528お父さんが帰って来た! それからまた霧のお話し?
今日はお父さんが帰ってくる日です。やっとお父さんが帰ってくるよ。僕は玄関の前でお父さんが帰ってくるのを待ちます。でもお母さんがいつになるか分からないわよって。それに今日じゃないかもしれないって。
森でのお仕事が長くなっちゃう事があって、そうすると帰るのも遅くなっちゃう。明日かもしれないし、その次の日かも。お兄ちゃん達もそう言いました。
お父さんお約束絶対だもん。だからちゃんと帰ってくるもんね。朝のご飯を食べて玄関の前で待って。お昼のご飯を食べて、玄関とお外の門の間くらいの所で待って。お昼寝が終わったら、おやつを持って門の前に行きました。
まだかなぁ、まだかなぁ。お父さんまだかなぁ。お父さんが帰ってきてお休みしたら、いっぱい一緒に遊ぶんだよ。お家の中で遊んでお庭で遊んで、それからお店通りに行って遊んで。それからそれから。
「何ニヤニヤしてるの?」
一緒に門で待ってるアンソニーお兄ちゃんが、僕のほっぺたをお手々でムニムニしてきました。
「えと、とうしゃんといっぱいあしょぶの。たのしみでしゅ!!」
「そっか。今回の遠征が終われば、少しの間父さんもゆっくりできるはずだからね。まぁ、書類仕事はいつも通りだろうけど」
「つくえのうえ、いっぱいでしゅか?」
お父さん、お家でお仕事だと、いつもお父さんのお仕事のお部屋の机の上には紙のお山が。この前は7個お山があったよ。それで2つお山が崩れちゃって、アシェルがとっても怒ってました。アシェルとっても怖かったって、ホプリン達が言ってたよ。僕ちょうどお昼寝してたから、アシェルが怒ってるところ見なかったんだ。良かったぁ。
段々とお空がオレンジ色になってきました。
「さぁ、そろそろ家に入ろう」
「とうしゃんまだでしゅ」
「じゃあとりあえず、玄関まで戻ろう。ね。そうしたらもう少し外で待っていても良いから」
「はいでしゅ…」
お父さん帰ってこない? 僕はしょんぼり。ディル達が玄関に向かい始めて、僕はお兄ちゃんとお手々を繋いで、ゆっくり歩き始めます。それで途中まで来た時でした。マシロがお顔を上げて。くろにゃんも同じ方向を見ます。
「主、ウイリアムが帰ってきたぞ。今街の外門の所だ」
ふおお!! お父さん帰って来たって。僕はもう1度お家の門の方へ向かって走り始めます。みんなも勢いよく門に向かって飛び始めたり走り始めたり。門に着いたら門の所にいる騎士さんが、お兄ちゃんにどうしましたかって聞きました。
「いや、マシロが父さん達が帰って来たって言ったもんだから」
「そうですか。と、本当ですね。魔力石が光りました」
お父さん達が帰って来たって、外の門の所にいる騎士さんが、魔力石で連絡してきたって。アンソニーお兄ちゃんが僕を抱っこして見せてくれます。少し向こうの方、青い光が見えました。やっぱりお父さん帰って来た。お約束だもんね。
もう1回お父さん達を待ち始めて少しして、お家に帰る騎士さん達がゾロゾロ、お兄ちゃんと僕に挨拶しながら門を出て行きます。その時。
「そういえば、今度はシーンの実家の方で霧が頻発したらしいぞ」
「そうなのか? まぁでも、どうせ2、3日で落ち着くだろう。他もそうだったからな」
「だな。でも何なんだろうな、あの霧?」
「さぁな。でも被害もないし、一応他からも騎士や冒険者達が確認しに行ってるから大丈夫だろう」
そうお話ししてたよ。霧? この前も誰かお話ししてなかったっけ?
「霧か。父さんももう知ってるかもしれないけど、一応伝えないとな」
「にいしゃん?」
「ん? ああ、父さんにお話しする事を考えてたんだよ。あっ! ほら父さん達が見えた」
そう言われて急いで前を向きます。そうしたらお父さんが先頭で、お馬さんに乗ってこっちに向かって歩いてきてました。どんどんお父さんのお顔がしっかり見えてきます。それで完全にしっかりお父さんが見えたら、僕は走り始めました。みんなも一緒。それでね、あんまり勢い良く走って、お父さんのちょっと前で転んじゃったの。お兄ちゃんが慌てて僕の所に走ってきます。お父さんもお馬さんから下りてきて。
「ユーキ!? 大丈夫か!」
「いちゃ…」
すごく痛かったけど、僕は涙を拭いて立ち上がりました。だってお父さんが帰って来てくれてとっても嬉しくて。僕ね、お父さんが帰ってきたら、1番最初に元気よく、おかえりなさいのご挨拶しようと思ってたんだ。だから今は泣いちゃダメダメです。
僕は痛いのを我慢して、お父さんの方を見てピシッと立ちました。みんなも一緒ね。それでお手々をおでこにつけて、騎士さんのご挨拶。ピッ!! それから大きなお声でおかえりなさいをしました。僕ね、みんなと練習したんだよ。
お父さんが心配のお顔から、とってもにっこりになって、騎士さんのご挨拶をしてくれます。オリバーさん達も。それから頭をなでなでしてくれました。
「ただいま。みんな騎士の挨拶、完璧じゃないか」
「えへへでしゅう」
お父さんニコニコ。僕もニコニコ。みんなもニコニコ。でも…。
「いちゃ、いちゃい…」
どんどん足が痛くなって来ました。涙がポロポロ、勝手に出て来ちゃう。ディルが急いでお怪我を治してくれたよ。
「最初だけでも我慢したな。それだけでも少しお兄ちゃんになったじゃないか」
治してもらった後は、お父さんと一緒にお馬さんに乗って玄関まで行きました。僕はお父さんにギュッて抱きついたまんま。
「父さん、落ち着いたらで良いんだけど、話があるんだ」
「もしかして霧の事か?」




