542新しいオレンジ色の魔力石?
エシェットが帰って来たのは夕方になってからでした。探してたら遅くなっちゃったって。
エシェットが持って帰って来た物を、テーブルの上にバラバラ勢い良く載せたら、何個かころころ転がって下に落ちそうになって、僕たち、パシッ!って止めたんだ。落とさなかったよ。
エシェットが持って帰って来たのは、オレンジ色の透明な石でした。僕が魔力石?って聞いたら、同じような物だって。
「エシェットこれは? 私は見たことがない色の魔力石なのだが。ルリエット君はどうだ?」
「私も見たことがないわね。似たような炎の魔力石なら見た事があるけれど」
お父さん達も見た事がなかったです。
「これは魔力を流した者の魔力を吸収し、その吸収した魔力をさらに強くし、それをこちらに戻してくる、珍しい能力も持っている石だ」
「そんな石があるなんて、私は聞いたことがないぞ。大体そんな石が何処に…」
「我がユーキと出会ったあの森だ。あの森の一部の洞窟の中に時々生成される。森の奥に住む魔獣達は知っているぞ。石を使えば力を増幅させる事もちゃんとな。しかしわざわざそんな事をしなくとも、自分で力を付けるというのが、あの森の魔獣達の考えだったからな」
「そんな特別な石があの森に」
「人間と違い魔獣達は、何でもかんでも欲しいとは思わないのだ」
エシェットは石の説明を続けます。えと、石はとってもとっても珍しい石で。季節が1回全部終わっても、1個か2個しかできないんだって。それに見つけるのがとっても大変です。洞窟の壁にくっ付いている時もあるけど、殆ど壁の奥の方に入っちゃってて。
壁に埋まっている時は、色はオレンジじゃなくて、洞窟の壁と同じ色なの。だからサッと探しただけだと見つけられません。
それから前にエシェットは石を使ってみた事があります。石に魔力を流したら、もっとすごい魔力になってエシェットに戻って来て。その時ちょうど悪い魔獣さん達が暴れていたから、その魔力を使って。悪い魔獣さん達を、いつもみたいにひょいひょい投げました。そうしたらいつもよりもすぐに遠くまで飛んでいったって。魔獣さんの体がバラバラになりながら。
でも石に魔力をあげて、攻撃するのは何回もできないみたいです。エシェットは何回か魔力をあげて、それから魔力を貰って攻撃したけど、10回くらい攻撃したら、石が壊れちゃったんだ。だからずっとはオレンジの石は使えないの。
「そんな石があの森の洞窟に…。それでどうして石をこんなに持って帰ってきたんだ?」
今テーブルの上には、1個、2個…。全部で石が15個あります。全部エシェットが見つけて来たんだよ。探すのが大変な石なのに15個も見つけたんだ。どうやって壁と同じ色の石を見つけたのかな?
『アンドレアスの剣や、エルフの里の者達が使う剣は、人間の剣とは明らかに性能が違う。あの剣をお前たち人間が望んでも、与えられるわけはないしな。そこでだ、少しでもあの剣に、こちらの剣を似せることができたら?』
お父さん達の剣にオレンジの石を付けて、それでお父さん達が魔力を流したら、少しだけでも剣がいつもの剣よりも強くなって、あの変な霧を切る事が出来るかもしれないの。
『おい、剣を持って来い。と、ここではあれだな。玄関ホールに行くぞ』
すぐにみんなで玄関ホールに移動します。それからアシェルがすぐに剣を持ってきてくれて。エシェットはポケットから別のオレンジの石を取り出しました。15個の石とは別の石だよ。エシェットは自分で5個持ってるって。さっき出したのはお父さん達の。今はくろにゃんにしまってもらっています。
『我もこれをやるのは初めてだからな。どうなるか分からん。だが上手くいけば、アンドレアスの剣ではないが、今使っている剣よりは、あの霧に対応する事もできるかもしれん』
そう言って、エシェットが剣と剣を持つ所の間に、タオルで石をぐるぐる巻き付けました。それから石に魔力を流して、石に魔力が入るとオレンジ色の石が、キラキラ光って、とっても明るいオレンジ色になりました。
『さて、石に魔力を流したら、今度は石から剣に魔力が流れる感じを思い浮かべろ。石から魔力を受け取る時は、自分にその魔力が流れる感じを思い浮かべれば、魔力が流れてくる。おそらく今回も…』
エシェットが目を瞑ります。それでねすぐに剣が光り始めたんだ。エシェットもすぐに目を開けて。
『ふむ、成功だ。剣全体に魔力が行き渡った。さてこの剣を…』
「ま、待て待て! 何をする気だ!? ここでそれを使うつもりか!」
『あ? ああ、そうか。玄関ホールではまずかったか』
「まったく、何を今更言っているんだ。はぁ、あまり今は外に出たくはないが。ユーキ達は玄関から外に出るんじゃないぞ」
僕達は玄関から出ないで、お父さんとアシェル、エシェットが外に出ました。
「かあしゃん、エシェットなにかきる?」
「ええ、そうね。でも何を切るつもりかしら?」
エシェットがキョロキョロしました。
『何か切るのに良い物はと…。くろにゃん的になってみるか?』
『は、ふざけるなよ!? 空にでも向かって、剣を振ってみれば良いだろう!』
『冗談だ。そう怒るな』
「ユーキ様方がお使いになる、ハロルドの板ならすぐにご用意できますが?』
『ああ、それで良い』
アシェルがハロルド板を取りに行きます。石がくっ付いてる剣で、エシェットどんな攻撃するのかな? 僕楽しみです。




