565霧の精霊に起きた事(マシロ視点)
霧の精霊お兄さんが出て来て、すぐに渦が小さくなり始めました。それからフッて消えて、ただのモヤモヤの塊になっちゃったよ。
そして僕達の所に戻ってきたお兄さんは、すぐに僕達にごめんなさいをしてきました。
『すまない。何も言わずに無理矢理に連れてきてしまった。しかも途中で見失い、私と森が作り出した幻影の中へと落としてしまった。ただでさえ今は、現実と幻影がまざってしまっていて危険な場所なのに』
ごめんなさいをしたままのお兄さん。そうしたらハロルドがマシロに、僕達をちょっとだけ向こうに連れて行けって言いました。どうして? これからみんなでまたお話し合いするんでしょう?
そう思ったんだけど、マシロはハロルドのお顔を見た後に、すぐに僕達を連れて、近くの木の後ろに行ったよ。それで良いって言うまで向こうは見るなって。僕達は言われた通り向こうを見ないように、お手々でお目々を隠して。
それからすぐでした。バキッ!!みたいな、バシッ!!みたいな音が聞こえて、それからドサッァァァッ!!って音も聞こえたんだ。
「マシロ、へんなおとでしゅ、なんでしゅか?」
『大丈夫だ主、もう音は鳴らない。それに敵が来たわけではないから安心しろ』
マシロが目を開けて良いって言ったから、目を開けた僕達はすぐに木から出て音がした方を見ます。そうしたら霧の精霊お兄さんのお手々をアンドレアスが握って、お兄さんが立ち上がってたよ。それからハロルドが、お手々をぴろぴろって振ってました。みんな何してるの?
僕達はハロルド達の方に走って行って、何したの?って聞きました。そうしたらね、お兄さんが転んじゃったから、アンドレアスが起き上がるのをお手伝いしてたんだって。どうして転んじゃったの? もしかして具合悪いの?
「ぼく、ちからをあげるでしゅか? えと、みんなげんきになるでしゅよ」
『いや、今は大丈夫だ。ありがとう』
「今はそれくらいにしておいてやる」
ん? 何々? 僕は聞こうとしたんだけど、マシロがお話しを始めちゃいました。
『さぁ、詳しい話しを聞かせろ。だが時間がないだろうからな、大事な事だけ詳しくだ』
「ああ」
*********
ハロルドが我に主を向こうに連れて行けと言った時、主達は気づいていなかったが、ハロルドからはかなりの魔力が溢れていて。本来ならば我が奴を蹴り飛ばしてやろうと思っていたが、我は頷くとすぐに木の陰に主達を連れて行き。その後すぐにあの音が。
主達が見たのは、この後霧の精霊がアンドレアスに手を借り、起き上がる所だった。まぁ、今はこれくらいにしておかなければ。これからの事を話さなければいけないからな。
そして霧の精霊の話しを聞くと。それはやはり突然だったらしい。いつもの通り、森を見回った後、この森の1番中心にある、かなり大きな木があるらしいのだが、その木に穴が開いていて、そこで寝ていたそうだ。
しかし精霊の石に異変を感じ、すぐに駆けつければ、霧の精霊が精霊の石を守るために張っていた結界が、今にも破られそうになっていて。そこにはあの黒服達が。
急ぎ奴等を精霊の石から離し、結界を修復する。しかしその間にあの闇の魔法で周りを囲まれてしまい。
なんとか石に闇の魔法が届かないように、霧魔法でさらに精霊の石と結界を守るようにすると、霧の精霊は囲まれた闇魔法の外へ。
そこでまた異変が起きた。力が上手く使えなくなったらしい。そして気づけば、森の周りにはあの結界が。あの結界のせいで力が上手く使えなくなったのだと、すぐに気づき、上手く魔法が使えなくとも、それでも結界を破らなければ。と、攻撃をしたのだが、ヒビやかすかな隙間はできたが、一瞬で修復していまい。結局破る事は出来ず。
精霊の石を守りながら、さらにそれを守る霧の魔法を使い、その度に魔力を大量に消費してしまい。仕方なく黒服達が引いている間に、残っている力をほぼ使い。破れなくとも、1人が通れるだけの隙間を無理やりこじ開けそこから外へ。そして。
力が強いエルフ達から力を分けてもらおうと、エルフ達を攫っていたそうだ。霧がすぐに消えたのは長い間、霧を出す力が残っていなかったと。
が、最初はそれで何とかなっていたが、それがいつまでも続けられるわけもなく。そろそろ限界を迎えようとしていたそんなある日。
街に力を求めてやって来た時、主の存在に気づいた。もう主の力を借りるしかない。が、主を連れて行くには、今まで以上に力がいると。力をふりしぼり、エルフをさらに攫うと、その力で主を攫いに来た。
だがやはりギリギリで動いていたため、ここへ連れてくる途中で、我等をあの幻影の森に落としてしまったらしい。
「それで、我らの里から連れ去った者達は今どうしている?」
「死んではいない。今力を奪ったせいで眠ってしまっているが、森で1番安全な場所に皆寝かせてある」
「はぁ、良いか、事件が解決したら、すぐにそこへ連れて行け。私の里、そして他のエルフの里が、お前にどう対応するか分からんぞ。だが、今の状況をどうするか。まずはそれからだ。良いな」
『我等の方もだぞ』
「ああ。本当にすまない」
そしてこの後我々はこれからのことについて話しあった。が、話し合ったのだが、まさかこんなにも予想外の事が起こるとは、この時は思っていなかった。




