつもダメダメです。
すぐにマシロとアンドレアスのお話しが終わって、2人が僕達の前に来て結界を張ろうとしました。僕にもできる事、やっぱり何もないのかな? 少しもお手伝いできない?
『よし。では主、皆も、今いる場所から…』
『何だ!?』
いきなりエシェットのお声が聞こえて、それからお父さんのお声も聞こえたんだ。
「何だこれは!?」
小さなお声だったけどお父さんのお声だったよ。もしかしてエシェット達の方にビリダス達行っちゃった!? 慌ててマシロに聞きました。でもマシロは何も言ってくれなくて。お父さんのお声が聞こえた方を、びっくりしたお顔で見ていました。




